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《ユウキ視点》


太陽が半分ほど顔を出した早朝。


その日も父さんとの狩りの日だった。


僕ももう自立する歳。


まだ頼りない僕を危惧して、父さんは惜しみなく狩りの基本を教えてくれていた。


父さんの狩りは基本、待ちから入る。


身を隠す茂みに目星をつけ、じっと獲物が近寄るのを待つ。


僕にレクチャーしながら淡々と狩猟していく


仕留めた数は小型の『怪物種』であるレッドラビットが8匹。


今までで1番の成果。


そのうちの3匹は僕の成果だ。


父さんにはまだ甘いって言われてるけど僕も気配が消せるようになってきたのかな。


今日は大量だ。


きっと母さんも喜ぶ。


けど、父さんは苦い顔をしている。


「何かおかしい。臆病なレッドラビットが生存圏をこんなにずらすとは思えない。何が起こっている?」


やっと成長した姿を見せれて、褒めて貰えると思ったけど父さんはブツブツと何か考え込んでいる。


そして急に何かに追われているかのようにバックに戦果を詰め込み、僕の手を引く。


「嫌な予感がする。急いで村に戻るぞ」


何かあったのかな。


落ち着けば褒めてもらえるかな。


その時の僕はそんな呑気なことを考えていた。







─そこは地獄だった。


所々が欠けている。


乱雑に食われたであろう死体が四方に散らばっている。


変わり果てた村に僕は呆然と立ち尽くした。


脳が処理を行わず、ただ風景を眺める。


緑の『怪物種』と村人達が争うが、すぐに同族が加わり、一瞬で食いちぎられる。


見渡せばそんな地獄絵図が至る所で起こっている。


これはきっと悪い夢だ。


戸惑う僕の右頬に衝撃を感じる。


「しっかりしろユウキ!母さんを連れてここから急いで逃げるぞ!」




硬直していた僕を父さんが引っ張り、慣れた道を突っ走る。


「ミリヤ!!無事か!返事をしてくれ!!」


近くにたむろするゴブリン達を尻目に扉を蹴破る。


「ぁ、あなた…」



「ミリヤ!!あぁ、ミリヤ…お前…」



瓦礫した家の中に、母さんは居た。




上半身だけの。




血溜まりの上で横たわっている母さんには既に足と呼べるものがない。


「逃げて…、私はもう、助からない…から。早く…」


「ギギャ?」


気配を感じたのか、僕たちの後ろにはゴブリンが1匹控えていた。


「ギギャギャ!!ギギャギャ!!」


醜悪な顔付きなのに今こいつが何を考えているかが分かってしまった。


新しい獲物エサだ、と。


現実逃避していた精神が、シラフに戻される。


始まった死へのカウントダウン。


『怪物種』としては下位と言われているゴブリン。


しかし、力を持たない村人からしたら十分な脅威と言える。


塞いだ退路を背に、ゴブリンは無造作に近付いてくる。


「あなた…ユウキを…。」


瞬間、父さんはナイフを手に突っ込んでいた。


「グギャッ!!」


突然の捨て身の突進に虚をつかれたのか一撃で絶命する。


しかし、もはや壁という体をなしていなかったのか、横から風穴が空き新たな2匹の刺客が姿を表す。


「逃げろユウキ。俺はここに残る。」


すれ違いざまに背を叩かれる。


父さんは、もはや目を開ける力すらない母さんに寄り添い、ナイフを構える。


「まだ完全に囲われている訳ではないだろう。来た道を戻れ」


「や、やだよ父さん、一緒に逃げようよ…」


親子の別れすらお構い無しに、ゴブリンはニヤニヤと距離を縮める。


「行け!!!!」


発破をかけられたからか、それとも恐怖からか。


迫った恐怖で涙すら出ない。


後戻り出来ない平和に別れを告げ、村を抜け、森の中を無我夢中で走り抜ける。



走る。



走る。



止まってしまえば、自覚してしまう。



全てを置き去りにした事実を。



身体が忘れていた涙が今流れる。



足が止まり、身体が蹲る。


「うぅ…」


泣き叫びたい。


けど深い森の中、それは自殺行為だと本能が止める。


しかし、涙も現実も止まってはくれない。


失われた物が、思考を埋める。


父さんに母さん。


村のみんな。


平和だった日々。



昨日までの当たり前は、もう戻らない




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