表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
社畜ゾンビ 〜過酷な労働生活〜  作者: みっちーザッキー


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/8

第4話 契約社員ゾンビ ― 給料未払いで腐る

昨日の炎上回から一夜明け、

太郎の物語は “労働者としての核心” に踏み込んでいきます。


今回は、ゾンビ世界の「給与システム」の闇が初めて描かれる回。

正社員と契約社員の格差、未払い、腐敗……

笑えるのに、どこか胸が痛むようなエピソードになっています。


太郎がどう動くのか、

ドンがどう支えるのか、

そしてガリ夫の行く末は――


ゾンビ労働の闇へ、少しだけ深く潜っていきましょう。


Good death、そして良い読書を

灰の中で、光が灯る。

黒焦げのピエロマスクの下で、砕けた骨が組み上がり、

焼けた肉片が逆再生のようにまとわりつく。


再雇用ゾンビ:太郎、復元完了。

AIの乾いた声とともに、太郎は立ち上がった。


「……んだよ、また残業かよ。」


観覧車はまだ煙を上げていた。

昨夜の爆発の跡は生々しく、地面には太郎の灰がうっすら残っている。


ドスン、ドスン――

巨大な影が近づく。


「おい太郎。復活おめでとう(いや死んでるけど)。」


身長2メートル超の筋肉質ゾンビ・ドン。

巨大ハンマーを肩に乗せ、火花を散らしながら歩いてくる。


「ドン、昨日の爆発……お前も巻き込まれてただろ?」

「俺は頑丈なんだよ。ハンマー曲がっただけだ。」


ドンは何か紙を取り出した。

ボロボロに焼けた給与明細だ。


太郎の顔から笑みが消える。


『今回の支払:処理中』


「……処理中?」

「らしい。運営が昨日の炎上で忙しいとかでな。」

「いや、俺の給料って“後回し”なの?」

「契約社員はもっと酷いぞ。」


そこへ、ヨロヨロと細長い影が近づいてきた。

骨が見えるほど痩せ細り、肌は紫に変色していた。


「……た、太郎……さん……

 き、今日も……給料……でませんでした……」


契約社員ゾンビ、ガリ夫。

肌は乾燥し、口元からはボロボロと肉片が落ちている。


「ガリ夫、お前……なんでそんな……」

「……給料が……ないと……補給エネルギーが……できなくて……腐るんです……」


太郎は肩をつかんだ。

指がズボッと沈む。


「おい……腐ってるじゃねぇか!!」

「だ、だいじょうぶ……あと3日は……動けます……」


それは大丈夫の声じゃなかった。



⸻運営センター(バックヤード)


AIのモニターが並ぶ薄暗い部屋。

巨大なスクリーンに赤文字。


【給与計算システム:エラー】

【同時撃破ボーナス:処理落ち】

【契約社員ゾンビ:支払い保留】


ルナが画面を見て眉をひそめた。


「何これ……未払い? バグ?」

AIが答える。


「仕様です。」


「いやいやいや、仕様なわけないでしょ。ゾンビとはいえ労働者だよ?」


「仕様です。」

「二回言わないで!」


ルナは別の画面に切り替える。

そこには、太郎の爆炎シーンがスローモーションで再生されている。


「……太郎、あんた本当に“心”あるでしょ……

 こんな働き方させていいわけないじゃん。」


彼女は意を決して、運営チャットにメッセージを送った。


『ゾンビ給与のバグ、修正しませんか?』


しかし返ってきたのは――


『ただいま繁忙期につき対応できません』


「……ブラック運営じゃん。」



⸻控え室


太郎とドンは、ガリ夫を見守っていた。

彼は椅子に座り、ぐったりと身体を前に倒している。


「……ど、どうせ僕なんて……契約社員ですし……」

「おい、そんなこと言うな。」

太郎が言うと、ガリ夫は首を振った。


「正社員の太郎さんは……いいですよ……

 死亡手当、高いし……再雇用枠もあるし……

 僕は……死んだら……終わりです……」


その瞬間、太郎の胸の奥で何かが弾けた。


「……誰が“終わり”なんて言ったよ。」


太郎は立ち上がった。


「俺が、お前の給料……取りに行く。」

「え?」

「運営だろ?ここまで腐らせたの。」


ドンが頷く。


「太郎が行くなら、俺も行く(いや勝手についていく)。」


太郎は拳を握った。

黒焦げのピエロマスクが転がる音が響く。


「行くぞ、ガリ夫。運営に“労働者の死の重み”ってやつ、

 見せてやる。」


ガリ夫は弱った声で呟いた。


「……ぼく……歩けるかな……」

「歩けなくてもいい。ドンが持つ。」

「俺は荷物持ちじゃねぇぞ!」

「いやいや、お前ハンマーより軽いだろ。」


「……たしかに。」



⸻運営センター前


自動扉が開く音。

太郎、ドン、ガリ夫がヨタヨタと歩き出す。


スピーカーが鳴る。


「ゾンビ労働者の皆さま――

 本日は給与システム調整のため、

 全ゾンビの支払いを一時停止いたします。

 ご理解とご協力をお願いします。」


太郎の表情が凍る。


「……“一時停止”?」


ドンが肩を鳴らした。

ガリ夫は泣きそうだ。


「……太郎さん……僕……もう無理です……」


太郎は空を見上げた。

ステージ3-Bの燃え跡。

そして舞い散る自分の灰の欠片。


「――ふざけんじゃねぇ。」


太郎の拳が震える。


「ゾンビだって……働いてんだよ。」


ドンが笑った。

「やっと本音出たな。」


太郎の目に、炎の残光が灯る。


「行くぞ。“未払い”は――燃やす。」

読んでいただきありがとうございます!


この第4話では、

太郎の心に“変化”が生まれた回でした。


いままで、太郎はどこか「自分だけの稼ぎ」を優先していたけれど、

ガリ夫の腐敗と未払いを前に、

初めて誰かのために怒った。


これは、彼が“ただの社畜ゾンビ”から

“仲間のため動ける存在”へ変わる大きな転機です。


そして同時に、

ブラック運営の闇がしっかり描かれたことで、

今後の物語で“何と戦うのか”も見えてきました。


次回は、4.5話として

太郎たちの知らない“運営側の視点”も描かれる予定です。

世界が少しずつ広がっていきます。


引き続き、楽しんでいただければ嬉しいです。

Good death!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ