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社畜ゾンビ 〜過酷な労働生活〜  作者: みっちーザッキー


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1/8

第1話:出勤日 ― Good death の朝

どうも、作者です。

この作品は「ゾンビたちも生活してるんじゃないか?」という

どうしようもない妄想から始まりました。


プレイヤーに倒されてナンボ。

それが彼らの“仕事”だなんて、あまりに理不尽で笑えますよね。

けど――そんな世界で、もしも彼らに家族や夢があったら?

そんな想像を、ちょっと真面目に、ちょっとふざけて書いてみました。


ではどうぞ、ゾンビたちの“過酷で愛しい労働生活”をお楽しみください。

Good death!


「倒されないと、給料が出ないんだよ」


控え室の蛍光灯がチカチカと点滅する。腐った天井、錆びたロッカー。

ここはオンラインゲーム〈デッドシティ・オンライン〉のゾンビ控え室。


ゾンビ田太郎は鏡の前で、剥がれかけた頬肉を押し戻しながら、ため息をついた。

「今日も顔のコンディション悪いな……派手に吹っ飛べるかな」


隣の席では新人ゾンビが、テンション高くナタを研いでいる。

「今日のステージ、3-Bっすよ!遊園地!俺、着ぐるみゾンビにしてみました!」

「お前、やるな……俺もネタ衣装でいくか」


太郎は衣装ラックを眺めた。

サラリーマン、工事現場のおっさん、軍人、警察官……。


「うーん……今日は“ピエロゾンビ”でいくか。目立てそうだ」


出勤チャイムが鳴る。

スピーカーから、無機質でやたら明るい声が流れる。


「ゾンビ労働者の皆さま、ご苦労様です!

 本日も気合と根性で美しく散り、プレイヤーたちに楽しんでもらいましょう!

 それでは今日も元気に――

 Good death!」


「……Good deathってなんだよ……」

太郎はぼやきながら、ピエロマスクを被った。


錆びたシャッターが開く。

廃墟の観覧車、朽ちたメリーゴーランド。

バトルステージ3-B “デス・アミューズメントパーク”が広がっていた。


遠くでプレイヤーの笑い声。

「うわ、ゾンビかわい〜w」「ピエロ出たw」


「行くか……今日こそ派手に倒されるぞ」


太郎はピエロの靴でドタドタと走り出した。

頭上に「報酬倍率 ×1.0」の表示。

目の前のプレイヤーがこちらを指差す。

「あ、モブピエロだ。爆破しとこ」


バキュン!ドカァン!


太郎の体が空中を舞う。

「やった……倒された……!」


――が、直後に画面表示。

『ノーカウント:演出エリア外』


「……は?」


給料明細を開くと、金額欄は「0G」。


「倒されたのにノーカン……運営マジでブラックだな」


控え室に戻ると、課長ゾンビがコーヒーをすする。

「おう太郎、また無給か」

「課長、範囲狭くなってません?」

「最近“死亡率調整パッチ”が入ったらしい。上が楽しんでるんだとよ」


太郎は机の上の弁当を開く。腐った肉片の弁当。

その隣に、小さな写真立て――妻ゾン美と娘ゾン菜。

「パパ、今日もちゃんと倒された?」と笑う娘の声がよぎる。


「……倒されてないよ、ゾン菜」


太郎は弁当の蓋を静かに閉じた。


夜、控え室の隅で一人つぶやく。

「次は、園内中央の観覧車前……あそこなら演出判定入るはずだ」


モニターの片隅に、次の勤務通知が点滅している。

『勤務予定:明日 6:00〜 バトルステージ3-B(再)』


太郎の腐った心臓が、久しぶりにドクンと鳴った。


社畜ゾンビ、明日も勤務。


ここまで読んでくれてありがとう!

もし「ゾンビたちの世界、ちょっと面白いな」と思ってもらえたら、

ブックマーク・コメント・評価で応援してくれると嬉しいです 


次回は、ゾンビ田太郎が初めて給料をもらう日(=本当の“ゾンビの給料日”)。

笑えてちょっと泣ける第2話をお楽しみに。


Good death!


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