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悪役令嬢が幸せになるまで終われません!異世界転生したらどう見ても不審者でしたが、とりあえず推しをループから救います  作者: こじまき


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6 ヤンデレ魔法使いルート

今日から、推しの学園生活が再スタート。


そして私も貴族令嬢ミナとして貴族学園に編入する。


「ミナ、緊張しないでね」

「私は大丈夫です、レイリーディア様」


レイリーディアはほんの少し寂しそうに笑った。


なぜ?


私が何かした?


推しにこんな顔をさせるなんて、オタク失格だ。


「レイリーディア様、私が何かお気に召さないことでもしてしまいましたか?何かあればおっしゃってください。レイリーディア様のためなら、顔も変えます」


レイリーディアはふふっと笑った。可愛い。


それからまた寂しそうな顔に戻る。


「なぜお兄様のことは呼び捨てにするのに、私のことはレイリーディア様と呼ぶの?」

「えっ…だってレイリーディア様は雲の上の存在で、私なんかが呼び捨てにしていい存在じゃないから…」

「でも私は…少し寂しいわ。レイリーディアと呼んでほしいの。敬語もいらないわ」


「だめかしら?」とうるうるした瞳で見つめられたら、「名前を呼ぶたびに心臓が爆発してしまうからできない」なんて言えるわけがない。


「光栄です…だよ」

「よかったわ」


学園のロータリーで馬車を降りると、周囲の貴族子女たちが小声で噂しているのが聞こえる。


「王太子殿下とレイリーディア様が、婚約破棄なさったって本当?」

「だって王太子殿下のスキャンダルがひどかったもの。当然だわ」


うんうん。世論操作は完璧。


クラウスが王宮に怒鳴り込んでから、もみ消されないように即座に私が有力紙に情報をリークしたから、王太子のほうが悪者認定されている。


「っていうか、レイリーディア様にくっついてる田舎臭い女は誰?」


そうですよね。気になりますよね。


と思ってたら、推しが全オタクが失神するレベルの優雅な仕草で私を指し示した。


「皆様、ご紹介するわ。こちらはミナ・フォン・エーデルフェルド子爵令嬢。公爵家の遠縁で、私の親友よ」


「どうぞお見知りおきを」と言おうと思ったけど、「親友」というパワーワードに阻まれて声が出ない。


高位貴族っぽい女子たちも「親友だなんて…!普段大袈裟な言葉を使われないレイリーディア様が…っ!」と驚いている。


「ミナ、三年生特進クラスの教室はこっちよ」

「は、はひっ…し、親友…親友…どういう意味…そういう意味…?」

「もう、しっかりしてちょうだいな」


そうだ、レイリーディアに揺さぶられている場合ではない。今日からが本番なのだから。


私は深呼吸した。


「あら」


レイリーディアが廊下の隅でうずくまっている紫の鳥に近づく。


「怪我をしているわ」

「そうみたいだね」


レイリーディアが何か呪文を唱えて指輪を触ると、ピンク色の柔らかい光が鳥を包み、鳥は元気にパタパタと羽ばたいていった。


「今の…光魔法?」

「ええ。先日アリアネル様から魔力を少し分けてもらって、指輪に閉じ込めてあったの」


そんなことができるんだ。アリアネルの魔力ね…


ってあれ?


これって。このシチュエーションってもしかして!


「…レイリーディア嬢」


来た。やばい。


低く、柔らかく、けれどどこか凍るような声。


振り返ると、黒いマントの内側に紫の魔力を漂わせた、銀髪の男性が立っている。肩には先ほどの鳥。


ゼノ・アルステッド。


王国随一と言われる魔力量の保持者で、まだ学生でありながら一代爵位「魔爵」に叙せられた天才。


モデルは退廃的なコンセプトと美貌が魅力のアイドル・ウノで、ゲームでは愛と執着が激重いヤンデレ魔法使い枠担当。


(ハマる人にはハマるけど…ってヤツ)


ヒロイン・アリアネルが編入初日に廊下で紫の鳥を光魔法で癒すと、それがきっかけで鳥の主人であるゼノに執着されてしまうのだ。


「あなたが私の鳥を助けてくださったのですね」

「アルステッド卿の鳥だったのですね。元気になって何よりですわ」


アメジストの瞳の中で、炎が揺れる。


(アリアネルの代わりに、レイリーディアがルートに入ったんだ…)


「婚約破棄の報せ、聞きました」

「ええ…お恥ずかしいことですわ」

「なら、僕があなたの婚約者に慣れる可能性もあるということですね」


おお、即告白型。


私はレイリーディアの美しすぎる横顔を伺って、耳打ちしようとした。


「優秀だけど執着が重すぎるから…」


だめだ。


もしかしたらレイリーディアにはハマるかもしれない。私の一存で可能性を潰すなんて、やっちゃいけない。


「断って」と思いながら握りしめた手がブルブル震える。だけど優しすぎる推しは言った。


「ふふ、可能性はありますわね」


ゼノの瞳の中で、紫の炎が燃え上がったのが見えた。


それからのゼノは、「執着激重ヤンデレ魔法使い」の名に恥じなかった。


勝手に「自分はレイリーディアの恋人」と宣言して、登下校時は校門でレイリーディアを待ち伏せ、授業中も休み時間も隣の席を死守。


レイリーディアがトイレに立てば「トイレの外で待ってます」と言い、実技の授業中も「僕の魔力で彼女を守る」とぴったりくっつく。


他の男子生徒を魔力の結界でけん制して、物理的にレイリーディアに近づけないようにする。


いやいや、守るとか以前に距離感を学んで?


さすがのレイリーディアも顔が引きつり出す。むしろレイリーディアにこんな顔させられるのがすごいよ、ゼノ。


「レイリーディア、ゼノに迷惑だって伝えたほうがいいんじゃない?言いにくいなら私から言うよ?」


レイリーディアは首を振った。


「私の曖昧な一言がきっかけになってしまったのだもの。自分で言わなければ」


推し。責任感の塊。そして誠実。好き。


「でも、ついてきてくれたら嬉しいわ」


ええ、地獄の果てまでも。


放課後の教室でレイリーディアからはっきりと拒絶の言葉を告げられたゼノの周りに、紫色の魔力が飛び始める。


ゼノが危険に見舞われたアリアネルを見たときに怒りに任せて起こした魔力の暴走に似てる。


(これは…危ない…!)


「だめっ!」


私は思わずゼノとレイリーディアの間に割り込んで、腕を広げた。


「女、邪魔だっ!」


紫色の魔力が私の向かって突進してきて、私は思わず目を閉じる。


「ミナ、危ないっ!やめてっ!」


最期に聞くのがレイリーディアの声だなんて、最高か?


(どうせ一度死んだ身。推しを守って死ねるなら、我が人生に悔いなし…!)


「レイ、大好きだよ。私の人生を懸けられるくらいには。あとはクラウスに任せるから、幸せになってね」

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