第7話 銀狼の王の屋敷
目が覚めると、私は見知らぬ部屋のベッドに横たわっていた。
天蓋付きの豪華なベッド、壁には古い油絵、窓からは広大な庭園が見える。まるで中世の貴族の邸宅のような、重厚で格調高い部屋だった。
「ここは…」
体を起こそうとして、首筋にズキンと痛みが走る。そこに触れると、昨夜神楽に刻まれた月印が、まだ熱を持っていた。
あれは夢ではなかったのだ。
「目が覚めたか」
扉の向こうから、聞き覚えのある低い声が響いた。神楽が、黒いスーツに身を包んで現れる。昨夜のワイルドな雰囲気とは打って変わって、今朝の彼は洗練された紳士然としていた。
「ここはどこ?私の家に帰してください」
「ここがお前の家だ。少なくとも、これからはな」
神楽は当たり前のように言い放った。
「私には家族も仕事もあります。勝手に連れ去るなんて…」
「心配するな。お前の会社には、体調不良で長期休暇を取ると連絡してある。家族にも、友人の彩香にも、適切に説明はしてある」
「適切って…まさか、また暗示を?」
「記憶を少し調整しただけだ。彼らにとっては、お前は海外出張に行ったことになっている」
私は愕然とした。神楽は、私の人間関係を勝手に操作していたのだ。
「そんな権利があなたにあるの?」
「ある」
神楽は迷いなく答えた。
「私はお前の夫であり、主でもある。お前を守り、導く責任と権利を持っている」
「夫?主?勝手に決めないで!」
「昨夜、お前は月印の契約に応じた。これは三百年の伝統に則った、正式な婚姻の契約だ」
神楽は窓辺に立つと、外の景色を見つめながら続けた。
「お前はもう、人間社会には戻れない。月巫女として覚醒した以上、獣人社会で生きていくしかないのだ」
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神楽、記憶まで操作するとは…なかなかの強引さですね!
逃げ場を完全に失ってしまった凛。この絶望的な状況から、物語はどう動くのか?
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次回、この黄金の鳥籠に、新たな波乱を呼ぶ『彼女』が登場します。