第5話 血に刻まれた絆
「永遠にあなたのもの?そんな、勝手なことを…!」
私は振り返って男を睨んだ。しかし、彼はまるで私の抗議など聞こえていないかのように、静かに微笑んでいる。
「私は神楽。この地域を統べる銀狼族の王だ。そして、お前は凛…三百年前に封印された月巫女の血を引く、最後の白狐の末裔」
「白狐って…私は人間です!」
「違う」
神楽は断言した。
「お前の先祖は、月の女神に仕える白狐の一族だった。しかし、人間界に混じって生きるうち、その血は薄れ、力は封印された。だが、血は嘘をつかない。お前の中には、確実に白狐の魂が息づいている」
神楽は祭壇の上の古い書物を開いた。そこには、美しい白い狐の絵と、月の下で舞う女性の姿が描かれていた。
「三百年に一度、月華期と呼ばれる特別な時期が訪れる。この時、白狐の血を引く女性は、月巫女として覚醒する運命にある。そして、その力を完全に開花させるためには…」
神楽は私の顎に指をかけ、顔を上げさせた。
「銀狼の王との魂の契約が必要なのだ」
「そんなの、私は承諾していない!」
「お前の魂が、私を求めていることを証明してやろう」
神楽はそう言うと、躊躇なく私の顔に手を伸ばした。私は慌てて後ずさりしようとしたが、背後は壁だった。
「逃げるな。お前自身が一番よく分かっているはずだ。私に出会った瞬間から、お前の体は私を求めているのを」
確かに、神楽の言う通りだった。彼の近くにいると、理性では拒絶したいのに、体の奥底から湧き上がる衝動が、彼を求めてしまう。この感覚は一体何なのだろうか。
「これが、魂の絆だ。運命の相手に出会った時、白狐の血が反応するのだ」
神楽の顔が、ゆっくりと私に近づいてくる。彼の金色の瞳が、月光のように美しく輝いている。
「待って…」
私は小さく呟いたが、もはや抵抗する力は残っていなかった。神楽の唇が、私の首筋に触れる寸前で…
ここまでお読みいただき、ありがとうございます!
三百年越しの運命…。抗いたいのに、惹かれてしまう凛の気持ち、伝わりましたでしょうか。
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さて、次回…。
神楽の唇が…いえ、その牙が、ついに凛の肌に触れます。
甘く、そして痛みを伴う絆の証が、彼女に刻まれる瞬間を、どうかお見逃しなく。