第4話 特別な契約
「凛!凛、大丈夫?」
彩香の声が聞こえたが、それはまるで遠くから聞こえてくるかのようだった。私の意識は、目の前の男と、彼が見せてくれた異世界の光景に完全に奪われていた。
「お前の友人には悪いが、少し席を外してもらおう」
男は彩香の方を一瞥すると、何やら低い声で言葉を発した。それは人間の言語ではなく、まるで獣の唸り声のような音だった。
すると、彩香の表情が一瞬ぼんやりとした。
「あ、あれ?私、ちょっとお手洗いに…凛、先に飲んでて」
そう言うと、彩香はふらふらと奥の方へ歩いて行った。
「何をしたの?」
「軽い暗示だ。心配するな、害はない。ただ、これから話すことは、人間には理解できない内容だからな」
男は私の腕を掴むと、有無を言わさずVIPエリアの方へと歩き始めた。私は抵抗しようとしたが、彼の力は人間離れして強く、まるで岩にでも腕を掴まれているかのようだった。
「離して!どこに連れて行く気ですか?」
「ここが、特別な契りを交わす場所だ」
男が案内したのは、VIPエリアのさらに奥にある、完全に個室になったプライベートルームだった。
重厚な扉が閉められた瞬間、外の喧騒が完全に遮断された。室内は先ほどのフロア以上に幻想的で、壁一面に星座が描かれ、天井には巨大な満月のオブジェが浮かんでいた。
部屋の中央には、黒曜石でできた祭壇のようなテーブルがあり、その上には銀の杯と、見たこともない文字で書かれた古い書物が置かれていた。
「ここは…何なの?」
「月巫女の覚醒と、契約の儀式を行う聖なる場所だ。三百年の間、この日を待っていた」
男は私を祭壇の前に立たせると、ゆっくりと私の周りを歩き始めた。まるで、獲物の周りを歩く捕食者のように。
「契約って…何の契約よ?」
「お前を我が伴侶とし、月巫女としての力を完全に覚醒させる契約だ。これにより、お前は永遠の命と強大な力を手に入れる。その代わり…」
男は私の背後に回ると、首筋に息を吹きかけた。
「永遠に、私のものとなるのだ」
ここまでありがとうございます!
ついに「契約」という言葉が出てきてしまいましたね。ヒーロー(?)の神楽、かなり強引です…!
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次回、逃げ場のない凛に、聖なる、そして抗いがたい儀式が始まります。彼女の身体と魂に刻まれるものとは――。