Prologue
田不酷腐 駄煮として初の連載作品です。
よろしくお願いします!
2050年、地球は近年劇的な成長を遂げ、AI技術が進歩し始めた頃の2020年代に比べ豊かになった。しかし、まだ完璧には程遠く、犯罪率は衰えていなかった。
ジャックは破壊の光景を眺めながら、口元に薄笑いを浮かべた。仲間たちがせっせと金庫を漁り、貴重品を袋に詰め込む間、彼は悠々とシガーをふかしていた。彼の足元には黒いバッグが置かれている。中には、この工場で生産されていた最新鋭の機器が入っていた。突然の轟音と共に、爆弾が作動し、建物が揺れる。閃光が辺りを染め上げ、耳をつんざく爆音が静寂を破る。吹き飛ぶ破片と共に、熱気が肌を焼きつけた。
「美しいもんだろう?」
ジャックは仲間に声をかけ、煙が立ち昇る瓦礫の山を指さした。
「これが俺たちの力だ。」
周囲は混乱とパニックに包まれ、人々の悲鳴が響き渡る。しかし、ジャックの心は静かだった。破壊と混乱の中で、彼は一種の解放感を感じていた。彼にとって、これはただの仕事の一環であり、成功の証だった。
「ジャック、ただの警察だけじゃないぞ。軍隊も来てる。」
フレッドが少し興奮した声で伝えた。
ジャックはシガーをくゆらせながら、不敵な笑みを浮かべた。
「いいね、それだけの価値があるってことさ。
さぁ、行くぞ。」
ジャックは軽快な足取りでその場を離れ、満足げに煙を吐き出した。
「次はどこを狙うか、楽しみだな。」
ジャックは黒いバッグを肩にかけ、仲間たちに合図を送った。
「よし、撤収だ。」
仲間たちは急いで動き出し、彼らのリーダーであるジャックの後を追った。彼らが立ち去る頃には、既に遠くからサイレンの音が聞こえ始めていたが、ジャックの顔には依然として冷静な笑みが浮かんでいた。
ジャックたちは落ち着いて距離を取り、
「これぐらい離れれば大丈夫だろう」と思って油断していた。だが、軍隊のハイテクトラックは持ち前の速さで彼らに追いてしまった。運転手のフレッドは慌ててスピードを上げたが、無駄だった。振り切ろうと試みるも、軍隊の運転手も巧みで、結局追い払うことはできなかった。
「おいジャック。どうすりゃいいんだ?!」
とヤスペルが叫んだ。
「盗んだ道具を使えばいいんだよ。ブラスターかなんかあるはずだろ。」
ジャックは冷静なまま言い返した。しかし、軍隊のトラックを打ってもシールドで無効化されてしまう。
「このままじゃ…」
「前を見てしっかり運転しろフレッド!」
ジャックは思わず焦りで冷静を保てず叫んでしまった。しかし手遅れだった。彼らは交差点に差し掛かり、人々が混乱する中、フレッドは人を避けようとしてビルに衝突してしまった。衝突の瞬間、ジャックたちの車は大きな爆発を起こした。
車の中でジャック以外は皆気絶していたが、ジャックは煙の中、大騒ぎになっている隙を利用しようとホバーボードを取り出し、工場から盗んだ道具を持って逃げようとした。その時、気絶していたヤスペルが目を覚まし、ジャックを見つめた。一瞬見ただけでヤスペルは状況をつかんだ。
「おい、まさか俺らを置いてって一人で逃げるんじゃねーだろうな?」
ジャックは黙って見つめ返した。
「ふざけるな、仲間だろうが!」
と叫ぼうとしたが、その声はとても弱かった。しかしジャックは聞こえたようで顔を横に振った。
「絶望的な時では、仲間なんてもんは足を引っ張るだけだ。安心しろ。俺はお前の分の夢も叶えてやるよ。」
そしてジャックは速攻その場を離れた。
「一緒に互いの夢を叶えるんじゃなかったのかよ!!」
ヤスペルはまた叫ぼうとしたが、まだ弱いままだった。
ヤスペルの隣では、目覚めたマイクがすぐに車から出て行ったジャックを見た。
「どいつもこいつも。」
とつぶやき、まだ気絶していたフレッドともう一人の仲間デックを車から連れ出した。そこで待ち構えていたのは、彼らを追いかけてきた軍隊だった。
軍隊の兵士たちは武器を構え、逃げ場を失った仲間たちを取り囲んだ。ジャックの姿はすでに遠く、ホバーボードの音だけが静かに響いていた。
「抵抗するな!お前らは工場の強盗の疑いがあるため即逮捕する!」
そう言ったのはアジア人だ。年齢は20歳くらいだろうか?その容姿や所作からは軍人らしさはまるで感じられなかった。多分軍服を着ていなかったらわからない。
「それにしても派手にやってくれたなー。1日に爆発2つだぞ?2つ。」
俺たちはひたすら黙っていた。
「お〜い〜、なんか言えよ〜」
「やめろウルフ!」
ガタイのいいアメリカ人が凄い剣幕で向かってきた。年齢は35前後くらいか。
「早く現場の処理を済ませろ。」
「了解っすタイガー。」
ウルフやタイガー…コードネームか。
「ハイパー!とりあえずこいつらは刑務所に連れてけ!今すぐに。」
その言葉で俺は終わりを悟った。昔と比べて今の刑務所は地獄だ。せめてジャックも一緒に苦しめばいいのに。彼に対しての恨みも抱えながら、俺たちはハイパーとやらが運転するトラックに乗せられた。
「おい、ウルフ。大統領がお呼びだ。」
「げっ!また説教かな…ちゃんと捕まえたのに。」
「説教されないはずないだろう。1人逃がしたんだ。しかもリーダーを。それと、次の任務がもう決まった。かなりでかい任務だ。」
「うっひょー!そりゃ楽しみだ。ハイパー、リンク、ベア、早く行こーぜ!」
この任務がこれから先の未来へ大きく影響を及ぼすことは、まだ誰も知る由が無かった。