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episode3-1

他サイトでは投稿出来ていたepisode3-1が小説家になろうに公開出来ていなかったことに気付いて後悔(激うまギャグ)

「かんぱい」


「かんぱーい」


グラスを軽く合わせるとカチッとガラスの音が鳴る。

仕事終わりにスタジオの近くの個室があるお店で私にしては珍しく寄り道した。後輩に誘われて来たが、もしかしたら私はかわいい年下の頼みが断れない性分なのかもしれない。

思い浮かぶのは同居人の顔。あと綺麗な顔にも弱いんだった。


「次の収録が終わったらつきしー先輩ともしばらく会えないですね」


「そうとは限らないでしょ。そのうちまたどこかで会うでしょ。多分」


「やっぱり多分じゃないですか」


「そういう職だし」


「それはそう」


おつまみ兼ご飯をつまんでる後輩の嘆きを聞き流しながら同居人にご飯不要の連絡をする。ケーキパーティーでもしてるんじゃないだろうか。知らんけど。


「つきみー先輩はなんで声優になったんです?」


「好きだったからかな」


「それだけですか?」


「そうだけど」


「かっこいいですね」


「そう?」


好きだから、という理由で職に就けて、なおかつそれなりに成功出来ているのはかなり運がいいと自覚はしている。

きっかけは高校生の頃、友達が居なかった訳ではなかったが、グループで馴れ合うことがどうしても苦手だった。相手の顔色を窺い、思ってもないことを口にしなければ成り立たない関係なんてあまりに面倒だ。そんなものに価値なんてあるのだろうかと今でも思う。

それが嫌で趣味に熱中した結果こうなった。

大人になった今でも馴れ合いの関係など全くない。太く短い、気の使わない関係とは気楽で心地よい。


「ご両親は?」


「別に?反対されることもなく」


「羨ましい」


「そういえば、あなたのご家族は大丈夫なの?飲みに行くって伝えたの?」


「してますけどなんですかいきなり。これ以上過保護が増えるのは御免なんですけど」


「違う。あなたが怒られたりしたら申し訳ないでしょ」


少しうんざり顔。大きめの唐揚げを一口で食べてチューハイで流し込んだ。

この子の両親は相当な過保護らしい。声優を目指すと打ち明けた時もとても大変だったとか。

まあ過保護になる気持ちも分かる。そもそも親というのはそういうものだろうし、この子の容姿はふわふわ系でかわいく、おまけに巨乳だ。

そりゃ不安にもなる。一人暮らしに憧れがあるらしいが、両親が反対するというのも納得する。


「大丈夫ですよ。伝えてあります。頼れる先輩と飲みにいってきますって」


「盛ってない?」


「確かに」


「否定はしない」


そういうキャラではないけど、確かに面倒見はいい方かもしれない。現に一人のヒモを抱えているし。


「つきみー先輩は一人暮らしでしたよね?」


「そうだけど?」


「今嘘つきましたね?誰と一緒に住んでるんです?」


???????????????

なんでバレた。いや、別に悪いことをしている訳でもやましいことがある訳でもないのだからバレても問題はないと言えばないのだけど。

なんて言うかこう……バレたくはない。


「いや嘘じゃないって」


「つきみー先輩、嘘ついてる時瞬き多くなりますよね」


「……そうなの?」


「この前大人数の面倒そうなご飯会断ってた時そうでしたよ」


「マジ

で?」


「大マジです」


そんなクセあったのか。

そういえば、以前杏理にも『悠貴さん、クールぶってますけど結構分かりやすいですよ』と言われたことを思い出した。自覚はしていないが、どうして私の周りは勘のいい人間ばかりなのか。

杏理のことを知っているのは今のところ姉だけだ。本当は姉にも知られたくはなかったけど、突然妹の様子を見に来た姉フラによりバレた。

あの瞬間の気まずさったらない。友達だとでも言っておけばよかったとは思うが、あの調子ならばいずれはバレるし姉にだけは明かした。

杏理の性格上得意そうではないが、姉もバカではないからなんとかやってくれるだろう。……多分。


「で?誰と一緒に住んでるんです?」


普段はふわふわしている感じの後輩の圧がすごい。

これは……大人しく話した方がよさそうだ。











「今から後輩連れて帰るけどいい?」


「いや、普通に無理ですけど」


いつも通りゲームをしていたら、突然電話が来てそんなことを言われた。

同居人の後輩、要するに知らない人が家に来るとか冷静に考えても考えなくても無理に決まっている。私のコミュ力を知っているであろう同居人による無情すぎる頼みだ。

しかも家て。すっぴんだし。部屋着だし。断りたすぎる。


「そもそもどうしてそういう流れに?」


「収録の打ち上げも兼ねて二人で飲みに行ったらそんな流れに」


「えぇ……」


「ていうか迎えに来てよ」


「えぇ……」


「タクシー代もったいないし。じゃあ待ってるから」


「えぇ……」


機械音と部屋の静寂が電話が切れたことを伝える。行くしかなくなってしまった。

悠貴さんからお店の位置が送られてくる。リンクだけで送られてきているが、来いという文章も一緒に付いているように見える。もはや声が聞こえる。


しょうがないなあ。行きますか。

……いや、やっぱり煙草を吸ってからにしよう。





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