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ファミレスに着いて本庄と一緒に夕飯を食べていたのだが……





「あんたって高校デビューとか言われてるみたいね?」

「あ、知ってんのか?」

「別に。 どっかの男子がうちのクラスに来てあんたの中学生の頃のアルバム見せびらかしてっただけよ」

「ふーん、で? どうだった??」

「感想訊きたいわけ?」



俺が笑顔で頷くと本庄は頬杖を付いて喋った。



「まずはあの外見で今の態度だったの? だとしたら痛過ぎもいいとこ」

「安心しろ、そこはもう産まれたての子鹿のように震えて心の中もおぼつかなかったよ」

「それがどうしてそんなに自信満々になってんの? 見た目変えたから??」

「まぁキッカケはそれかな、それにウジウジしてる奴なんて現実モテないだろ」

「どっちにしたって私はあんたなんてどうも思わないけどね。 私じゃなくて他を当たればいいじゃん?」

「お前と決めたからには俺はお前を落とす」

「マジでなんなの? 最悪」



本庄は顔を手で覆いガクッと項垂れた。 俺は一応高校デビューみたいなブサメンとは付き合えないとかくるのを覚悟してたんだが。 



「何よ?」

「いやー、もっと中学の頃をつっこまれると思ってたんだけど」

「別に。 そんなのあんたにとって昔のことなんでしょ? それについてあんたを貶しても大したダメージなさそうだしあんたと違ってそこまで無神経じゃない」

「おっと、手痛いな。 俺もそんなに無神経じゃないぞ?」

「じゃあこういうのやめて」

「悪い、本庄のこととなると俺はこうなるみたいだ」

「はぁー…… ホント最悪」



そしてそのまま夕飯を食べ終えた。 今日はこのくらいでいいとしよう、別にこれがあったからって進展するはずもないし時間はまだまだある、告白とこうしたデートを何回か繰り返してしっかりと本庄に俺を認識させる。



「あ、はい、お金」



店を出ると本庄からお金を渡された。 俺の奢りってつもりでレジでも本庄は俺が払うことになんにも言わなかったが……



「ガキは黙って奢られとけよ」

「あんたこそガキのくせに何言ってんの?」



ふッ、またやっちまった。 まぁいいけど。



「送って行こうか?」

「冗談じゃないわよ、あんたに家とか知られたくないし」

「そっか、じゃあまた明日な」

「明日もあんたの顔見るとか勘弁だから」



そうして本庄は帰って行った。 





次の日……






「本庄!」

「なんであんたことごとく私の居る所見つけんのよ? キモいというより怖くなってきた」

「今までどんだけお前を探し歩いたと思ってんだよ? もう残り香でわかるわ」

「やっぱキモッ……」

「ところでさ」

「あー、あんたとはお断り」



俺が話し出す前にもう言うことわかってると言わんばかりに被せてきた。 甘いな本庄、ここからは変化球だ。



「なんのことだ」

「は?」

「俺は昨日楽しかったから告白じゃなくてただ単にお前と喋りに来たんだ」

「…… あっそ。 てか昼時に来ないでくれる? あんたが居ると味も何もわかったもんじゃない」

「それって俺が気になって?」

「本当の目的は私を怒らせに来たの?」



ギロリと本庄に睨まれる。 



そんなことをされても俺からしてみたら精一杯本庄が頑張って俺を見つめてるようにしか見えないぞ?



「というよりお昼ご飯食べてるの? もう三分の一お昼休み終わってるけど」

「それなんだけど今日弁当忘れてさ」

「はあ?」



翼の奴が夜中までメールして来るから朝起きた時はずっと寝呆けてて忘れちまったんだよな、売店で買うからいいけど。



「なんかそれ聞くと私に何かねだってるみたいで嫌な気分になるわね」

「いいよいいよ、本庄はそのまま食っててさ。 俺はお前と話しに来ただけだから」

「はぁー、ウザったい」



本庄は俺の話を聞き流しながら弁当を食べる。 だが……



「あんたってさ、今はそれなりにモテるんでしょ? こうして無駄なことしてないでそっちに行けばいいじゃん」

「本庄だってこうしてひとりで食べてないで誰かと食べたりしないのな」

「大きなお世話」

「なら俺も言われるのは大きなお世話だな」

「私の平穏を奪ってる奴に言われるなんて思わなかった」



すると本庄は鞄をゴソゴソとしていると俺の顔にバシッと何か投げてきた。



それは昨日UFOキャッチャーやってる時についでに取って本庄の鞄に無理矢理入れたお菓子だった。



「入れっぱなしだったの、邪魔だし食べれば」

「へぇ、優しいとこあるんだな」

「邪魔だったって言ってたの聴こえなかったの?」

「はいはい」



そこそこ話して本庄の堪忍袋の緒が切れる前に退散する。



なんとなく手応えはあるかなぁと思って教室に向かって歩いていると後ろからいきなり肩を組まれた。



「よッ、皆本」

「お前…… 誰だっけ?」



そう言うとそいつはガクッと力が抜けたみたいにへこんだ。



勿論それは冗談でこいつは知ってる。 2年になると同じクラスになって所謂クラスカースト上位に居る中澤航だ。 顔も良く男子女子にも気さくで昔はあんなブサメンだった俺にもよく話し掛けてくれたっけ。



「まぁ別クラスだからそうだよなぁ。 俺は中澤航、よろしくな」

「俺みたいな高校デビュー野郎になんか用か?」

「そうツンケンすんなよ、別にお前が高校デビューって言ったって今のお前のそれは努力の結果だろ? 誰にも文句言われる筋合いなんてないよな。 それは置いとくとしてお前すげぇよな」

「何が?」

「俺さっきちょっと見ちゃったんだけどあの本庄と弁当一緒してるなんてさ、熱烈アタックしてた皆本に気を許してんのか?」

「そんなんだったらもっと仲良くなってるって。 周りはそんな風に見えてるのかもしれないがいつもあいつ怒ってるしな」

「俺はあいつのこと中学から知ってるけどさ、それでも誰かを隣に座らせるなんてなかったことを考えると快挙だって」



そうか、あれでも本庄は大分譲歩してるのか。 これはやっぱり手応えがあったと思っていいみたいだ。 けれどここからが更に苦戦するだろうなぁ。



「てかそれだけ?」

「いや、俺もお前のこと気に入った! 最初はどうせすぐ諦めるだろと思ったけどその後何回も本庄に告白しまくるなんて並の精神力じゃ無理だ、俺も本庄に告白する度胸なんてないしな。 そういうことで友達にならないか?」



イケメンはイケメンを呼ぶとは正にこのことか。 おっと、自意識過剰発言自重…… どっちかといえばいくら俺が変わったからといってもこいつの方がイケメンだ。



「友達になるくらいなら別にいいけどな、俺ってその分敵がいるっていうか」

「ああ、お前の中学の頃のアルバム見せて歩いてた頭の悪そうな奴らだろ? そんなバカは俺も気にしないさ、てことで改めてよろしく皆本」

「じゃあよろしくな中澤」



そうすると中澤はニコッと笑って俺の背中をポンと叩いて自分のクラスに行った。





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