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俺は今日本庄とデート(自分だけそう思っている)をするので放課後になると本庄を待つために昇降口で待機していた。



「あ、皆本君今日もするの?」

「いや、今日はそんなんじゃないんだ」

「もうあたしと付き合っちゃおーよ?」

「あたしでもいいよ」



女子にこんなに囲まれるなんて前の高校生活じゃ考えられないことだ、思えば高校時代にモテなくて社会人になっていきなりモテるようになってしまったため俺は拗らせてしまったのかもしれない。



「なぁなぁ皆本、ゆいちゃん俺のタイプなんだけどお前仲良いだろ? だからさ……」

「ああ、2人きりで遊ぶセッティングして欲しいんだろ?」

「話早いな! つーかしてくれんの?」

「いいよ」



男子も俺が女子と仲良いから自然に友達も多くなる。 特に好きな女子が絡むとなると俺に頼んでくる奴も結構居た、俺は本庄に告りまくってたからか他の女子のことは眼中にないと思われてるらしく大して敵視されてないみたいだし。 というよりWin-Winな関係になった方がお互いいいからな。



逆に俺と仲が悪い辰也グループが俺に対する悪口をいまだにネチネチと言ってるので俺に助けられた男子からいい加減にしとけよとかそれ以外からも「マジでこいつら皆本を妬んでんだな」というイメージになってしまっていた。



それより本庄はまだだろうか? 結構待ってるんだがもしや俺がここに来る前に帰ったとかないよな??



待てど暮らせどやってこない。 今までの俺に対する仕打ちかなと考えていて人だかりも収まってきて昇降口はガランとした頃だった。



「まだ居たんだ?」

「やっと来たか本庄」



俺がまだ待ってるのに少し意外という感じだったがすぐに靴を履き替えて俺の前に来た。



「どっか行くんでしょ?」

「ああ」



俺はこうまで遅くなったから本庄は心変わりしたのかと思ったけどそうじゃないみたいだ。 まぁ俺がこんなに待ってると思わなくて少しは悪いと思ってるだけかもな。



「ゲーセンとか行く?」

「行かない…… けど行ってもいいわ」



ほぉ、こりゃゲーセンとかほとんど行ったことないな多分。 



ゲーセンに着くと本庄はキョロキョロと辺りを珍しそうに見ていた。



「何かやりたいゲームあるか?」

「さぁ…… よくわかんない」

「それならあれやろう」



さりげなく本庄の手を握ってゲーム機に促すと本庄はその手を振り解いた。



「どさくさに紛れないで」

「案内しようかと」

「手を繋ぐのが必要?」



相変わらず気を許さないのな本庄、それでこそラスボスだ。 



「そうだ、あれなんかどう?」

「別にいいけど」



俺が選んだのはこの頃よく見掛けたゾンビを撃っていくゲーム。 



「ペダルを離すとリロードだから。 撃つ時はペダルを踏んで」

「ふーん」



聞いてるのか聞いてないのかよくわからんが本庄は銃のコントローラーを見ていた。



「全部皆本君だと思って撃てばいいんでしょ?」

「その心は?」

「私にとってゾンビみたいなもんだから」



はい、キツい一言頂きました。 でもそんなん言われたって俺はたかが学校一可愛い小娘が言うことなんかで動じないけどな。



そしてゲームが始まると凄い勢いで本庄はゾンビを撃ち倒していく、俺より上手いんじゃないかってくらい。



「凄いなお前」

「いつも私に迷惑掛ける皆本君を撃ってると思うとストレス解消になる」

「ははッ、じゃあこれでしっかりストレス解消してくれよ」

「バカじゃないの」



ひとしきりゾンビを撃った後ボスも倒してしまい飽きたのか本庄は自分が撃っていた銃を俺に渡した。



あ、本庄の携帯が鳴ってたみたいだ。 それにしても2丁拳銃はいいけどペダルを踏むのが忙しい。 



「あー、ここまでか。 こんなに長持ちしたことはなかったなぁ」



少しすると携帯持ってどこかへ行った本庄が戻ってきた。



「あれ? さっきのゲームもう終わったの?」

「ああ、やられた」

「ふーん、皆本君ってヘタクソなんだ」

「本庄が意外と上手かったんだって」



隙あらば俺を罵倒していくスタイルのようだが甘いも苦いも噛み締めてさらに死んじまった俺には通じないな。



だが本庄は何気にゲーセンを楽しんでるみたいだった。 ひとりでUFOキャッチャーの方に行ったかと思ったら真剣にやってるし、どれどれ。 ここは俺が本庄が取りたがってる物を取ってやるとするか。



「それ狙ってんのか?」

「別に。 なんとなくやってみてただけだし」



ウサギのぬいぐるみか。



本庄が動かしたアームはウサギを掴んではいるがアームの挟む力なんてほぼないので持ち上がりもせず外れてしまう。



「これ詐欺だし」

「まぁそんなもんだよゲーセンのUFOキャッチャーなんて。 でも俺なら取れるかも」

「は? 調子に乗らないでよ、さっきもヘタクソだったあんたに取れるわけないじゃん」

「ふッ、こんなことは頻繁にあったさ。 場数が違うんだよ場数が」

「何言ってんの?」



昔女とたまにゲーセン行くとよくUFOキャッチャーやってたしな、こういう手合いの台の心得は存じてるんだよ。



アームで掴むんじゃなくて移動させて落とせばいいんだ。



「ホントに取れた」

「ほらな」



だが本庄は自分に取れなかったのが俺に取れてしまい普段からキツい目付きがより一層キツくなった。



「欲しかったんだろ?」

「別にいらない、なんとなくやってみただけだし」



拗ねる本庄はプイッとそっぽを向いた。 仕方ないな。



「ちょッ!? 何してんの??」



俺は本庄の鞄を開けてウサギのぬいぐるみを突っ込んだ、突っ込んだぬいぐるみは頭が本庄の鞄からこんにちはしていた。



「可愛いじゃないか」

「バカらし」



本庄はぬいぐるみの頭をグイッと押して鞄に入れた。 文句言いつつ貰ってくれたなこれは。



「なあ、そろそろどっかで飯食ってかないか?」

「誰と?」

「本庄とに決まってるだろ?」

「ああ、そう」



本庄はまたも溜め息を吐いた。





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