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「で、かれこれそうゆうわけなんだよ」
「ふーん。 で、それを信じろと?」
愛菜が物凄い疑いの眼差しで俺を見た。 愛菜は俺と渚の話していることにところどころ納得がいかないことがあったみたいでどういうことか教えてくれと言われたから愛菜だから包み隠さず言ったのに。
「それであんたは2021年からやって来たと?」
「んー、そういうことになるかな」
「おかしいわね」
「え?」
「そんなとこから来たなら先見の明を評して今頃超大金持ちになっていてもおかしくないと思うんだけど」
それはごもっとも。 でもいきなりこうなったんだから前知識がないとそれは難しい。
「いやでもほら、アニメとか漫画とかこれから流行るものとかわかるし」
「…… 全然興味ないんだけど」
「だよなぁ〜」
学校のこともいじめられてたくらいとしかあんまり覚えてないしな。 だからこそ戻って来ても飽き飽きせずに済んでる部分もあるけど。
「あっちゃん今日は部活行くの?」
「お前は?」
「あっちゃんが行くなら行く、行かないなら行かない」
「自分で決めろよなまったく。 今日は愛菜の部活してるのでも見てみようかなって思ってたから行かないわ」
「うわぁー超迷惑だね」
「うるさいな、だからついてくるなよ」
「ううん、私もついでに行こうっと」
俺この前ハッキリ言ったよなこいつに。 もう脈なしだってわかってるよな?
「つーか愛菜が待っててって言ったんだから迷惑じゃねぇだろ、いつだったか勉強教えるって言ってたろ? それに俺休んでた期間長かったからな」
「そういえば私もサボった期間結構ある。 本庄さんに教えてもらおうかな? てか教えてくれるかな?」
愛菜にジュースでも買って行ってやろうかと思ったら翼と萌と西条も売店に居た。
「よっす皆モン〜、こっちこっち!」
「もうすっかり元気だねぇ」
「皆本、そっちよりこっちに来いよ!」
「なんかお前らいつの間にか三馬鹿トリオみたいになってるな」
「ひどーい! 萌はともかくピンキーと同格みたいに扱うのやめてって〜」
「そうだよ皆モン、うちらに失礼だよ」
「てめぇらが1番失礼だろッ!!」
西条が翼に向かって投げた紙パックのジュースが翼の手に弾かれ俺の隣に居た渚の頭に直撃する。
つーか何度こういうデジャヴを繰り返す気だ?
「ピンキーってわざとナギを狙ってる?」
「ち、ちがッ…… つーかお前も避けろよ渚ッ!」
「だっていきなりだし」
「皆本、これからどっか行くのか?」
「ああ、愛菜に勉強教えてもらう」
「じゃあアタシもついでに教えてもらおうかな、ってなんだよお前ら?」
「あんたはこれからうちらと遊ぶんでしょーが。 せっかくぼっちのとこ誘ってあげたのに」
「ぼっちじゃねぇーし!」
西条がうるさいのでジュースを買ってそそくさと売店を出て体育館へ向かった。
「ねえ、私のこと避けないね? 普通について行っちゃうよ」
「避けてどうするんだよ、それに避けたら避けたで後が怖いし」
「ふふッ、何もしないのに」
もうこいつを変に遠ざけたりしない、だからと言って付き合うわけでもないが。
体育館に着くと練習中の愛菜が俺を見つけてニコッと微笑むが隣に居た渚を見て「なんでお前まで居るの?」的な顔をする。
「あははッ、やっぱ私はお邪魔みたいだねぇ」
「わかっててついて来たんだろ?」
「まぁね。 それにあっちゃんも止めないし」
「はいはい」
しばらく待っていると部活が終わったみたいで愛菜がこちらに来た。
「お待たせ、それより凪野さんも一緒なの?」
「ああ、ついてきた」
「えへへ、ごめんね」
「別にいいわ。 良かったら夕飯どこかで食べて行かない?」
「いいけど」
「私もOK!」
適当なファミレスに寄ってご飯を食べた後……
「で、2人ともあんまり学校に来てなかったからとっくに置いていかれてるわよね?」
「あはは……」
「まぁ頭打ったせいでバカになってるかもしんないし」
「…… あのさ凪野さん、新太から聞いたけど凪野さんも新太と同じような経緯なのかしら?」
「あ、言ったんだあっちゃん? そうだよ、私もあっちゃんと一緒に来たの」
それを聞くと愛菜は深いため息を吐いた。
「マジなの?」
「うん」
「だったら…… まぁいいわ、それなら凪野さんが言ってた新太とアレしたってのはそういうことなの?」
アレ? アレって何?
渚の方を見るとニタッと笑って俺を見た。
「そうだよ、あっちゃんとセックスいっぱいしたよ。 ねぇあっちゃん?」
なッ!? そ、そういうことか。 渚の奴何とんでもないこと愛菜に言ってんだ?
「新太……」
「い、いや、それはあっちの世界のことでこっちでは何もしてないしノーカンだって」
「あ、そっかぁ、私も処女に戻ってるんだ。 ならあっちゃんに貰ってもらおうかなぁ」
「凪野さん、今すぐここから消えてくれないかな?」
「あはッ、冗談だよ、ちょっと揶揄っただけだし。 お子ちゃまはこれだから」
「おい、ちょっと揶揄うのに何火に油注いでんだよ」
「したってことよね!?」
「そ、それは俺と渚の話を信じると?」
「凪野さんだけならあんまり信用出来ないけど新太も言うんだったら信じるし」
「さりげに私ディスられてるし」
愛菜はそういうことなら引っ掛かっていたことも納得と言ったが渚がセックスがどうとか言うから微妙な雰囲気になってしまった。