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「本庄ッ!!」



私が本庄さんにナイフを構えて張り詰めていた空気を破ったのは誰かの声がして……



あれはつかさちゃん? なんでここに??



「ってええッ!? こ、これどういう状況なん? ぶはッ、本庄お前顔が、ははははッ! 渚もじゃん」

「何しに来たのあんた? 死にに来たの?」

「んなわけねぇだろッ!! ってか渚はなんでナイフ持ってるわけ?」

「あ…… ええと」

「わかった! どうせ本庄がお前のこと怒らせたんだろ? 普段おっとりしてる渚をここまで怒らせるなんてお前最低だな!」




…… つかさちゃんの登場で完全に空気が変わってしまった。 この雰囲気でさっきの続きなんて再開する気にもならない。



「はぁ…… それでなんなの? なんであんたがここに居るの?」

「ああ、そうだ! 皆本の奴目が覚めたんだよ!!」

「えッ?」



うそ…… あっちゃんが??



本庄さんはそれを聞いて一目散に病院の方に駆け出した。



「ちょッ! 待てって」



つかさちゃんも後を追って私もそれについて行った。



「つかさちゃん、どういうことなの?」

「それがよくわかんなくてさぁ、あいつ起きた途端アタシにここに行ってくれって言われて来てみたらお前ら居るじゃん、こっちがどういうことか聞きてぇんだわ」



信じられない、なんでこのタイミングであっちゃんが。



病院に着くと本庄さんがあっちゃんに縋って泣いていた。



「新太ッ、ううッ新太ぁ」

「なんかよくわかんないけどお前その顔大丈夫か?」



本当に目が覚めてる。 



本庄さんの頭を撫でていたあっちゃんは私に気付く。



「渚、とりあえず無事で良かったな。 つーかお前の顔も大丈夫か?」

「あっちゃん…… なんで」

「はあッはあ、渚脚速すぎだろ」



少し遅れてつかさちゃんも来た。 けどその日はあっちゃんの親とかが来てろくな話も出来なかった。








それからあっちゃんは寝たきりだったのでリハビリしたり目立った後遺症とかがないか検査して退院する頃には年が明けていた。



病院にはよく本庄さん達が行ってたみたいで私も話はあるにはあるけどそれ以前に会いに行くのが少し気不味くなっていたからほとんど会ってない。



それとあっちゃんが目覚めて私の何かが変わったわけでもなく相変わらず。 



あっちゃん的にはハッピーエンド、じゃあ私は? 



ははッ、まるで私がついでにここに連れて来られたみたいだ。



私は夜、家を出てまた日課だったランニングを始めた。 こんなこと今更何の意味があるんだろう? そう思っていたけどやらないと嫌なことばかり考えてしまうから走った。



はぁ、寒くなったなぁ。 一体私は何をやってるんだろう? 学校にもほとんど行ってない、行ってもあっちゃんとは前みたいに話してないし向こうも私に寄ってこない。



当たり前か、同じ女のせいで一度は死んで二度目も死に掛けたら。



ていうよりどうでもよくなったって言ってた私が何気にしてるんだろう?



これじゃ未練タラタラ、死のうと思ってても邪魔されたせいかわからないけどそういう衝動も今はないし。



死ぬことも諦めてあっちゃんのことも諦めて私ってなんのためにここで生きてるの?



あっちゃん以外はテレポッドで転送失敗したヒヒみたいな人達の中で誰を好きになれって? 



そもそもここまで拗らせた私にまともな恋愛なんて出来そうにないけど。 





走っていると反対側から同じように走ってくる人が居た。



「へ?」

「よッ」



それはいつも私が走ってた時にわざわざ偶然を装って会いに行ってたあっちゃんだった。




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