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思ったよりも広いなぁここ。 ちょうど良さそうな木は……
枝にロープを垂れ下げそれを持って体重を掛けてみる、少ししなるけど大丈夫そうだ。
あ、足を置く台も用意しないと……
死のうとは思ったけれど首吊りで死のうってさっき思い付いたばかりだったから所々用意が足りない、だったらホームセンターで台も買って来ておけばと思っていた。
「あ、あんなところにちょうどいい石碑がッ!」
ポツンと何か祀っているのかも知らないけど50センチくらいの石の塊、これから死のうとさている私には別に罰当たりとかそういうのはどうだっていい。
あ、でもただ借りるのはあれだから手を合わせておこう。 私をちゃんと死なせてと……
石碑を引きずってロープの下に配置した。
やっぱり高さもちょうどいい、まるでこれで死ねるよと言われてるみたい。
「よいしょッ」
石碑の上に乗りロープを首に掛けた。
「殺したり今まで迷惑掛けてごめんねあっちゃん」
足場の石が結構重いので私は思い切り脚に力を入れて押し倒した。
支えがなくなった途端首にロープが食い込んだ、あまりの苦しさに私は脚をジタバタさせる。
うあッ、凄く苦しいどころじゃないッ! 私死ぬ…… ああ、死ぬんだった。
意識が途切れそうになった瞬間私の身体は地面に落ちていた。
…… あれ? あれッ?!
「バカじゃないのッ!! あんた話聞いてなかったの!?」
そこには声を張り上げる本庄さんが居た。
「ほ、本庄…… さ」
次の瞬間私は髪を鷲掴みにされて顔を上げさせられると……
「あんたはッ!!」
バチン! と頬に痛みが走った。
「新太から助けてもらったッ!」
そしてもう片方の頬にも。
「それをッ、全部無駄にするところだった!」
最後にまた頬をビンタされた。
3回もビンタされた…… それよりなんでロープが? 見れば本庄さんの手にはナイフが。
死ぬ気? と問われた。 私は誤魔化したけど本庄さんは気付いた??
ううん、それよりも私が死ぬのを邪魔された。 またしてもッ!
「そうだよ! 全部無駄になればいいッ」
「な……」
「本庄さんにはわからない! 何もしないくせに私の欲しかったものが簡単に手に入る本庄さんには!」
「言いたいことはそれだけ?」
「あるッ!! でもね、私そんなあっちゃんとセックスしたことあるの。 何度も何度も」
あっちゃんが私と付き合い始めた頃の昔話だけど。 まぁ本庄さんにとっては嘘にしか聞こえないでしょうけど、でも効果的面、本庄さんは拳をプルプルさせてる。
私とあっちゃんが2人きりで居た時の出来事だと思ってるかな? ふふふッ。
「だから…… それだけ?」
「え?」
「ふざけないでよ!? だから何よ? そんなの新太の目が覚めたらいくらでも出来ることよ!! 私が怒ってるのはあんたの無責任さに怒ってんのよ!」
何がいくらでもだ、あっちゃんに好かれてるからって!
私は本庄さんに体当たりした、その表紙にナイフが地面に落ち本庄さんに馬乗りになる。
「私はあっちゃんも本庄さんも許せない! 助けたつもりになっていい気分? 私をぶってスッキリした?!」
私は手加減しない、ビンタじゃなくてグーにして本庄さんの顔を殴った。 1発、2発3発と。
あ、これ…… 私本庄さんをボコボコに出来る。
自分の拳に付いた本庄さんの血を見て思った、けど……
髪の毛を本庄さんに掴まれ地面に顔を叩き付けられた。
「こ、このッ!!」
「調子に乗らないでよ、引きこもりのあんたに負けるわけないでしょ!!」
本庄さんとしばらくもみくちゃになっていると近くにさっき落ちたナイフを見つけた。
私は咄嗟にそれを取り本庄さんに向かって突き立てると本庄さんは私から離れた。
「私が死ぬ前に殺してあげよっか?」
「あんたにそれが出来んの?」
知らない、本庄さんは知らないんだ。 私があっちゃんを刺したことを。 だから出来る、それにあっちゃんを指すよりずっと心の負担が軽いはず。
私が笑うと本庄さんは何か感じ取ったのか急に後退りする。
あっちゃん、ここまで来たら本庄さんも連れて行くね。