52
石打の刑……
あっちの国では浮気したら石打にされるんだぁ。
ネットを調べてみると更に詳細が載ってあった。
わッ、凄く美人。 というよりなんで女の人だけが? この人が刑にあうの?
更に調べていくと刑が執行され下半身を埋められ民衆から石を投げられていく、とても綺麗だった美人の顔に容赦なく。 綺麗だったその顔は鮮血に染まり刑が終わり息絶えたその女性の顔は酷い有様になっていた。
何故かふとそんなことを思い出した。
なんでいつも女の人が酷い目に遭うんだろう? でも刑罰に処された女性はどことなく本庄さんに似ていた様な気がして可哀想だったけどその姿を本庄さんに重ねてしまった。
「ふふッ、石打かぁ」
まぁやらないけどね、下らない。 私ってなんなんだろう? なんでこんなとこに来たんだろう? 反省、行いを悔い改めさせられてるの?
あっちゃんはあっちゃんのままなのに。
◇◇◇
「あっちゃん」
「うわッ!!」
夜道で渚に遭遇するとビビるわ、今となってはこいつは普通にヤバいことしそうに見えて。
「もう夜に走れるくらい脚よくなったんだね」
「ああ、誰かさんのお陰で筋トレもままならねぇ状態だったからな」
「ごめんって。 もう脚刺したりしないよ」
「脚は刺さないけどもしかしたら違うとこ刺すみたいに聞こえるけどな」
「一応悪かったって思ってるし、走るなら一緒に走らない?」
「お前さ、別にもうそんなことしなくても大体わかってるから」
「ううん、始めたら結構楽しくなっちゃったから。 もしかしたらもうあっちゃんや本庄さんより脚速くなってたりして」
そんな気もするから怖い、走って逃げても無駄だからねと言われているような気さえする。
「あっちゃんはさぁ、本庄さんのどんなところが好き?」
「なんだよいきなり?」
「なんとなく。 訊いたからには怒らないよ」
「嘘くせぇ」
と思ったが割と冷静に俺と走っているように見えたのでわからせるにはいいと思って言ってみた。
「例えばあいつが普段ムスッとして気難しいように見えるけど笑った時はそんな顔してたってのが忘れるくらい良い顔で笑うところとか結構律儀で恥ずかしいことでも恥ずかしがりながらも言ったりするとことか……」
「ふーん」
渚は普通に聞き入っていた。
「あとは…… ってめっちゃガキくさいなこういうのって」
「あははッ、見た目は高校生なんだから別にいいじゃん」
「なあ、お前ってまだ俺のこと」
「許してないし許さないよ」
言う前に即答、まぁそう言われると思ってたけど。
「覚えてる? あっちゃんがさ、私に飽きてきた頃に言った台詞」
「悪い、覚えてないわ」
「お前と居ても全然楽しくない、それに元々タイプじゃないしただのセフレ、もう鬱陶しいし俺の前から消えろ」
………… 俺こいつにそんなこと言ったのか? 多分1番調子に乗ってイケイケしてた時に言ったんだろうけど最低だな俺って。
「そりゃないよなぁ」
「ないでしょ? あっちゃんは最低だし今も最低。 ピュアだった頃のあっちゃんを返してほしい」
「そんな無茶な」
「なんのために私ってここに居るの? またあっちゃんに酷いことされるため??」
俺は渚にもう酷いことするつもりは毛頭ないが俺が愛菜と付き合いたい状況がこいつにとって酷いことなら俺だって自業自得とはいえお前に殺されたんだ、憎い相手を殺したっていう事実は事実なんだし少しはこいつの中で恨みとか晴れてないのだろうか?
「昔いじめられてた頃の俺ってそんなに良かったか?」
「いじめられてたのは可哀想だったしあっちゃんに対するいじめは許さなかったよ? 私も何も出来なかったし勇気もなかったし。 でもいじめられてたからって本庄さんにフラれたからって私はあっちゃんのことずっと気になってた」
「どこかお前に気にされる要素なんてあったか?」
そもそも俺はなんでこいつに好かれたんだ? いじめられててクソダサだったのに。
「ほんと私ってあっちゃんの印象に残ってないよねぇ、あっちゃんは私にあんなに優しかったのに」
「え?」
「ここに来てから間もない頃あっちゃん私に会ったよね?」
そういえば最初の頃確かにこいつに会った。
「少し状況は変わってたけどあの時私お母さんと大喧嘩しちゃって家を飛び出したんだけど偶然その時にあっちゃんと会ったんだよ、あっちゃんはお姉さんから何か買い物頼まれてて。 その時元気なかった私を同じ様に慰めてくれて…… 凄く嬉しかった、それからかな」
「それだけ…… そんなことで?」
「そんなもんだよ、あっちゃんは今のあっちゃんなのに戻ってきた後も優しくしてくれたよね」
まさか、まさかそれで…… 何年前の話だよ? 俺にはまったく記憶にすらなかったのに。