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「ぐあああッ、は、腹が……」

「大丈夫?」

「ここで漏らすなよ、とっととトイレ行けよ」



図書室で渚に勉強を教えてもらっていると急に便意を催した祐希がダッシュでトイレに行った。



「大丈夫かな?」

「漏らしたらある意味面白いけどな、まぁいいや、続き教えてくれ」

「あ、うん」



何か渚が俺に言いたげに隣から視線を感じる。 



「何か言いたそうだな?」

「私が? 皆本君に??」



俺に言われた途端図星をつかれたような顔をしたが渚はシラをきるつもりらしい。



「まぁなんとなく想像はつくけど」

「え?」

「大方例の教室でのことだろ?」

「あ…… えっと」

「渚も見たかったのか?」



遠慮したように首を縦に振る。 まぁ見たがってたもんな、仕方ない。



「この携帯の中に実はあるんだ昔の写真」



そう、渚で少し遊んでみようかなと思って撮ってきたんだ。 



「そうなの?!」



ふふふ、俺の手の中の携帯に夢中だ。



「そんなに気になる? 俺の昔の写真。 なんで?」

「え? な、なんで??」



こんなの普通になんの気もない奴が言ってたら「は? こいつマジキモッ!」とか思われそうだが目の前の渚は違う。



だって少なからず俺に気があるからこうしてわざわざ時間を割いて勉強だって教えてるし俺の高校デビューする前も気になってる。



多分偶然こいつと会った時、話し掛けてそんでもって同い年で高校が同じだったからちょっとした運命めいたものを感じたんだろう、ガキはチョロいぜ。



「だ、だって皆本君とは友達だし」

「ん? 俺と渚ってもう友達になってた?」

「ええッ!?」



俺がそう言うとあからさまにショックな表情を見せる。



いやー、相変わらずモテるのって楽しいな。 それも高校時代に。



楽しすぎて悪ノリしている感が強かったので心の中で咳払いをして少し落ち着く。



いかんいかん、俺は4股して刺されて死んだことを忘れたのか? やってることはベクトルは違うが辰也達と同じようなもんだぞまったく。



「私…… 私は皆本君のこと友達だって」

「ごめん意地悪して。 うん、渚とは友達だよ。 お詫びに見せるよ」



画面を開いて渚に携帯を渡した。



「ふッ!!」



画面を見ると渚は声にならない声でビックリして画面と俺を見る。



「な? あいつらが俺をバカにしたのもわかるだろ?」

「えっと…… でも凄いよ、こんなに変われるんだね。 頑張ったんだね皆本君は」



しばらく画面を見た渚は携帯を閉じて俺に渡した。 



さて、これでこいつもどう出るか。 普通に無理っていうのも別になかったこともないし俺の中ではもうなんとも思わないしな。



勉強もこいつの教え方が良かったのかここ何日か教わっていたら思い出してきた。 というわけでここで渚が引いても俺にはなんの問題もない。



「私も頑張ってみる」

「ん?」

「皆本君最初会った時言ってたもん、落ち込む時もあればその分良いことも待ってるって。 皆本君は頑張ったからそうなったんだよね? ちゃんと実践出来る人なんだよね、なんか…… か、かっこいい」



お、これは釣れたパターンだわ。 こいつが何を頑張るかは知らんが。



「それと勉強ちょっと教えただけなのに結構わかってるのも凄い!」

「それは最初がどれだけ酷かったかって言われてるみたいだな」

「そ、そんなことないよ、地頭がいいんだなって思ったの」

「ありがとな、まぁそろそろ渚にこうして勉強付き合わせるのも悪いと思ってたしさ」



渚は急に寂しそうな顔になった。



「今日の皆本君意地悪」

「いやだってさ」

「私皆本君と友達だけどクラスの中だと堂々と話し難いし……」



渚は地味だけど友達がいないというわけではないが、男子と話しているところはあんまり見たことないな。 まぁそういうのは居るっちゃ居る。



誰でも翼みたいにそんな垣根なんて関係なく話せる奴ばっかではないが……



「普通に話し掛けて来てもいいぞ?」

「平野さん怖いし」

「派手だけどあいつはそんなことないって」

「仲良いよね皆本君と平野さんって」



おお、渚が翼に嫉妬している。



その時図書室の扉が開いてスッキリした顔の祐希が戻ってきた。



「ふうーッ」

「長かったな」

「だってさー、男子トイレ言ったら煙見えたから誰かタバコ吸っててよぉ。 おっかねぇから職員用のトイレに行ってきた」



ああ、そういや辰也達も昔タバコ吸ってるとこ見つかって停学処分くらってたな。



「ん? もう帰るのか渚?」

「うん、また明日ね皆本君、斎藤君」



そそくさと渚は帰って行った。



「どした祐希?」

「やっぱ渚ちゃんって可愛いなって」

「なら告ってみたら?」

「告ってOKされたとしても玉砕したとしても今の関係を壊したくないんだ」

「お前…… そんなこと言うキャラだったっけ?」

「新太だけには言われたくねぇ……」



まぁ手当たり次第に告りまくれば意外と上手く行くもんだ、節操なしと思われるかもしれないけど本気で誰かと付き合いたいならしなきゃ損だし案外それで可愛い彼女が出来たりする。 気持ちは後からついてくればいいだけだしな。



つーか待てよ? モテまくっても結局二股、三股になったら前と同じだよな。 もし恨まれたりして背中を気にしながら生活なんて前よりもキツい、別にそんなにモテなくても何人かと付き合ったり別れたりを定期的に行うのが理想じゃないのか??



…… いやいやいや! 俺は何をしようとしてる? 何もゴールが見えない、仮にモテた先に何がある?? 



そうだ、本庄愛菜!! 高校時代の俺にはあいつがゴールだ、やはりあいつと付き合えれば何か変われる気がする、なんかそんな気がする。



思い立ったが吉日…… やるか今すぐ!



「悪い祐希、俺も用事思い出した」

「はあ? あ、おい!」



そうと決まれば走っていた、どこだ本庄!? と。 だがすぐ上履きがあるかないか見た方がいいと気付いた、もう帰っているかもしれないから。



急いで昇降口に向かうとそこには帰ろうとしている奴らの中に渚と…… 居た! ちょうどよく本庄が!!



「皆本君? まだ何か」

「本庄ッ!!」



渚よりも本庄の前に俺は立った。



「何? それより誰??」



そうだった、1年の時はこいつとは別クラスだった。 まぁそんなことはどうでもいい。



「突然悪いな、1年の皆本新太だ」

「その皆本君が私に何か用?」

「ああ…… 凄く大事な用だ」



結構大きな声で本庄を引き留めたので周りにいる奴らも少し俺達に注目する。



「お前が好きだ本庄、付き合ってくれ!」

「ごめん無理、私はあんたのこと好きじゃない」



まるで昔の高校時代と同じような断り方で言った瞬間にそっこーで振られていた。







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