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渚が帰った後、俺は時間差で筋トレしてたら器具が壊れて怪我をしたと苦しい嘘を親に言って病院に駆け込んだ。
刺されたのは太ももだったけど見た目に反して傷は大したことなくて杖もいらないとのことだった。
渚のやつわかってて刺したのか? 出来るだけ殺したくないと言ってたし殺す気もないと言われたけど親に言ったら殺す、警察に行っても殺すとかわけわかんない奴だ。
次の日学校に行くか迷ったが行ってしまった、愛菜のこともあったから。 あいつになんて説明しようかと登校中祐希の「歩き方おかしくね?」とかどうでもいい話を聞き流しながら学校へ行くと愛菜は来てないみたいだった。
どうやら今日は欠席らしい。
「あ、皆本君おはよう」
「おはよう渚」
昨日とは打って変わってただの渚。 けれど俺からしたら見方が180度変わった。
「脚大丈夫?」
「お陰様でな、そっちも頭大丈夫か?」
「うん」
皮肉を込めて言ったが渚はスルー。
休み時間になると渚からお呼ばれして廊下に出た。
「今度はなんだよ?」
「物騒なことじゃないから身構えなくていいよ?」
まぁ学校でみんながいる中じゃ流石に無理か。
「昨日はね、ついカッとなっちゃってごめんね? 痛め付けるのも本意じゃないんだ、ただ精神的に痛め付けたいだけで」
「よっぽどタチ悪いわお前、昨日は肉体的にも精神的にもきたしな」
「そっかぁ、ならよかった」
笑顔になるタイミングがおかしい。
「傷もあんまり深くないみたいだし安心したよー」
「人の太ももにナイフぶっ刺した奴の台詞とは思えないな」
「だから言ったでしょ、言葉には気を付けてね」
そして平和? に学校が終わり俺は愛菜が気になったので愛菜の家に行くことにした。
昨日愛菜にメールしても一切返ってこない、LINEなら既読が付いてわかるんだけど不便だな。
渚はちょっかい出してこなかったので助かった。 愛菜の家に着いたのでインターホンを鳴らすと愛菜のお母さんが出て来て明るく迎え入れてくれた。
「愛菜ぁー、新太君が来てくれたわよ」
「えッ!?」
階段の下から愛菜のお母さんがそう言うとそこからでも聴こえるくらい愛菜の驚く声が聴こえた。
そういえば家に向かうってメールするの忘れてた。
ドタバタと部屋から聴こえる、愛菜でも慌てる時ってあるんだなと思っていると「行ってあげて」と愛菜のお母さんから言われたのでドアの前まで来てノックをしてみる。
「愛菜、入っていいか?」
「いいよ」
部屋に入ると若干髪がボサボサ気味なパジャマ姿の愛菜がそこに居た。
「いきなり過ぎ恥ずかしい」
「ごめんな、けどまぁレアな愛菜が見れた」
「うっさい、入れば?」
溜め息を吐いた愛菜はベッドに座ったので俺はテーブルの前に座った。
「昨日のことだけど……」
愛菜が口を開いた、正直ダンマリされるかと思ったけど。
「なんかいきなり逃げてごめん」
「謝るようなことじゃないだろ? というか謝るのは俺の方だし」
「凪野さんでしょ?」
「え?」
「迫ってキスしたのは」
「あ、ああ」
「私前から思ってたんだけど凪野さんに新太は弱みでも握られてて脅されてるんじゃないかって」
すげぇな愛菜、大当たりだよそれ。
「だからあれは新太の本意じゃなくて半ば無理矢理か不意をついてしたとこに私は見ちゃったってことだよね?」
「うん、それであってる」
愛菜は「やっぱりそっか」と言ってベッドに寝転がり背中を向けた、その状態で5分、10分と微動だにしない。
「愛菜寝たのか?」
俺が話し掛けると肩が少し動いたので寝てはいないみたいなので俺は愛菜のベッドに上がって確認しようとすると顔をベッドに埋めた。
「お前…… 泣いてんのか?」
「うるさいバカ! あんなの見たら泣くでしょ普通」
言うほど泣くか? とも思うがそれは愛菜の中で俺が好きに変わってきたからということで当事者で俺はされてしまった、愛菜に悪いという罪悪感があるけど愛菜の立場からしてみたら俺よりも断然ショックだ。
愛菜の肩を掴んで正面を向かせると愛菜はやっぱり愛菜は泣いていた。
そんな愛菜を見ていてそう思うのは本当に悪いとは思ったけど涙をポロポロと流している愛菜はとても美しくて愛おしくて俺はそのままキスをしていた。
愛菜はビックリしたのか脚をジタバタとさせて手は俺の肩を掴んで引き離そうと少しもがいていたが次第に大人しくなった。 そしてしばらくして口を離すと……
「何してんのよ?」
「こんな時に言うことじゃないけど凄く綺麗だよ愛菜」
「…… バカじゃないの」
枕を顔の上に乗せて愛菜はもう片方の手で俺の手を握った。




