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「あ、本庄さん」
「何?」
愛菜と廊下で話をしていると渚が俺と愛菜を見て少し戸惑い気味に話し掛けてきた。
「だから何? 私に何か?」
そんな渚に愛菜は容赦なく鬱憤でも晴らすかのように詰め寄る。
大丈夫かこれ? 渚は心の中でどんな風に思ってんだろう??
「う、ううん! 本庄さん最近皆本君と話さないからどうしたのかなって思って」
「そんな時にこれ見よがしに凪野さんは新太と仲良くしてたっけ」
「ええと、そんなことはないと思うけど」
「そんなことはなくてもあってもだから何? 私に文句?」
「いやいや愛菜、どんだけ脅すんだよ?」
「脅してない。 言うことあるなら言えばいいじゃんって伝えてんのに」
お前が言うと脅してるようにしか見えないんだよ。 というか愛菜が喧嘩腰に話しているから周りからなんだなんだと集まってきたので俺は愛菜と渚を連れてそこから脱出する。
「なんだよ取り合いかー?」とか茶化すような声が聴こえてきたけど気にしない。
「はぁー」
「なんで校舎裏に来たわけ? ものの一分で授業なんだけど」
「あッ、本当だ」
「やべ、つい…… まぁ授業なんて受けなくても愛菜は余裕だろ」
「そういう問題でもないでしょ、まぁいいけど凪野さんまでなんで?」
「それもついその場に居たから連れてきたって感じでな」
2人で渚を見つめてどうしたもんかと考えていると。
「どうせサボるならどこか行きたいな」
「「え?」」
いきなり渚から予想外の提案。
まさかこのまま人気のない場所で俺らを始末する…… なんてことないよな。
「ひゃッ!」
「ちょ、ちょっと新太!?」
「ああ、ごめん」
悪いとは思ったが渚が何か隠してないから思いだ当たる場所を手で確認した。
「あ、あんた変態だったの!? いきなり堂々と胸とかお尻とか……」
「い、いや……」
「ふざけんじゃないわよッ! なんで私まで触ろうとしてんのよ!?」
「触って欲しいのかと」
「ドン引きしてんのよッ!!」
まぁわかってるけど。 さて茶番はこれくらいにしておいて渚を全体的に触ってみて何も怪しい物は持ってない、隠せるとしたらアソコしかないわけだけど流石にそんなとこには隠してないだろうし。
…… いや、現地調達か?! どっかで買ってしまえばいいもんな、ううむ。
「み、皆本君??」
「あー、悪い。 ちょうど触り心地良さそうだなと思って、いてッ!」
「言ってることがキモい!! なんのつもりなの新太?!」
「わ、私気にしてないから大丈夫だよ!」
「…… いやそれもどうかと思うけど。 それより学校サボってどこ行く気よ?」
とりあえず電車に乗ってどこかに行こうということになった、この辺なんて大体知ってる場所だから電車でどこ行こうと同じことだ。
それよりも愛菜と渚と俺ってなんか気不味いな、前までこんなだっけ? と思うくらい空気があまり良くない。
渚の心の内はよくわからんが愛菜は完全に渚のことを良く思っていない。 というかなんでここに渚が居るんだ? みたいな顔をしているし。
「なあ、どこまで乗るんだ? そろそろ終わりじゃん」
「そうだね、じゃあここらで降りよっか」
あ! ここってちょっと歩けば海あるんだわ。 そっか、海でも見たかったのか。
あまりここでは降りたことはないが相変わらず田舎っぽい駅だなと思った。 そしてやっぱり海の方へ向かっていて歩道を3人で歩く。
隣は車が普通に通ってる、不意に押して交通事故狙いか?
俺は車側をいつ押されてもいいように身構えながら歩く。
すげぇ神経使うわ、もう海とかどうでもいいし。
「確かこの先海だったわよね?」
「そうだな」
「いいじゃない、全然海なんて最近行ってなかったし」
そんなんがいいんだ? と思ったが俺も海は久しく行ってない。
…… ちょっと待てよ、海なんてこんな平日の日は人気がなさそうだし何かを始末するのにうってつけなのでは? 溺死狙いか? でも正面きって俺が居るのにそんなの出来るはずない。
愛菜だって渚とタイマン張ったとしても…… 渚はあれはあれで鍛えてるし腕力とか体力も普通の女子よりあったりして。 愛菜も運動神経は良いけど。
「さっきから難しい顔してどうしたのよ?」
「そんな顔してた?」
「あーはいはい、言えないのね私には」
海に行くからと機嫌が少し良さそうだった愛菜の機嫌が悪くなった気がするがどうしようもないな渚が居たんじゃ。
しばらく歩いているうちに海に着いた。
車が横切る度に気を張っていた俺はどっと疲れてしまった。




