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「でさぁ〜、そうそう」

「ああ、いいんじゃない?」



翼とアドレス交換した日、渚と勉強を終え欠伸をしていた祐希と一緒に校舎から出ようとしていると翼ともうひとり友達らしき女子とバッタリ会った。



「皆モンじゃん! ちょうど良かったし。 今皆モンにメールして誘ってみようかなって思ってたんだ」

「誘う? 何を?」

「カラオケ行こう、カラオケ!」

「皆モンの友達のユッキーも一緒にさ」

「お、俺も?!」



不意に誘われた祐希がかなり嬉しそうだ。



「ちーッス、あたし萌。 翼とは隣のクラスだけどね。 皆モンかぁ、確かに翼が言う通りイケメン君だわ」

「でしょー? 高校デビューらしからぬ態度も気に入った!」



俺からしてみればまだ大人とも子供とも言えない年頃の奴ら相手してるにすぎないからな、年上の余裕だそれは。



「別にいいけど。 祐希は?」

「勿論行くッ!!」



訊くまでもなかったな、鼻息荒くしてら。



そうしてカラオケに行くとテンション高めな翼と萌だから盛り上がった。



「次はユッキーねぇ」

「ま、任せろ!」



だが祐希はアニソン…… でも2人は別にそんなんでも気にしてないみたいでノリノリだ。 



「ねえ皆モン、これが中学の時の私と萌でさー……」



別に見たいとも言ってないのに中学の頃の翼を見せられる。 髪の色は今の方が明るいが派手なのは相変わらず。



「へぇ、2人とも可愛いじゃん」

「うちら可愛いって萌」

「あははッ、可愛い頂きましたぁーッ!」

「え?! 何々? 俺も見たい!」



歌っていた途中でマイクから大声で言う祐希……



聴こえてたのかよ。



「じゃあねぇー! また一緒に遊ぼー!」

「またなー」



カラオケが終わり祐希と一緒に帰っているとしばらくして祐希が震え出す。



「え? まさかウンコ?」

「違うっての! めっちゃ良くなかったか??」



そんな祐希の言葉に俺は怪訝な顔をしていると祐希は更に続ける。



「あの2人だよッ!! パッと見派手だからすげぇ絡み辛いかと思ったんだけど見た目も中身も良いなんて神かよ!」

「お前のオタク全開な選曲にも文句言わないで楽しんでたからな」

「だろ?! つーかお前もオタクだろ! もしかして隠してんのか?」

「そうゆうのはもう卒業したんだよ」

「お前カッコつけ過ぎだろ…… んん? 新太あの2人のどっちかを狙ってるのか?!」



なんだこいつグイグイ来るな。



「だとしたらなんだってんだ?」

「あのなぁ新太…… どっちかが俺のこと好きなのかもしれない」



は? え?? 人に言えた義理ではないが何故にそうも自分に都合がいい解釈をしてしまうんだ?



「凄いなお前。 そうかもしれないな」

「新太もそう思うか! やっべぇ、明日からどう顔合わせりゃいいんだ?」

「ったく…… そんなわけないだろ? ああいうのは大体誰にでも気兼ねなく接するんだっての、脈なしだ脈なし」

「上げておいて下げるなよッ!!」



にしても…… 大人になればもっと派手な遊びが出来てカラオケなんて、とちょっと前まではバカにしてたけど意外と楽しかったな。 俺の精神年齢がガキに戻ってんのかな?



それから2、3日経ち翼は俺によく話しかけるようになっていた。 



「ウケるんだけど。 なんであんたのこと好きなのよって」

「マジかよ、萌ちゃんも俺に気がないなんて」



少し親しげに女子に絡まれて祐希は思い切ってどっちかが自分を好きなんじゃないかと翼に訊いていた。 つーかこのタイミングでそれって脈ありでも断られそうな雰囲気の時に何故……



「はい、注目〜ッ!」



そんな時辰也らが何かを持ってきてみんなの前でそれをバンバンと手で叩いた。



俺もふと見てみるとそれには見覚えがあった。 なんせ中学の時の卒アルだから。



そろそろ来るかと思ったが案の定やることがガキ臭い奴らだ。



「俺らの中学の頃の卒アル見たくね!?」

「あ〜ッ! それはちょっと見たいかも」



翼は辰也達のところへ向かって行った。 他にも卒アルと聞くと見たい奴らが何人か集まった。



「お、おい新太、お前の黒歴史見られちまうじゃないの?」

「別に見たきゃ見ればいい」

「なんでそんな平気そうなんだ? 今のお前見ると俺からしても残念なお前が写ってるのに」



別にそんなんで見限る連中なんてその程度だ、いやでも自分からネタにして行くってもありだな。 所詮昔は昔だし。



チラリと渚の方を見ると見に行こうとはしないが辰也達の人だかりに興味を示していた。



別にそんな気になるなら見に行けばいいじゃねぇか。



「おっと〜。 そこで調子こいた奴もここに載ってたなぁ」

「もったいぶんな!」



翼がそう言うとこちらに悪意満点な顔をした辰也がニヤリと笑って写真を指差した。



「なんとこいつ!」

「うっそ!! これ皆モン?!」



写真を見た奴が俺と写真を交互に見定めている。 それはもうご想像通りな感じに。



「うわッ、マジで?」

「めっちゃ変わった」

「つーかマジもんの高校デビューじゃん」



などと言う声がチラホラ。



「おーい、お前のこれ! バレちまったなぁ、お前を見せるつもりなかったのに悪い悪い」



こっちに向かって手をパンと合わせて白状に謝る。 



いや絶対見せるために持って来たのにしょっぱい演技だなぁ。



「あちゃー、ピンチじゃん新太」



心配そうに俺を覗き込むが俺からしてみれば全然だった。 なんせ俺と付き合ったことがある女は大体俺の昔の写真とか見たがって見せてやったから。



最初はちょっと変わり様に驚きはしたもののそれだけで今の俺を見てくれたしな。 だから精神的ダメージはあまりない。



「すげぇだろ俺の変身」

「は?」



だから逆にそれで攻める。 俺が小バカにしたように辰也達を見ると案の定俺を貶し始めた。



「ヤベェよなあいつ。 あの陰毛ヘアーでオタク野郎が何を思ったか知らねぇけど高校デビューとかって」

「俺らに散々パシられてたんだぜ」



頭に血が昇ってるからか俺をいじめてたとかパシッてたとか余計なことを誇らしげに言うもんだから周りの連中は逆に辰也達を見て引き始めた。



「おい、てめぇ何ニヤついてんだよ!」

「いや〜、俺くらいになるとそんなん朝飯前なんだわ。 逆にお前らってそのしょうもない陰湿で周りがつるんでないと何も出来ない幼稚な性格何も変わってないのな、その卒アルで俺を公開処刑でもしたつもりになってんのもそうだしな。 変わった俺見て嫉妬してんのか? こっちが見てて痛いわ〜」

「はあ?! てめぇ本当にムカつくな、おい皆、今からこいつのこと…… ってあれ?」



再度周りの連中を使って俺を一斉に叩こうとしたがもう遅い。



「皆モンが言った通りあんたらに引くわ、マジでドン引き」

「最低じゃんこいつら」

「そういうのは中学までにしとけよ」

「大体タイマンじゃ今の皆本の方が強そうじゃん、ちっさッ!」

「あんた達が皆モン高校デビューって言ってるから別にそんなん大体わかってたしね、ただ単に見たかっただけだし」



多分俺の昔の写真を見たことで多少は俺も株を落としたかもしれないが辰也達のが落ち具合は半端ない。



「あ…… えっと」



ついに皆の白い視線に耐えかねたのか辰也は言葉を噤んで今のことをなかったかのように振る舞うと呆れた周りの連中は辰也から離れて行った。



ざまぁ!! やったぜクソ野郎!! 当時はもうどうでもいいやと思っていたがまたその当事者となると昔のあいつらへの憎しみを思い出してきたとこだったからスッキリしたわ、いやー、愉快爽快。



「どっこいしょーッ」



そう思っていると翼は俺の隣に戻ってきた。



「皆モンマジウケたしッ、え?! あれ皆モン??」

「だろ、ウケるくらい変わったろ?」

「ああー、写メってくれば良かったかなぁ?」

「そんなん撮ってどうすんだよ?」

「あはッ、見比べてみたり〜」



と思ったらパシャッと翼に写メを撮られていた。



「まぁ今の皆モンでもいっか、そのうち皆モンから卒アル見せてもらえればいいだけだし」

「見たきゃ好きなだけ見せてやるよ。 それとさ、さっきのことサンキュー」

「ッ…… あ、ああ、うん。 そりゃ皆モンのことだしうちら友達だし」



どうやらこの反応は俺の昔の写真を見たくらいじゃこいつの中での俺は揺るがないみたいだな。








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