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「ちょ、ちょっと待てって!」

「お前散々待たされたのにまだ待って欲しいの?」

「そうじゃないけど…… 恥ずいんだって!」




と、ウブなこいつはそんな反応になるのはわかってたけど揶揄い半分で西条にボディタッチする。



触らせてくれるってことは大体OKってことだからこのまま最後までいっちゃおうか? でもその日だけの適度な関係なんてこいつには無理そうだしなぁ。



「シャワー!」

「え?」

「ちょっと汗かいちまったからシャワー浴びたい!」



そう言ってドタバタと西条は風呂場へ行ってしまった。



はいはい、恥ずかしさに負けたのとムダ毛の処理を今からするんだろ? わかってますって。



西条が風呂場に行ったので部屋には俺ひとり。



それにしてもあいつ不用心だなぁ、自分の家にあげて尚且つ俺ひとりにさせるとは何でも物色し放題だぞ。 おッ、早速あんなところに卒業アルバム発見。



台座の上にファッション誌と無造作に置かれていたアルバムを手に取るとパラパラと捲る。



西条はと…… え!? 黒髪だし。



名前で西条だとわかった。 黒髪で化粧もしてない、けどすっぴんでも充分美人だ。 愛菜と同じように性格キツそうな顔立ちは今と変わらないけど。



今みたいに派手ではないけどドカッと机に足を乗せて怠そうに睨み効かせてる写真まで載っていた。



こいつまんまヤンキーじゃん…… はぁー、こんなJKのガキに迫るって俺も大人気ないな。 いや、今や俺もガキだけど。



チラつくのは愛菜の姿…… 目を閉じるとボンヤリとまだ浮かんでくる。 



シャットアウトしたんだろ俺。 愛菜は一度喧嘩してしまったらあいつの性格上元に戻るのはかなり難しそうだし。



でも愛菜も俺を好きになりかけてたじゃないか、もうちょっとで落とせると思った途端に……



もしとかでもとか考えていると俺の携帯にメールが届いたみたいだ。



「渚か……」



そういえばあいつ今頃何してるんだろうな? もしかしてここら辺まで俺をストーキングしてるんじゃないかと思って外を見渡す。



うん、流石にここまでは来ないよな。 あいつ俺のことどんだけ好きなんだよ? と最近思う。



愛菜と渚のことを考えていたら俺も少しその気になってきた気分も収まっていった。 



あー、この流れで断るとか据え膳食わぬはじゃねぇか。 でも気分じゃなくなったし本当に家に帰って今週はもう学校もサボって引きこもりたいんだ。



そうしていると風呂場のドアが開いて家着に着替えた西条が頭にタオルを巻いて出て来た。 



「な、なんかその…… 心の準備とかまだで」

「いや、そんなことしねぇし」

「…… はあああッ!? 思わせぶりなことしといてそんなのありかよ!」

「急に風呂入ってくるなんて言うから何かと思ったぞ、それにこっちのお前もなかなか可愛かったよ」



後ろに置いてたアルバムを取り出して西条に見せると焦った顔になる。



「そ、それはッ!! アタシの!」

「あるの忘れてたか? でもいきがってるのは今と同じだな」

「てめぇ!!」



西条が伸ばした手にアルバムを持たせると俺は帰り支度を始めた。



「へ? 帰るのか?!」

「ああ」

「なんで急に…… アタシと居てもつまんなかむたか?」



珍しく西条が潮らしくなった。



「いいや、かなり楽しかったよ」

「じゃあなんでだよ……」

「んー……」



帰って寝たいからなんて言ったらうるさそうだし。



「変な勢いでそういうことしたくないからさ」

「変な勢いってお前が変なことするからだろ!」

「あはは、そうだったな。 ごめん」



西条の頬に手を当てると西条は手に顔を押し付ける。



「こんなに好きって言ってんのに……」

「俺は諦めた方がいいぞ、ろくな男じゃないし」

「なんッか諦めさせたくて言ってるようで腹立つ!! じゃあとっとと帰れよッ!」



西条の家から出て夜道を歩いていたら結局何も食べてないことを思い出した。



あ、渚からのメールも返してないや、つーか読んでもなかったし。



携帯を開くと渚から『会いたいな、公園で待ってる』と。



公園とは渚と一緒に走ってた時にたまたま見つけたんだ、ここからだと1時間ちょい掛かる。 車あればすぐ着くんだけどな。



無理だと思ったから渚に『時間掛かるから帰れ』とメールを返したが『大丈夫』とソッコーで返事をされた。



家に早く帰りたいのにマジかよと思ったし付き合ってられるかと俺は渚の方ではなく自分の家に向かった。



それから渚のことは頭の片隅にあったが家に着いてカップラーメンを食べて風呂に入って渚から返事を貰ったから2時間以上が経った時俺はベッドから起き上がった。



俺もあれから返事は返してないが渚のことだからもしかして待ってたりして? でも知るかよ、あいつの呼び出しになんで俺が付き合わなきゃなんないんだ!



だが足は家を出て渚の待つ公園へと向かっていた。



くそ! 本当に面倒だ、こっちは風呂まで入って寝るだけなのに。



さっきから渚にメールを送るが返ってこない、てことは帰ったか? いやいや、秒で返すような奴だし携帯は絶対握りしめてる。 だとすれば充電切れか? ならありえる、家に帰らないで朝から充電してないで携帯弄ってれば。



イライラしながらも公園に向かうと人影はない、ように見えたが俺が公園に入ると子供用の滑り台のハリボテの中から渚が顔を出した。



「待ってた」

「今までずっと?」

「うん」

「メールしたんだけど?」

「充電切れちゃった」



制服を着たままの渚はそんなに待たされたというのに俺のところへ笑顔で駆け寄ってきた。



「お前って絶対バカだろ」

「えへへ、ごめん」




そう、こいつはバカなことをした。 いいや、俺もバカだったけどこいつがあそこまでするなんて思わなかったから。



だって俺を刺し殺したのが渚だったから。





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