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「ジャンッ!!」

「へぇ〜……」



西条の家に来ていた。



まぁ予想は出来たけどバンドやこいつの好きなアヴリルのポスターやらギターやら派手な服やなんやら…… 西条と同じで主張が激しい部屋だな。



「凄いだろー?」

「凄いけどお前って一人暮らしだったんだな」

「そう。 アタシの両親の都合でさ、アタシはこっちのアパートに住まわせてもらってんだ。 気楽で良いけどよ、別に不仲とかじゃねぇし変な気遣い無用だからな!」

「ふーん…… ん? ああ、これ懐かしいな。 つーかお前こういうのも聴いてるんだ?」

「は? 懐かしいってそれつい先週リリースされたばっかなんだけど?」



洋楽とかジャケ買いしてた頃あったなぁ、この頃は前と違って聴いてから買うとかパソコンでもなきゃ出来なかったしな。 パソコンうちにないし。



「てか皆本も聴くのかそれ? アタシ結構洋楽には詳しいぜ」



ドヤ顔でほざいているが俺が当時何枚CD買ってたと思ってんだ? 



「まぁお前が聴くのなんてガキ御用達のもんだろ? これだってそうだし」

「てめぇ…… つーか皆本ってちょくちょくオヤジっぽいこと言うのな、まぁいいけど」



それから西条と部屋で話していると結構盛り上がってしまっていた。



「俺のオススメはこれとこれでさ……」

「へぇ、今度探してみるかぁ」



俺の言うことに耳を傾けて携帯で検索している西条を見てふと冷静になった。



あ、俺なにこいつに自分の知識ひけらかしてんだか。 



「なぁ、これ近所のショップで見かけたことあったような気がするから一緒に買いに行かないか?」

「いや、いいよ。 もう遅いし」

「急に真面目か!? 夜通し飲み会してた奴が! アタシにも付き合え〜ッ!!」

「うるせぇな、ここ隣も住んでんだろ? 近所迷惑だっつの! わかったわかった」

「やりぃ〜ッ! さすがアタシの男!」

「誰がお前のだよ」



すると西条が俺の腰に腕を回してくっつかれた。



「アタシずっとお前に告白してフラれ続けてんだぞ? ちょっとは慰めろよ」

「悪かったな」



こいつの気持ちはよくわかるつもりだ、俺も愛菜に告白しまくってた時もしかしていくらやってもダメなパターンでは? と思わなかったことはないと言えば嘘になるし。



西条の頭を撫でると意外だったのか俺の顔を見上げた。



「なんだ?」

「あ、いや。 なんか今日は優しんだなって思って…… べ、別にお前が優しいのはわかってたけどな!」

「その照れ隠しウケるな」

「ウケるなッ!!」




まぁ俺も思うところあってだったんだが。 俺は愛菜と付き合えれば何か変わるとかここに戻った目的みたいな風に解釈してたけどわからなくなった。



それもこれもあの時、体調を崩してしまった時に見たあの光景のせいだ。 



俺は俺を刺した奴はその時見えなかった、振り向いても俺は倒れてたし人だかりのせいで。 けどこの時代に戻って来て目を瞑ったその先で見たのはあいつだった。



だからそのせいで俺は愛菜から距離を取るようになってしまった、でも愛菜を好きになってしまった俺はそれも徹しきれなくて。







◇◇◇







「私…… 寂しいんだよ? あんたにそういう風にされて。 わかってるの?」

「だよな、ごめんな」

「私が寂しいってわかってて避けてたの? なんで??」

「…… わかんねぇ」

「は? わかんないって言ったの? 一方的に告白しておいてそれでも仲良くなって友達になってその挙句に避けるってなんの冗談よ?」

「それは…… 俺どうかしてたかも」



その時右頬に強烈な痛みが走った、愛菜にぶたれたから。



「最低ッ! あんたは他のクズ男と違うと思ったのに!! 一時の迷いか何か知らないけどあんなに執拗に私に迫っておいてどうかしてたで済ます気?!」

「だから悪かったって」



愛菜に頭を下げた。



「なんの騒ぎ〜? こっちまで聴こえるんだけど…… え?」




コンテナのドアから顔を出した翼が俺と愛菜を見てキョトンとする。



「ありゃ? ひょっとして修羅場??」

「…… もういい、私帰るわ」

「へ? 愛菜たん?! おーい!」



愛菜はそのままコンテナに鞄を置いたまま帰って行ってしまった、後で桐山があいつの家に行って届けたみたいだけどあれから愛菜と俺はまったく喋ってない。






◇◇◇







「お! あったあった、これっぽいなぁと思ったらやっぱこれだ!」

「へぇー、よくあったな」

「だろ、アタシここらの棚結構見てたから覚えてんだ」



西条と古本屋でCDを買って西条の家に戻るともう真っ暗だった。



「あ、親にメールしとくの忘れてた」

「はははッ、じゃあついでにアタシの家で飯食ってけよ」

「お前料理とか出来んの?」

「アタシを見掛けで判断しやがったな? まぁ料理なんてお湯を注げば大体出来んだろーが」

「カップ麺かよ、料理じゃねぇし見掛け通りじゃねぇか」



あー、ここ最近精神的に疲弊してたせいかこいつのバカっぽさに癒されるわ。



人間の気持ちとは結構いい加減なもので(俺だけかもしれないが)半ば使命感的に愛菜を俺のゴールだと決め込んでそんなあいつに俺も惹かれていったけど、どこかで歯車が狂って気持ちをシャットアウトしてしまえばなんというか冷めたわけではないけどなんとでもなるもんだ。



愛菜は確かに美人だけど世の中に美人なんて探せば居るし隣に居る西条だってその部類に入る。



あー、マジで何しに俺ここに戻ったんだろうな? このままあいつを適当にあしらって高校卒業したらどこか遠くに行って平穏な毎日を送るか? それもいいけど俺がここで歳を重ねて35歳になったら死ぬのかな?? 



戻って来たって娯楽は前よりも少ないし漫画もテレビも音楽も大体知ってることだらけでなんの面白みもない、モテるようになった今ではバラ色の学校生活なんてもう飽きたし。



いっそ隣に居る西条と付き合ってみよっかなぁ? なんかどうでもよくなってくる。



「それでさ、きゃッ!」



俺は西条の肩を掴んでこっちに引き寄せると普段の男っぽい口調の西条が女っぽくなった。



「なッ…… み、皆本?」

「慰めて欲しいんだろ?」

「あ、う、うん。 どうしたんだ急に?」

「なんかお前が可愛く見えてきた」

「やッ…… 恥ずいしいきなり。 でもそれって本当?」

「ああ」




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