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「もうホームルーム通り越して授業始まると思うんだけど」

「いいのよそんなの」



一時限目から体育がある学年なんてないので体育館の倉庫に桐山を連れて来た。



それに授業始まっても私と桐山が居ないならさっき新太が言ってたことが本心だとしてこいつが私にちょっかい出してるの見てるんだから何かしら思う所はあるはず。



これは新太の心情を探るのと桐山の話を聞けてまさに一石二鳥、まぁ桐山の話なんてついで程度だけどね。



「で、新太が凪野さんに弱みを握られていることへの具体的な答えは?」

「ああ…… えっと、それに対しての本庄の見解は?」



質問を質問で返す…… いよいよ桐山はやっぱりアテにならなそう。



「桐山、あんた凪野さんと新太ってよく見てた?」

「まぁ皆本は目立つ奴だし凪野はたまに皆本に話し掛けてたけど態度は普通っていうか本庄に対するそれとは違うかなって印象だけど」

「そう、なのに新太はこの前具合悪くなって休んだ時から急に私と凪野さんに対して逆転したような態度になった。 それに私を見る目がなんだか変わった気がする…… これはもう凪野さんが新太にあることないこと言ったか具合悪くなったのがそもそも凪野さんが原因でそれは体調的なことじゃなくて芸能人とか不祥事起こした時に病気じゃないのに体調不良とか言い訳するあれと同じよ、だったらそれにつけ込んで新太をいいようにしてる凪野さんも許せないし尻尾振ってる新太も許せないッ!!」

「………」



それを聞くと桐山は黙ってしまった。



「何か文句でも?」

「い、いや、本庄ってさ」



言いかけてまたもや黙る。



イライラするわねこういう男って!!



「言えないの? それとも何も考えてないの? 怒らないから言ってみなさいよ」

「わかったって、本庄ってテストとか常に一位だし頭良いってわかってたけどもうちょっと冷静な推理とかするのかと思ってて」



まるで私がバカと言われてるみたいでカチンと来てしまった。



「あんた…… 何を言うかと思えば喧嘩売ってんの?」

「お、怒らないって言ったろ!? 怒ってるだろ本庄!」

「そんな風に言われれば怒るわよ!」

「悪かった! 俺が言いたいのはそうじゃなくて! 本庄は頭良いから最もらしい分析して変な的外れ的な解答するんじゃなくて」

「私が的外れですって!?」

「お、落ち着け!!」



あ…… いけない、つい声を荒げてしまった。 こんなバカに取り乱してバカみたい、アテにしてないってのに。



「あのさ、凪野に弱みを握られて皆本が嫌々凪野と仲良くって言いたいんだろ?」

「そうよ」



わかってたくせに私を怒らせること言ったの? そしたらマジでムカつくわこいつ。



「はあー、そっか。 本庄ってそんなに…… あ、えっと俺がさ、凪野に弱みを握られてるんじゃないかって思ったのはさ」

「思ったのは?」

「惚れたら負け的な」

「は?」



そんなトンチの効いた答えなんて望んでないんですけど?



「あんた…… 人には散々屁理屈並べといて自分の方が斜め下の解答してんじゃないわよッ!」

「それでも存外斜め下ってわけじゃないって。 言ったろ? 男の気持ちは男の方がわかるって」



あんたに新太の何がわかるっていうのよ? 



「凪野ってよく見たら可愛いだろ?」

「知らないわよ」

「そりゃ本庄と比べたらあれだけど鉄壁の美人より落としやすそうな可愛い女の子の方が」

「そんなこと聞きたくないわ! 私は新太の友達なのよ?! それに新太は私への気持ちは変わってないって!」



壁際に逃げていく桐山を追い詰めた。 



「や、でもそれは建前かもしれないし俺のは男としての一意見だってことで」

「新太とあんたが同じだって言いたいの?」

「そりゃ皆本は俺とは全然違うと思うけど……」

「わかった、あんたは新太のことが嫌いで新太を私の目の前で貶めたいだけ。 ついでに私はあんたのことが嫌いだからやっぱりあんたのことに耳を貸すのはやめた!」

「…… そんなにムキになるくらい皆本のことが好きなんだ本庄」



は? はああああッ!!?



「あんた……」

「わかんないのか? だって本庄顔真っ赤」

「え?」



違ッ、これはこいつの言うことに顔真っ赤でキレてるだけ…… それもバカみたいだけど。 え?? 



「私は新太とは友達で居たいだけで別にそれ以上は求めてない」

「だったらなんで凪野と皆本に対してそこまで熱くなってるんだよ? なんか本庄らしくないっていうか、理性的じゃないっていうか…… さっきの本庄の言うことだって仮にそうだとしたら本庄が凪野に皆本を奪われるんだったらそういうことならまだ許せる的な願望みたいに聞こえて」



…… 私の願望? 



「そんなわけない、新太は私が唯一話せる存在で新太には悪いけど私は別にただそれだけで」

「それってもう皆本のこと好きになってるって。 それだけって言うのは本庄がそれを認めたくないだけって付け加えてるだけにしか聞こえないけど」



私は桐山の胸ぐらを掴んで腕をクロスさせて力一杯締め上げてた。



「ちょッ、苦しい!」

「好き…… って、じゃあどうしたらいいのよ!? あんた男なんでしょ? 仮に凪野さんと新太がそういう関係になってて私が新太に好きって伝えたらどうなるの?」

「そ、そりゃ皆本はどうかはわからないけど俺なら即OKで」

「あんたの答えは訊いてないッ!」

「いや、どっちだよ?! こっちは訊かれたから答えただけで」



本当アテにならないわねこいつは!



手を離して自分の気持ちを整理してみた。



私は新太が好き? 確かに私は新太とのことを想像した時には悪くないかもって思えた、だって新太だし。 けど今の新太は口ではああは言ってるけど今の新太は私に冷たく感じてずっと新太のことが頭から離れなくて…… これが好きってこと?



「試しに訊きたいんだけど皆本はやめて俺との進展は?」

「ありえない」

「即答かよ…… はぁ」



アテにはならないと思ったけど桐山には私の気持ちを気付かせてくれた。 なら……



「ごめんなさい桐山、あんたのこと散々に言ったりして。 それと手をあげたりもして」

「主に脚だけどな」

「うるさい。 でもありがとう、あんたに言うつもりなんてなかったのに私の気持ち言っちゃったようなもんだわ、新太以外の人に。 だからそういう意味でもごめんなさい」

「友達くらいにはなれるのかな?」

「…… うん、私で良いならね」

「まぁ一発逆転あるかもしれないし」



「それはない」と言って私は倉庫の扉を開けた。



そっか、私って桐山の言う通りだわ。 新太のことになると上手く考えが回らない、そんなに好きだったんだあいつのこと。



だったら理由がなんであっても凪野さんからもう一度、凪野さんが居ても私をスルー出来ないくらいに好きになってもらうしかない。


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