表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/64

3


「ええと…… この公式は確か」

「うんうん」

「俺レアカード結構持ってるんだぜ新太」



図書室で早速中学の頃からの勉強を渚から教えられていると向いに座っていた祐希は物凄くつまらなそうに呟いた。



「一体何歳なんだよお前は? いい歳こいた奴がカードゲームってヤバいぞ?」

「俺はまだ高校生だけど?!」

「ああ、うん。 それで? これで合ってるのか渚?」

「無視しやがって。 そうだ新太、俺も高校生になったことだし後で見せようかと思ったたんだけど」



祐希は何やらポケットから取り出した。



「見ろよ、俺も携帯デビューだぜ! J-phoneだぜ!」



自慢げに見せてきた携帯電話、しかもガラケー…… iPhoneじゃなくてJ-phoneかよ、どんだけ遅れてるんだこいつ? と思ったけど今はこれが新しいんだった。



「わッ、新しいのだ。 私のはドコモだけど」

「ちなみに新太は?」

「持ってない」



そうだ、スポーツ用品やら縮毛矯正代とか何やらで親からお金借りてやったから携帯なんて買えなかったんだよ。 



でもこれから誰かと連絡取る時には必要だよなぁ、2人とも持ってるみたいだし。 ダメ元で親に頼んでみるかなぁ。



「プッププッ、新太はまだ持ってないのかお子ちゃまだなぁ」

「うるさいな、携帯持ってるからなんだってんだよそんなガラケー」

「ガラケー? あーあ、お前ともこれあればメールとか出来るのになぁ」



前は高校入学の前に買ってもらったんだっけ。 やり取りするの新太と親くらいしかいなかったけど。



「あッ、それじゃあ私今日予定あるからこれくらいでいいかな?」

「おうサンキュー、また教えてくれ」



そしていそいそと渚は図書室から出て行った。



「あー、渚ちゃんって地味だけど顔は可愛いよな」

「お前のタイプなの?」

「ああ、可愛ければタイプだッ!!」



まぁ俺もそうだったな、そしてその頂きに居る本庄に告白してしまったんだ。



それから懐かしいなと思って祐希の持っていたカードやらを見せてもらった。 



本当に懐かしいな。 あッ! 高校時代に戻ってしまったら読んでた漫画とかいろいろ続きがずっと先になっちまうじゃないか。



くそー、この世代の携帯なんて持っててもスマホを知ってしまったら機能がなんもなくてつまらないしメールはLINEが出てからめんどいだけだし。



文句を言ってても仕方ないので帰って早速親に携帯欲しいと頼み込んだ。 



最近筋トレやらに精を出していた俺は支出もあったが親には頑張っているように見えたので特別に買ってもらえた。



「どうよ、俺も買ってもらったぜ」



パカッと携帯を開いて祐希に見せた。 なんかガラケー見てるとノスタルジックな気分になるな。



「ドコモかよ〜」

「いいだろ別に」

「じゃあ早速アドレス交換しようぜ」

「ああ」



これって地味に面倒だったな、赤外線とかも付いてないし。



「祐希、お前のアドレス長過ぎ」

「いやだって迷惑メールとか来るかもしんないだろ」

「変なサイトとか覗いてんのか?」

「ぐふふ、気になる?」

「いや別に」



とは言ってもパケホでもない携帯だしネットの通信量も半端ないからなこの時って。 電話とメールくらいしか使い道がない。



それならこの時代に来た俺の楽しみなんて変わったルックスを活かしてのハーレム無双くらいしかないんじゃないのか? でも別に変わったからといってハーレムになるほどモテるとは思ってないけど。 



それよりも4股してしくじった過去を忘れるな、刺される程に恨まれてたんだ。 刺された時は痛かったしあんなのはごめんだ、ここは付き合うなら謙虚にひとりと付き合おう。



学校に着いて席でなんとなく携帯を開いたり閉じたりして考え事をしていると……



「にひひッ」

「ん?」



隣の席から前のめりになってひとりの女子が俺を見ていた。 



誰だっけこいつ? 俺が好きそうなちょっと派手目なギャルっぽい子、名前は確か…… 平野 翼だったような。 



記憶を辿ってみる。 昔のこいつは俺がイジられてた時一緒になってイジってたっけ。 でもこいつのイジり方って別に意地悪とかじゃなくてただ単に好奇心というか陰毛ヘアーとか俺が言われてた時も笑って「指に絡まって面白ーい!」とか「ねえねえ、やっぱ皆モン(俺)も健全な男だしこのクラスの中に好きな子とか居るのー?」とか悪意があるような感じではなかったな。



要するに悪い奴じゃないし嫌な印象はないし容姿もいいしそんな感じだから結構モテてたな。



「気になってたんだけどさぁ〜」

「何が?」



平野は俺の頬にピトッと人差し指を当てて擦った。



「化粧してる。 なんで?!」

「ああ、なんとなく身嗜み的な感じでだよ」

「控えめなギャル男? それかもしかしてそっち系??」

「そんなんじゃなくてただの身嗜みって言ってるだろ?」



10年後くらいにはそんな化粧男子もチラホラ出て来てるし最先端を地で行くのだ俺は。 



「ウケる皆モンって。 ねえ、携帯ブラブラさせてんならアドレス交換しない?」

「皆モンって俺かよ?」



呼び方前と変わんないのな。 まぁ暇潰し程度にはいいか。



「そうだよ、私はなんて呼んでもらおうかなぁ」

「面倒くさいから翼でいいだろ? アドレス交換するんだろ」



そうして翼に携帯を渡しているとヒソヒソとそれでもって俺と翼に聴こえるように初日、高校デビューした俺に絡んだ辰也が取り巻きと俺の悪口を言っていた。



やってることが陰湿な女子みたいだな。



「うわ〜、あんな奴とアドレス交換しちまってるよ可哀想だなぁ」

「前のあいつ見たらソッコーで手のひら返すぜ」



だが聴こえてるはずの翼はガン無視だ。



「皆モンさ」

「ん?」

「あいつらと仲悪かった感じ? 見ればわかるけどさ、高校デビューなん??」

「まぁ言ってることに間違いはないな」



パチンと携帯を折り畳むと俺に返した。



「ふーん」



少しこいつの中で俺への印象が変わったかな? と思った。



「じゃあカッコ良くなってよかったじゃん、あっちの陰口言ってるのはないわぁ〜。 あはッ」

「だよな」



なんてことなかったらしい。 こいつは見た目は派手で不真面目っぽく見えるが性格は悪くないんだなと俺は思う。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ