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「新太」

「なんだ? 俺ちょっと部活で急いでて」

「あんた部活なんて行っても行かなくてもどうでもいいって言ってたでしょ? それより具合良くなったの?」



なかなか新太が捕まらない、何だか忙しそうにしている。 でも今までなら仮に忙しくても無理矢理でも時間を作って私にちょっかい出して来るのが新太だ、せっかく学校に来た日に限ってそんな態度だと今までの仕返しにこっちも新太の邪魔をしてみたくなる。



「ああ、前よりは良いよ」

「釈然としない答えね、それって良くなったって言ってるの?」



尚も廊下に出て移動しながら私は新太を追いかけながら話す。 こんな光景滅多になかったからか周りの目もひいているような気がするけど私には関係ない。



「ああ、じゃあ良くなったよ」

「じゃあって何? 訊かれたから答えたみたい」

「いや訊いただろ」



何これ? まるで私を邪険にするような態度。



「ねえ、どういうつもり?」



階段の踊り場に差し掛かったところで私は新太の肩を強引に掴んで壁に押し付けた。



「何すんだよ?」

「どういうつもりかって訊いてんの」



つい声を荒げてしまったけど誰も居ないからどうでもいい。 私が気になるのは新太の態度だけ。 すると……



「はあ…… ごめん愛菜。 ちょっと俺イライラしてた、けど愛菜に構ってもらったらなんか少し気が休まった」

「は?」



先程とは全然口調も雰囲気も変わった新太に違和感を覚えた、でもいつもの新太に戻ったみたいで私のさっきまでの新太の態度の不可解さも少し緩和した。



「多分愛菜とちょっとの期間会えなかったからかな」

「バカじゃないの? だったら私のお見舞い断らなきゃ良かったじゃん」


 

新太が学校休むなんて滅多になかったから私はお見舞い行こうか? とメールで新太に言ったら来なくていいと断られていた。



だから絶対に来てくれと言われるであろうと思っていた私は拍子抜けしてしまった。



「俺も後悔してる、愛菜に来てもらったらもっと早く元気になったかもって」

「ふん、友達の申し出を断るからよ。 もし次があったら行ってあげるかわからないんだからね」

「ははッ、そこまで怒ってるなんて思わなかった」



まぁいつもの新太…… 避けられていると思ったのは私の勘違いかな?



「あ、呼び止めて悪かったわね。 忙しいんなら行きなよ」



私は新太の肩から手を離すと離した手を新太に掴まれた。



「なあ愛菜、お前って……」

「うん?」



新太が真剣な顔付きになった、今まで見たことないような。 



「お前ってやっぱ美人だな」



は? そんな下らないこと?



「真面目な顔して何言うかと思ったら。 さっさと行けば?」

「ああ、じゃあな」



あっさり新太は行ってしまった。 



どうしたんだろう? いつもはしつこいのに。 私も部活があるからまぁいいけど。







◇◇◇







「本庄ちゃん、今日は珍しくシュート外しまくってるじゃん。 調子悪い?」

「いえ…… いやそうかもしれません」

「あははッ、たまにはそんな日もあるけどさ。 本庄ちゃんいつもクールな顔してこなすから今日はどうしたのかと思ってさ」



それは私もさっき似たようなこと新太にそう思ったことよ、いつもだったらこっちの都合もお構いなしに連れ回したりするくせに。



「もしかして男?」

「はあ?」

「うそうそッ! そんな怖い顔しないでよぉ」



無神経な先輩にイラつくけどそんなことで私がイラつくことがイラつく。



なんで私がそこまで新太のことでイラつかなきゃならないのよ? 



友達は友達。 新太は私の唯一本音で話せる相手だし大事には思ってるけど私の心を騒つかせるのは心地良くない、そう考えてバスケをしていたらまたもシュートを外した。



ああもう!



部活が終わって帰ろうとすると昇降口に新太の姿が見えた。 私は若干不機嫌だったので会ってやらずに隠れてやり過ごそうとしていた。



「皆本君、今日は暇?」



凪野さんの声? ああ、一緒の部活だったわね。



「ああ大丈夫だ、良かったら俺の家に寄ってくか?」



は? 確か凪野さんに対しては新太ってちょっと面倒そうにしてたわよね。 いきなりなんの心境の変化?



「へ? いいの??」

「ああ、つーか軽々しく行きたいみたいな顔すんのやめろよな? 俺に襲われるとか思わないのか?」

「わ、私はそんなの全然考えてなくてッ」



凪野さんが焦ったように取り繕っているけど顔が真っ赤、バレバレよあんた。



ていうかどういうこと?



それになんだかそんな新太と凪野さんに対して自分の中で何かズキリとした胸の痛みを感じた。



…… なんなの? 





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