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「保険の先生遅いね」

「他に仕事があるんでしょ」



なんか変な雰囲気、渚も愛菜と俺に気がいってソワソワしてるし愛菜は渚が居るせいかいつもの調子とは違う。



いや、これはこれで俺を取り合う2人みたいな構図で楽しいは楽しいけど。



「本庄さんは…… 皆本君と友達なんだよね?」



と思っていると渚がいきなりぶっ込んできた。



「そうだけど? 新太とは友達だけど何か悪い?」



突き放すような愛菜の言葉と口調。 



そりゃこんな風に言われたらいくら美人でも誰も寄ってこないわな。



「大変恐縮ですけど……」

「なんで敬語?」



お前の圧がそうさせてるんだよ愛菜。 



「…… 本庄さんは今まで特に誰とも接してなかったのに皆本君には優しいんですか?」

「優しい? 私が?? …… そうね、新太のことはずっと冷たくして突き放してたつもり。 今まで言い寄ってきた男はそうしてればしばらくすれば去っていった、なのに新太はいくら突き放しても……」



そして沈黙。



最後まで言ってくれよ愛菜。



「本庄さん?」

「バカが調子づくからやめた」

「俺のこと? 酷いな、もっと心配してもいいのに」

「してる、凄く」



愛菜が俺の手を握って言った。



「あ、あの……」

「皆本ッ!」



その時少し息を切らした西条がやって来た。



「んだよお前らも居たのかよ。 それより! 聞いたぞ、具合悪いんだって? 大丈夫かよぉ〜?」



ズカズカと愛菜と渚の真ん中に来て俺に顔を近付けた。



「ちーッす皆モン、ってあらら。 珍しい顔ぶれじゃん本庄〜」

「はあ……」



めんどくさそうなのが来たとばかりに愛菜は溜め息を吐いた。



「なぁに〜? 人の顔見て溜め息とかってつれないじゃん本庄」



翼が本庄に肩を組んでくっ付く。



「あんたが気安いのよ、馴れ馴れしい」

「うっわぁ〜、皆モンこれマジで愛想ないよぉ」

「そこのバカ2人はほっといていいからな皆本君、何かあったらアタシがちゃんと看病してやるから」

「いや頼んでないけど」



でも体調が悪い時って少し弱気になるもんでいつもはウザいと思う奴でもありがたかったりしたのでつい笑ってしまう。



「え? ひょっとして皆本喜んでる? マジで??」

「これは…… まぁ心配されてんだなって思ったら」

「あ、当たり前だろッ!!」

「ねぇ〜、ホントはもっと具合悪い皆モンのこと心配してくれてる人いっぱい居たんだけどピンキーがうるさいから引っ込んじゃったんだよねぇ」

「うっせぇ! アタシが居ればどうでもいいだろ!」



なんか眠くなってきた、よく眠れそう。 ………… ありがたいけどこいつらうるさいな、まったく眠れねぇ。



「お前らうるせぇ! 寝ようとしてんのにゴチャゴチャ騒ぐなッ!!」

「ほら言わんこっちゃない、バカ2人が来たせいで新太が寝れないって」

「本庄! てめぇ誰がバカだって?」

「本庄〜、バカなのはピンキーだけだよん、私は合わせてあげてるだけだしぃ」

「あ、あの、静かにした方が……」



その後ようやく先生が来て愛菜達は戻って行った。 少し寝ると相変わらず怠いけど朝よりはマシだ、そのかわり頭痛がやってきて大して変わらん。



「頭が痛い? じゃあ今日はもう帰った方がいいかもね」

「そうします」



良かった、鞄も持って来てた。 これで教室行かないで帰れる、今は誰かと話すのも辛いし愛菜達にはさっき会ったし。



「家の人に迎えに来てもらう?」

「いえ大丈夫です」



帰り道俺はコンビニで飲み物を買いベンチで少しグッタリとしていた。 



マジで頭を痛いわ、帰ったらすぐ頭痛薬飲まないと。 それにしてもなんなんだよ? 目を閉じると死ぬ直前の俺の姿が浮かび上がる。 



これは…… また俺に見せる気か? 



目を開けてしまえばいいが俺はその光景が気になっていた。 そうだ、俺はこの後刺されて死ぬ。



俺の後ろからある女が近付いてきた、街を歩いている俺はそれに全く気付いてない。 頭の痛みが更に激しくなっていく。 そして……



頭の痛みが絶頂に達した時、俺は女に刺されその瞬間不思議と痛みは引いていった。



周りの悲鳴が轟く中、俺を刺した女は持っていたナイフで自分の首を掻っ捌く。 



俺を刺した女はすぐに自殺したのか。 



そう思って仰向けに倒れた女の顔を見た時俺は戦慄が走った。



なッ、そんなバカな…… けどだとしたら、だから俺にああまで。 でもなんで??



わからない、俺は一体何のために戻ったんだ?



俺はゆっくりと目を開けると雲ひとつない青空が広がっていて俺の心の中とまったく逆でバカみたいだと笑った。 





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