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「ふう……」

「疲れた?」

「ちょっとな」



愛菜はテーブルに頬杖を付いている、俺も頬杖を付いて愛菜を見る。



「何?」

「目が疲れたから目の保養的な?」

「私を見て目の保養になるあんたは簡単でいいわね、じゃあ私は何で目の保養すればいいの?」

「その流れだと俺でも見てれば」



そう言うと愛菜は小さな笑みを浮かべ「バカじゃないの」と言って手を床に置いて姿勢を崩す。



こんな風に姿勢を崩す愛菜をあまり見たことがない、内股に閉じられた脚に無防備な上半身、俺が何度も女を抱いて耐性を持ってなければとっくの昔に欲情して愛菜との関係はこの場で終わってしまうかもしれない。



「愛菜って普段はそんな感じなの?」

「そんな感じ? ああ…… 学校じゃ私って堅苦しいイメージみたいだしこうしてリラックスしてることもあんまりないし」

「俺の前だから?」

「そうだよ、新太は友達だからいいかなって。 それとも学校で皆の前に居る私の方が良かったとか?」



「いいや」と俺が言うとそれを聞いた愛菜は後ろに下がって壁に寄り掛かった。



「ねえ、あんたって意外と辛抱強いんだね」

「友達だとか信用してるとか言いながら俺を試してるつもりか? お前って性格悪いな」

「信用してるし友達だとはちゃんと思ってるし。 それに性格悪いのは承知でしょ。 それにしてもあんたって本当にいじめられっ子だったの? 全然そんな風に見えないな」

「俺のアルバムでも見るか?」




「見る」と言われたので卒業アルバムをパラパラと捲る。



案外こういう俗っぽいの好きなのか愛菜は? 



「どれ見てんの?」

「あんたに決まってんじゃん」



前に辰也達に公開処刑食らった時にはパラパラとしか見てないはずだからな多分。



今回はいつもと違って若干緊張する、なんせ見てるのが愛菜だから。 通常はここで見限るんならこの女ともそれまでだなと思うんだが。



「あんた変わり過ぎね」

「そうだろ?」

「写真からでも陰気な雰囲気が凄いするけどそんなになるまで何があったの?」



まぁそう思うよな。



「別に。 いつまで経ってもそんなんじゃアホくさいって思っただけだ。 そんな奴イヤだろ?」



俺は卒業アルバムに写った俺を指差して言った。



「イヤじゃない」

「へ?」



思わず間抜けな声を出してしまう。 



イヤじゃないってどういうこと? もしかして愛菜ってブス専??



「だってこれも新太でしょ?」

「そうだけど」

「だったら私はイヤじゃない、新太に変わりないんだから」

「そっか、てか言ってて恥ずかしくないそれ?」

「恥ずかしいよ。 でも新太にはちゃんと言うわ私は」



なんだこいつめちゃくちゃ可愛いな!



その後もしばらく俺のアルバムを見て勉強を再開した。 勉強なんてもともと愛菜と一緒に居る口実だけどな。



「今日は悪かったな付き合わせて」

「そうよまったく」



玄関に行くと姉貴がバタバタと降りてきた。



「うっそ、めっちゃ美人ヤバッ! あ、私こいつの姉でーす」

「本庄愛菜です、遅くまでお邪魔してすみません」

「ご飯は食べてかないの?」

「いえ、悪いですし」



だが母さんはしつこく食い下がる、すると姉貴も混じってきた。



「もうすぐお父さん帰ってくるしどうせだったら愛菜ちゃんの家まで送ってってあげるからさ」

「あら、それいいわね」

「ああ、そうしろよ愛菜」

「…… じゃあうちの母にそう伝えますのでご馳走になります」



ペコリとお辞儀して履いていた靴を脱いで姉貴にリビングの方へ促された。



多分夕飯の時は相当うちの家族がウザかったと思うけど愛菜は上手く返事しながら食べてた。 



「ここで大丈夫です」

「愛菜、今日はありがとな」

「ううん、こちらこそ。 じゃあまた明日」




そうして次の日……



「ここってさぁ、ホントなんもしないのな」

「そりゃねぇ、うちらも何かしてるとこ見たことないし〜」

「まぁ良いんじゃない? どうせ新人来ないよねって思ってたら皆本君みたいなイケメン君と渚ちゃん入ってくれて満足っていうか。 今年は誰も入ってくれなかったけど」

「それにハーレムじゃん皆本君、ご感想は?」

「いや別に」

「うわーッ、うちらなんて目じゃないっての?!」



俺は適当な部活を選んで入っていた、それがこの手芸部。 先輩5人居るらしいけど2人はまだ見たこともないし俺もたまにしか部活に顔を出さない、それも女子しかいない。



それにしても渚、まさか俺の後を追って入ってきたんじゃないかと勘繰ってしまう。



「皆本君って彼女居る?」

「特に居ないけど」

「渚ちゃんは彼氏居る?」

「い、居ません!」

「あはは、渚ちゃんなんか匂うなぁ。 好きな人は居るんだよねぇ?」

「い、いや私は」



ふん、そんなたじろげばそうなるだろ匂わせ女め。 



俺は出来るだけ渚と目を合わせないようにして携帯を弄っていた。



マジで使えねぇなこの時代の携帯は。 ネットも通信量掛かるからろくに出来ないしゲームもスマホを知ってるとクソだし。



「さっきからずっと携帯見てるけど女の子からメール?」

「ううん、なんか面白いゲームないかなって思って」

「ええ〜ッ、そんなん探すよりもっと皆本君とお話ししたいよぉー!」

「い、居たぁーーッ!!」



そんな時部室の扉が開いて西条がやってきた。



「またつかさちゃんかぁー」



先輩達ももう慣れっこになっていた、西条が俺を探しにくるのは。



「皆本ッ! 昨日の帰り本庄と一緒に帰ったのか?!」

「そうだけど?」

「てめぇ! アタシがお前に告白してからずぅ〜ッとアタシを振り続けてるくせにどういうことだぁーー!」

「…… それと愛菜と帰るのになんの関係があるんだ?」

「た、確かにッ! じゃねぇ! 付き合ってもないのに一緒に帰るなんてそんなこと…… そんなことッ…… あれ? まぁ一緒に帰るくらいならそんなこともあるか? ん?」



いきなり迫ってきてひとりで勝手に脳内会議始めてる西条は放っておいて。



「あれ〜、新太君帰るの?」

「うるさいのも来たしそれよりもうそろそろ帰ろうかなって思ってたから。 それじゃ」

「待って皆本君! 私も一緒にッ」



渚も一緒に帰ることになった。



まぁ渚の家は愛菜と違って俺と同じ方向だしな。 








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