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さーて、本庄はトイレで今頃自分を諌めてるだろう。 歌った後なんで顔を伏せたのか元陰キャの俺には丸わかりだぜ。 



あの場ではなんでもありません的に装っていたがカラオケのリモコンの操作も覚束ない奴が人前でしかも俺にじっくり聴かれてるなんてなったら恥ずかしいに決まってる。



恐らく伏せていた顔は真っ赤だっただろう、そんなことを考えているとドアが開いた。



「遅かったな大きい方か?」

「死ね」

「冗談だって」



クールダウン出来たようだな、まぁこんなのは一回歌っちゃえば後は吹っ切れる。 



「私が歌ったんだからあんたも入れなさいよ」

「はいはい」



俺の軽快な操作となんの躊躇いなく歌を披露する姿にまた本庄はイラついているようだった。



「はぁー、最近カラオケ行ってなかったから久しぶりに歌った」



翼達とよく行ってたけどな。



「ふぅん」

「どうだった?」

「ふん、別に一般人レベルじゃない。 どうだったとか訊かないでくれない」

「次はと。 本庄だな、何歌う?」



俺が言うと「貸しなさい」と言われてリモコンを奪われた。



多分コツを掴んだんだろうな、コツも何もないけど。



「曲入ったわよ」

「見ればわかるし」

「うるさいッ!」



ちょっとだけ曲を入れれて本庄は嬉しそうにしていた。 



それから本庄は要領を掴んで恥ずかしがるわけでもなくどんどん歌っていった。



「あ、もう時間だ」

「え? もう??」

「うん、え!? もっと歌いたかった??」



わざとらしく乗ってあげると少し動揺したみたいだが「そんなわけないじゃん」と素っ気ない

返事。 いいねその遊び慣れてない感。



「延長しようか」

「しなくていいし」

「1時間だけだからさ。 それとちょっとお前とお喋りしたいし」

「…… ふん、勝手にすれば」



それから本庄と合間に歌いながらお喋りをした、兄弟いるの? とか休みの日は何やってるの? とか今まで嫌味とか皮肉とか俺の一方的な話とかで本庄とそういう身近な話はしてなかったから。



「へぇ、あんたにお姉さん居るんだ。 だからいじめられてたあんたでも女子とそんなに流暢に話せるわけ?」

「まぁそんなとこ。 本庄はひとりっ子なんだな、そんな感じする」

「それどういう意味?」

「ははッ、変な意味じゃないって」



あっという間に延長時間も終わり店を出て腹も減って来たし飯でも食っておくか。



「腹減ったな、ファミレスでいい?」

「私を楽しませたいならせめて三ツ星レストランにでもしたら?」

「そういう無茶振りするならファミレスでいいってことだな」

「ふん、ちっとも楽しくない」



それからファミレスを済ませ今度は最寄りの水族館に行くつもりだ。



「あの……」



そんな俺達にとあるじいさんが話し掛けてきた。



「この駅はどう行けばいいのか教えてくれんか?」



なんだこのヨボヨボのじいさんは? すぐ行ったところにあるのにここらの人じゃないのか。



そのじいさんは本庄に話し掛けていたので俺はそれを見守ることにしたが……



「その駅ならあそこの交差点曲がって突き当たりをまっすぐ進んで右に曲がって……」



あ、ダメだ。 このじいさん頭に?マークが何本も浮かんでるのが見えるわ。



「ええと、だからそこは」

「じいさん、俺達が駅まで案内しようか?」

「皆本君?」

「お、おお。 頼むよ、ありがとう」



そして駅までじいさんを送っていくと何度も「ありがとう」と頭を下げてお礼された。



「悪いな本庄、時間取らせて」

「別にいい」

「どした?」

「…… あんたって私にもそうだけど誰とでも気さくに話するのね」

「そうだな、コミュ力あった方が社会に出ると役に立つしな」

「コミュ力?」

「ああ、そりゃ学校とか狭い範囲でなら殻に閉じこもってても卒業は出来るけど世の中に出たらいろんな奴と接していかなきゃならないしな」



コミュ力を鍛え女にモテるためにフル発揮したのが昔の俺で結果、恨まれて殺された俺が言ってるのが笑えるが。



「ジジくさッ、あんたってたまにかなり上から目線で話すわよね? 同い年のくせに」

「だろ? 俺もそう思う。 本庄はかなり美人なのにコミュ力低いよな、いつも眉間に皺寄せでないで気楽に行けよ。 例えばほら」

「んな皺寄せてないわよ! って何してんの?!」

「おーい、そこのおじさん」

「んあ?」



通りすがりの歩きタバコしてるおじさんに話し掛けた。 この頃は喫煙者は俺が死んだ時より肩身が狭くなくて良かったよなぁ、タバコもかなり安かったし。



「ちょっと俺タバコ切らしちゃって一本下さい、それとライターもついでに貸してくれたら嬉しいです」

「おお、いいぞ」



おっさんと少し談笑してタバコに火をつけて別れた。



「ゴフッゲホッ! な、なんでだ?! 昔は美味かったのに不快な煙に!」

「バカじゃないの!? あんたタバコも吸ったことないくせにそこらの知らない人からタバコもらって吸うとか! 大体未成年でしょ!!」



本庄は俺からタバコをとりあげ偶然道の近くにあった灰皿に捨てた。



ああ、確かに初めて吸った時はこんな感じだったっけ? 



「まったく吸えもしないくせに何してんの? 私の前でかっこつけてみたかったとか?? だったらお生憎様、ドン引きしただけよ」

「はははッ、そうだよ」



もうそれでいいわ、さて気を取り直してさっさと水族館行こうとしたら本庄の様子がちょっと変だ、まさかマジもんのドン引きか?



「あんたみたいなのが羨ましいわ」

「ん?」

「バカでお調子者で変なところで負けず嫌いで女にだらしなくて下半身に忠実なクズでゴミでカスで」

「途中から酷すぎね? それと見境ないみたいな言い方してるけど違うな、本庄一筋のつもりだぜ」

「こんだけ言われてんのに本当にバカじゃん、プライドないの?」

「お前こそ変なプライドあるよな」

「そうよ」



本庄がすぐに切り返した、そして語り始めた。






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