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球技大会が終わった次の日。 前日は俺に自分に勝てるのか? と煽った挙句に負け屈辱に枕を濡らすことになるであろう本庄に気を遣い声を掛けなかった。



が、今日は悔しさ冷めやらぬとも昨日よりは冷静だろうと本庄に会って悔しがるあいつを見てやる。



「本庄ここに居たか」

「何? 悔しがる私を笑いにでも来たの?」

「ああ、そうだ」

「ふん、たかがリレーで勝ったくらいでバカバカしい別にいいわよ。 はい悔しかったわよ、これで満足?」



こいつ、そういうノリで済まそうとしてるな。 でもそうはいくか。



「あれだけ大口叩いて俺に負けたんだ」

「私が言いそうなこと言ってマウント取ったつもり? どうしたいわけ?」

「特に負けた側が何かやるとか取り決め決めてなかったけどそうだな、お前なら何か賭けるなら自分が勝った場合金輪際私に近付くなとか言いそうだな」

「言うわね、それで?」

「俺とデートしろ」

「は?」



素っ頓狂な顔をされる。



「もう一度勝負だ本庄、リレーでは勝ったけど運動神経とかそういうのは俺の元々の性分じゃない。 俺はお前とデートしてお前に楽しいと思わせてやる、そうしたら俺の勝ちだ。 どうだ?」

「はッ! バカじゃないのその勝負。 いいわ、あんたとデートして楽しいなんて思うわけないから勝負してあげるわ」



こうして俺は週末本庄とデートする約束を取り付けた。




あれ? なんか忘れてるような……



「みーなーもーとーッ!!」

「西条? 何?」

「何じゃねぇ!! アタシとのことどうなったんだよ!?」



あ、これだったわ。



「西条、俺は好きな奴がいる」

「知ってるよ本庄だろ?」

「ああ、だから俺はお前と」

「でも付き合ってねぇーじゃん!!」

「そうだけどな、でも」

「うっさい!!」



ことごとく被せてくるなこいつ。



「お前が本庄に片想いしてるならお前がアタシを好きじゃなくてもアタシがお前に片想いしてもなんの悪い道理はねぇし諦めなくても悪くねぇ!!」

「…… うん?」



うん? ううん?!



「だからこれはお前も本庄にやってることだ! これがダメでもアタシはお前がアタシを好きになるまでお前に好きって伝える!」

「はあ!?」

「覚悟しとけよッ!!」



そう言い残し西条は去って行った。



…… ちょっとだけ本庄の心境がわかった日だった。






◇◇◇








んー、何着てくか悩むな、お洒落な服で着飾っていくかどうするか。 服のセンスもこの頃に合わせなくてはいけないな、当時の俺は親が買ってきたダサい服を着ていて我ながら本当にセンスがなかったな。



本庄も今頃何を着ていくか悩んでるだろうか? そんな風な想像はまったくつかんが。 この頃の流行りはズバリお兄系だ、細身のデニムにテーラード…… いや、テーラードはもっと上だろう、つーか暑いし。 おとなしめなプリントのVネックのカットソー、こんなんでいいか。 やり過ぎるとギャル男になっちまうし。 



よし、こんなんでいいか。 つーかガキってマジで行動範囲限られるよなぁ、車使えればもっといろいろと遊べるんだが。



俺は本庄と待ち合わせの駅に向かった。 



あいつ携帯の番号教えてくれないしドタキャンとかありえなくもなさそうだけど……



少し不安になったが駅に着くと見慣れた不機嫌顔の美少女が気怠そうに壁に寄りかかって待っていたので安心した。



「遅い」

「これでも早く来たっていうか30分前なんだけどお前いつから待ってたの?」

「さっき来た」



プイッとそっぽを向いて相変わらずのようだ本庄は。 けど私服姿の本庄は制服姿と違ってこれまた美人だ、大人っぽいなこいつ。



当時流行っていたOLファッション、ガキには背伸びし過ぎかと思うくらいだが本庄は見事に着こなしていた。



へぇ〜、という感じで本庄をマジマジと見ていると本庄に睨みをきかされる。



「なんなの? ジロジロ見ないで」

「つっても今日はデートだろ? 綺麗だよ本庄」

「バカみたい、そんなの言われ慣れてるし」



態度は可愛くないのな、けどそんなところもまたいいと思うぞ。



「で、どうやって私を楽しませるの?」

「それはだな……」



ちょっと前ならチョメチョメだったんだが俺はやり飽きてしまっていた、どうせみんな似たようなもんだし。 



と言っても本庄がそんなことで楽しむなんて微塵も思ってないしこの手の女はそんなもの本人が望んでなくとも誰かによって済まされてしまうだろう。 



「ここは学生らしく遊ぶとしよう!」

「なんだ、普通なのね」



俺からしてみたらこんな風にガキの時代遊ぶのなんてちょっと新鮮だったんだぞ。 



「てっきり凄いレストランにでも連れてってもらえると思ってた」



高校生には無理だとわかってて言ってやがるなこいつは。



「何これ?」

「何って手を繋ぐんだけどデートだから」

「はあ? 私にただ触りたいだけでしょ!?」

「否定はしない」

「イヤよ、離して」



めっちゃ暴れるなこいつ、しかも地味に腕力すげぇ。



「じゃあ仮に手を離したとしてこれで本庄が満足できなかったら俺は好きなようにさせなかったから本庄は満足できなかったという口実を俺に与えることになる、そうなれば俺はまたしつこくお前に食い下がることになるだろう」



そう言うと本庄は納得はしてなさそうだが渋々と「好きにすれば」と言った。



「じゃあカラオケ行くか!」

「あっそ」



おや? 駄々こねると思ったが意外に素直だ、ああ、さっきの言い分が効いてるのか。



カラオケに着き部屋に入るとリモコンを早速本庄に渡した。



「私に歌えと?」

「レディーファーストだし」

「何がレディーファーストよ、ただ単に私の歌聴いてみたいだけでしょ」

「そうだよ」



本庄はリモコンを手に取ったが……



「どした?」

「……」



本庄の手が動かない。 



あ! こいつってカラオケ行くような友達居なそうだしそれなら勿論デンモクの使い方もわからないのか? ぶふッ、ヤバい、そんな盲点があるとはここまで思ってなかったから笑いが込み上げてきた。



まだだ、まだ笑うな。 いや笑ったら終わりだ、落ち着け俺。



「ああごめん、レディーファーストとか言っときながら配慮が足りてなかったわ。 俺が曲を入れるから何歌うか言ってくれ」



本庄からリモコンを取るとまたもや睨まれる、使い方がわからないこと悟られてムカついたのかもしれない。 



本庄は曲を言って俺の手元をじーっと見ていた。



そうか、俺の曲の入れ方見て学習しようとしてるんだな。 わからないから教えてと素直に言えばいいのに可愛いじゃないか、でもダメだ。 つっこみたくて笑いそうになってくる。



「はい曲入れたよ」



歌が始まると先程のギクシャクが嘘のようだ、上手いし流行りの歌とかは知ってるんだな。 



「あッ……」

「え?」



曲が終わると本庄は俯いていた。



「いたた……」



頭を押さえている。 マジか? このタイミングで具合悪くなっちまったか?



「ちょっとトイレ」

「俺もついてこうか?」

「変態ッ! 来るなバカ」



もしかしてあの日か? なんて思いながらトイレに行く本庄を見送った。







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