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「本庄!!」
西条からのまるでドッジボールのようなパスを本庄は受け取る。
「ッ!!」
あまりの強烈なパスに本庄の身体が少し揺れたくらいだ。
そんなんだから相手チームから本庄はすぐにボールを奪われる。 そして本庄のチームは点を取られた。
次は本庄は他の奴からパスを貰うと……
「あっぶねッ!! てめぇ」
同じくドッジボール並のパスを西条の顔面に向けて放つ。 なんとか西条は反応して受け取るが相手チームから取った瞬間に下からボールを奪われてまたもや点を取られる。
「なんであの2人だけドッジやってんだ?」
「おそらく皆本関係だな」
「俺別に悪くねぇぞ」
つーかあの2人があんなんだから同じチームメイトからヘイト向けられてそう。 だってもう2人にボール回さなくなってるし、なんてチームワークだ。
「うわぁー、雰囲気悪ッ」
よくこれで見てろなんて言えたもんだな西条は。
「これは責任とって新太が行ってくるしかないんじゃね?」
「試合中にしかも女子のに混ざるわけないだろ」
試合が進んでいく中本庄チームは相手と6点差、これはマズいと思ってるのか西条の顔色も良くない。
そんなオロオロしてる中西条と目が合ってしまった、苦笑いで返される。
「げッ、あのバカ」
そんな中相手のシュートがゴールに弾かれたボールが西条の頭を直撃する。
「あー、取ってればまだ救いはあったのに」
西条はますます落ち込みさっきまで威勢が良かったのが嘘みたいだ、その時本庄が西条に何か言ったみたいだ。
「なんだとッ!!」
体育館に西条の怒った声が響いたので一瞬みんな固まる。
何言ったんだ本庄の奴?
本庄は怒鳴られても知らん顔だ、そしてまた試合が進む。 西条は本庄から何か言われてから少し引き締まったような表情になっていた、パスが来ないなら自分でボールを奪い取ってやるという感じでさっきより相手選手に食らい付いている。
そして運良く弾かれたボールを西条はキャッチしてドリブルをして相手選手を躱すが少し進んだところで2人に張り付かれて動けなくなった。
「くそッ!」
そこに西条がパス出来るベストな位置に本庄が居た。
「本庄!」
またしてもドッジ再開かと言わんばかりの振りかぶりを見せたが今度は見事なナイスパスを本庄に送った。
パスを貰った本庄はそのままゴールを決めた。 それから流れが変わった、本庄がさっきの西条と逆の立場になった。 だけどいい位置に西条が居て本庄からパスを貰いドリブルでひとり抜いてシュートまでいった。
「ちッ!」
だが相手にディフェンスされすんでのところで弾かれるが本庄がリバウンドしてゴールを決めた。
そんな盛り返したプレーで本庄のチームは活気付き気付けば逆転勝ちしていた。
「やったな新太!」
何故か祐希は本庄チームを応援していた。
「喜んでるようだけど祐希、負けたの俺らのクラスなんだけどな」
「やっべ、喜んじまったわ」
バスケが終わると西条は俺のところにやって来た。
「皆本ーッ! 見てくれたよなアタシのプレイ!?」
「最初はアレだったけど最後の方は良かったな。 つーか本庄に何言われたんだ?」
本庄の名が出ると西条は不機嫌な顔を見せたが……
「ああ…… あいつに「やる気がないならやめれば? 試合前に絶対勝つって言ってたのはただの大口だったんだね。 口と見た目だけなんだあんたって」って言いやがったんだアタシに向かって! あり得なくね?! あいつムカつく、ムカつく〜ッ!!」
「…… 容赦ないなあいつ」
「マジで腹立つわ! まぁけどそれでアタシも腹括ったから勝てたんだけど…… それよりアタシ頑張ったろ?」
「俺のクラスは負けだけどな」
「細かいこと気にすんなって! 皆本だってサッカーでアタシのクラスに勝ったし」
あははと笑っていた西条だがだんだんとソワソワしだした。
「つーかよ、アタシお前に告白しちまったんだよな。 やべぇ、マジやべぇよ」
情緒不安定かよ!!
「な、なぁ? アタシってお前に散々酷いこと言ってたけどなかったことにしてくれるか? あのさ、アタシこんな性格でどうしても…… それで傷付いたってなったらいっぱい謝るから凄く謝るから」
「はあ、別になんとも思っちゃいないよ。 大体お前がアレな性格だってのも話しててわかるし」
「ほ、ホントか!?」
こいつのテンションどうなってんだ? まぁ悪い奴ではないしな。
「あ、そろそろリレーだわ」
これでなんやらと長かった球技大会も終わりだなと思い俺は一緒に練習してた渚と本庄の走りを見ておこう。
「アタシもお前について行こうっと」
「ええ? いや離れてろよ」
「イヤだ、もう球技大会も終わるしお前の返事も聞きたいし」
「まったく、勝手にしろ」
そうしてリレーで極度に緊張してるであろう渚のところへ向かった。
「皆本君! あ…… ええと西条さん」
渚に会うなり俺の隣に居た西条の顔を見て渚の顔が少し引き攣るのはこの前のことがあったからだろう。
「あー、前はごめんな。 手違いでお前に黒板消しぶっ込んじまって」
「あ、あはは。 ううん」
「渚緊張してるな。 けど練習通りにやればきっと大丈夫だよ」
出ない俺にはこんな誰でも思いつくような無責任なことを言うくらいだが渚は「うん!」と力強く答えた。 ところが……
「なあ、どうするよ?」
「どうするってどうする?」
何やらうちのクラスのリレーメンバーの連中がざわついていた。
「どうしたんだ?」
「ああ皆本、それが」
どうやらリレーのアンカー役が階段でコケたらしい、補欠のメンバーも今日は風邪で休んでてどうしようかと悩んでいるみたいだった。
これはキターーーッ! こんな偶然早々ない、やっぱり俺がこの時代に戻った理由は本庄と付き合うためだったか。
「俺が出てもいいけど? つーか出たかったし」
「ちょうど俺達もお前に頼めないかなって思ってたんだよ、事態が事態だしOK出ると思う」
だよな、だよな? ご都合主義のような展開に進んでいくのも俺と本庄を後押ししているかのような錯覚に陥っていた。