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「球技大会あるんだって」

「ああ、そういえばそんなのあったな」



放課後渚にバッタリ会って呼び止められたらいきなりそんなことを言われた。



球技大会か、俺は運動関係にはまったく興味がない、ワールドカップとかオリンピックとかマジでどうでもいい。 あんなのどこが勝ったとか日本が負けたとかで騒げるやつの神経がわからん。



球技大会でも同じ。 クラス対抗とかそんなんで一喜一憂する奴等とは馬が合わない、前は目立たないようにしていたな。 運動に興味ないとはいえ日々の筋トレなどの鍛錬によって俺の運動神経はとてつもなく向上してるだろう…… いやそんな漫画とかじゃあるまいし。



ああ、でも走るのは毎日してるからちょっとは速くなってるかな? あー、でもここでちょっとでもやる気とか見せとかないとせっかく上がった好感度も下がっちまうかなぁ?



球技大会で活躍したからって将来なんの役にも立たないしな、2、3日ヒーローになって終わりだ、言っちゃえばただの青春謳歌だし。



「皆本君、それでね」

「なんだ?」



おっと、渚が居たことをすっかり忘れていた。



「私も最近走ったりしてるから皆本君に脚速くなったか見てもらいたいから今日の夜とか会えないかな?」

「え?」



球技大会の話題からなにゆえあなたのお脚が速くなったから会えないかと? うーん…… めんどいなぁ、おッ! 本庄!!



「よぉ本庄」



偶然通り掛かった本庄に話し掛けると舌打ちされる。 多分俺が気付かないうちにこのまま通り過ぎようとしたな。



「せっかくあんたが気付かないうちに行こうとしたのに」



ほらやっぱり。 



「そんなこと言わないでさ」

「あ、あの皆本君?!」

「その子と話してたんじゃないの?」



そうだった、このまま渚との話を中断して本庄と話にふけるのも心象がよろしくないかな? いやこいつはこいつでそんなの気にしないとは思うがここは一応……



「悪いな本庄、俺は渚と話してたんだ」

「じゃあ今の一連の流れの意味は? まぁあんたと話してるの時間の無駄だし」



というかお前は誰ともそんなんだから時間なんて腐るほどあるだろ!



「行っちゃった本庄さん」

「はぁ〜、だな」



というよりなんだか渚が物凄く嬉しそうなんだが。 もしかしてあれか? 俺が本庄よりこいつを優先したからか? おいおい、お前も大概チョロいよな。



こいつの俺への好感度上げてもまったく意味がないってのに。



「んで? 今夜俺に会いたいだっけ?」

「う、うん! いい?」



仕方ない付き合ってやるか。



「じゃあ最寄りのコンビニで夜8時頃待ち合わせでいいか?」

「ちょッ、ちょっと待って!!」

「なんだよ? ビックリしたぞ」



渚は何やら携帯を取り出した。 



「えっと、私バカだから忘れたら皆本君に悪いし」



なるほど。 こいつはとんだタヌキだぜ、そう来たか。 これは渚の駆け引きだ、じゃあその前振りは全部俺の連絡先を知りたいがための…… まぁそれでもいい、乗ってやるか。



「だな、じゃあ交換しよう」

「う、うん、うんッ!!」



前のめりで俺の携帯を見ている、バレバレだなお前は。



そして渚と連絡先を交換してその夜、渚からメールが来た。 『コンビニに着いたので待ってます』と。



早ッ!! 約束の時間より30分くらい早いぞ、こっちは今メイク落とししてたのにどんだけウキウキしてんだよあいつ。



『今行く』と返信して外に出た。 小走りでコンビニに行くと外に渚の姿があった。



渚は俺を見つけると笑顔になってこちらに寄ってきた。



「お待たせ。 待ったろ?」

「ううん! 全然!」



なんか恋人っぽい会話だなぁ。



「それにしてもお前ってなかなか根性あるんだな、俺はてっきり3日坊主で終わるのかと思ったけど」



あれ? これ姉貴にも似たようなこと言われたな。



「私もこんなに長続きするなんて思わなかったの! 皆本君も頑張ってるんだなって思うと」

「え?」

「あ…… ううん! それよりね!」



もうそこまで言ってると俺を好きと言っているようなもんだが聞かなかったことにしてやるか。



「私前より脚速くなった気がするの! それでね、タイムとか測って欲しいかなって」



ぶっちゃけひとりでもやりようがあるだろ! とつっこむのは野暮なので快く引き受ける。



ちょうどここから少し行った所に河川敷があるので俺と渚はそこへジョギングを兼ねて一緒に走った。



「とりあえず50メートルくらいでいいだろ?」

「うん」



携帯のタイマーをセットして渚に合図をした、出だしがちょっとミスったみたいだが渚は思ったより速かった。



6秒80…… な、なんだと!? 速くね??



「お前脚速いな」

「え? えへへ、そうかな? いつも下の方だったから……」

「これで下の方っておかしくね?」

「緊張してると思ったように走れなくて」



ヤバ、本当はこいつこんなに速かったなんて。 もしかして元々は運動神経良かったりして?



「あのさ、次俺と並んで走ってみてくれない?」

「へ? あ、うん」



俺は携帯のタイマーをセットして今度は渚と一緒に走った。



速い、めちゃくちゃ速いぞこいつ。 いや、それにギリギリついていけてる自分も速いのかもしれない。



「はあ〜…… やっぱ速いなお前」

「て、てっきり皆本君が私に合わせて走ってくれてるのかと」

「いいや、本気で走った。 凄いな渚」



脚速そうには全然見えないけど。



「球技大会のリレー出たら?」

「えッ!?」



自分もやる気ないくせに俺はそう提案すると渚はブンブンと首を横に振った。 



「そっかぁー、まぁそこらは強要しても仕方ないしな」

「う、ん…… で、でも出たら凄い?」



え? 何が凄いって?



「もし私が出て走ったらどう思う皆本君は?」

「あ、俺?! いやまぁ…… なんだろ? 見直したなぁって」



小学生じゃあるまいし脚が速いくらいで何も感じはしないが一応そう答えておいた。 



「そうなんだ…… 私出てみようかな」

「マジで? リレーなんて緊張MAXなのに?」

「だ、だよね。 でも皆本君が付き合ってくれるなら」

「だからって付き合うとかはないだろ」

「ううッ、そうだよね、私の練習になんて付き合うのなんて時間の無駄だよね」



そっちか! てっきりリレーに出たら俺に付き合ってくれという意味だと思った。



「そんなことか、別にいいけど?」

「いいの!!?」

「ああ、散々勉強教えられたしな」



でも別にこいつが出たところでなんとも思うことないがな。




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