10話「ざまぁ!異世界転生してハーレム生活したかったのに助けたのはゴブリンでした。」②
ハーレムだと思った???残念!ゴブリンでしたぁ!
「だれか! 私の娘を助けてくれ! ゴブリン病にかかってしまった!」
ゴブリン病?
というか娘ってゴブリン?
え、助けるの?
壊れた馬車から出てきたのは3mくらいある緑の生き物だった。
かなり臭い……。
魚の腐ったような臭いのなんのって……
ゴブリンとは良い方でかなり匂う。
馬車に乗っていた男は父親だろうか?
身長は160cmくらいで豪華な服装からはかなりの位の高い貴族だということが見て分かった。
「だれかぁ! 助けてくれる人はいないか!?」
彼は大声で助けを求めているが、
その人に声を掛けようとする人はいない。
むしろこの強烈な匂いに耐えられず、
その場からそそくさと離れている様子が見えた。
僕も匂いの発生源から20m以上離れているけど
この匂いはかなりキツい……
助けてあげたいけど……臭い…。
「こいつはやばいんちゃう……うん。」
「えっ?」
アリアスの街の人かな?
僕の近くにいたお兄さんが呟いていた。
かなり訛りが強い。
まるで関西人みたいだ。
「すみません。何で助けに行かないんですか?」
ふと僕は知らず知らずのお兄さんに声をかけてしまった。
すると彼はかなり気前良く答えてくれた。
「お兄はんそんな事も知らんのか? さてはおまえはん田舎もんやな。服装もかなり貧相やし。」
(ぐぬぬ……)
「まあ教えたろ。ゴブリン病ってのはなぁ、昔この地域で流行った奇病いうねん。
身体が魔族のゴブリンみたいになってしまう恐ろしい病気なんや。
この病気の恐ろしい所は発作が起きると体が急速に肥大化する。そして心臓が重さに耐えられず潰れてしまうんや。」
(……凄い丁寧な解説だ。ご説明ありがとうございます!!!)
「え、という事はこの人も元々普通の人間って事ですか?」
「せや! しかも本人が死んだ後も身体が大きくなるねん。大きさが3mを越えると身体が膨張に耐えられなくなり爆発を起こす。お前はんもこんな話聞いてる暇はないぞ。この状態ならあと5分もすればあいつはお陀仏だ。緑色の雨が散らばるだろう。体に害はないがかなり臭いぞ。」
「今でもかなり臭いですよ……。」
「アホ! 爆発した後の臭さは今の臭さの10倍はするんやで、一週間は消えんからお前もどこか離れたところに行くんやで! ほな!」
そう言って謎の解説お兄さんは、
この場所から逃げていった。
「私の娘をー! 救ってくれ!!! 奇跡の果実をもっている者はいないか?」
貴族の男はまだひたすらに叫んでいる。
彼の隣にいる娘……いやゴブリン…いや生物はゴブリン病でどんどん大きくなり、気持ち悪いモンスターのようになっている。
もう3mは超えている。
さっきの人の話だといつ爆発しても遅くない。
「奇跡の果実を!!! うぅう……ミーア。私の可愛いミーア。」
残念だが彼女は助からないだろう。
どうにかしたい気持ちはあってもどうもできない。
僕もまた後ろを向いて歩きだそうとしたその時……
(ん…?奇跡の果実?)
僕は後ろを振り向き直す。
「奇跡の果実………。も、もしかして。」
ーーーー回想ーーーー
『アリアスのリンゴ、精がつくのぉ。』
僕はアリアスの小道にいた乞食の老人…アルディンの事を思い出した。
健康状態の僕が食べた時は何も無かったが、彼はアリアスのリンゴを食べ途端に若くなり、こいつ誰だよ! って言うくらいムキムキになり元気になった。
「うぅう……ミーア。私の可愛いミーア……。」
男はずっと娘の名前を叫んでいる。
僕はカバンの中を見直した。
ーゴソゴソー
僕は今アリアスのリンゴを持っている。
と言うことはどう言うこと?
そう言う事だ!!
僕は馬車の近くにいる男に声をかけた。
「こんにちは。貴族の方とお見受け致します。私、サンという者です。奇跡の果実かどうかわかりませんが、これを食べれば娘さんを助ける事ができるかもしれません。是非こちらを食べてください。」
[MPがゼロになりました]
ん?何の声だ?頭の中に謎の女性の声が響いた。
「……。おお、ありがたい。奇跡の果実グルームを持っているのか!!ヴエイストハルトの家名をかけてお礼をさせて頂く!!」
男の顔はパッと明るくなった。
僕はポケットの中から1つのリンゴを貴族の男に差し出した。
(これが奇跡の果実…グルーム?あれ?この世界ではリンゴはそんな名前だっけ。)
「……良い加減にしろ!!」
すると貴族の顔が真っ赤になり激昂した声で怒鳴りつける。
「そんなリンゴがグルームなわけないだろう。過度な期待させやがって!!!」




