9話「ざまぁ!異世界転生してハーレム生活したかったのに助けたのはゴブリンでした。」①
「こんにちは」という言葉は実は異世界では奇跡の呪文で、主人公のサンが世界を救う物語です。
ーアリアス 中央 噴水前ー
ゴーン、ゴーン、ゴーン
アリアスの鐘が3回なった。
僕はカールズに騙され所持金がゼロになってしまった…。
(くそう、あのペテン師め! いつかギャフンと言わせてやるぅ!!)
そう思いながら僕は噴水を見つめ続けた。
[宿屋バレンティア]
異世界に転生して始めて僕が見つけた宿屋は4500ラゼン必要との事。
つまり銀貨5枚分手に入れなければ野宿確定だ。ティーナさんは閃貨1枚でも良いと言っていたが、きっと価値が高いんだろう。
異世界転生してからまだ数時間も経っていない……。
僕は噴水の水に映る自分の顔を見る。
「サン……か」
新しい名前……
僕はこれからこの名前でこの世界を過ごすわけだ。
16歳から18歳くらいだろうか、
見た目的に成人はまだしていなさそうだ。
身長は170cmくらいあるな………
前の世界よりイケメンなところは喜ばしいところではあるが…。
服装はこんな皮のつぎはぎなのでかなり貧相だなぁ…。
この世界は文字こそ読むことはできないが、幸いにも日本語で話が通じるので、それは本当に良かった。
「はぁ………」
僕はため息を吐く。
あと鐘が2回鳴るまでに銀貨を5枚。
現在所持金ゼロ…持っているのは小さいナイフとアリアスのリンゴ1つ……
初期装備としては非常に頼りない。
そんなの無理だよ汗
噴水をずっと見ていても時間が経過するだけだ。この町で何か情報を集めよう。
最悪野宿することになったとして、
安全な場所が見つけられれば良い方だ。
とにかく……進もう。
なんだか前の世界で上司に怒られた時の帰り道みたいに、気持ちが浮かない気分である。
せっかく異世界転生して、
可愛い女の子やお姫様なんかと過ごすのほほん物語を期待していたのに。
いきなり今日の寝場所も分からない貧乏生活なんて、溜まったもんじゃ無い。
僕はアリアスの街をひたすらに歩いた。
街は草の匂いが一瞬ふわっとした。街並みもまるで中世のヨーロッパを歩いている気持ちだ。
このアリアスは世界のどの位置にあるのだろうか。
歩くたびに不安になる。
何か銀貨5枚を集める方法は無いのかなぁ。
ドカン!
???
近くで変な音がしたぞ?
僕は音がした方向へ向かう。
あ!あれは馬車じゃないか。
なんだ?可動部のタイヤの部分が潰れてしまっている。
どれくらい重い荷物を乗せてるんだよ…。
壊れた馬車から1人の男が降りてきた。
身なりと馬車の造りから貴族だろうと予測できた。
「たいへんだ! 私の娘がゴブリン病に〜!!!」
男は声を荒げて叫んでいる。
ズドン!
わぁ!地面が揺れた馬車が完全に壊れた。
ん?
壊れた馬車でできた土煙の中に誰かいるぞ?
僕は壊れた馬車の近くに向かう。
「え?」
馬車の中にいたのは、身長は2m前後の大男???だった。身体は象の足のようなシワシワの皮膚をしている。目は真っ赤で頭の半分くらいの大きさ。口がだらんと開いている。その口からは緑色の体液がポタポタと。
「だれか!私の娘を助けてくれ!ゴブリン病にかかってしまった!」
ゴブリン病?
というか娘ってゴブリン?
正直見た目はゴブリンというより、モンスターという方が良いのだろう。
緑の液体なんか洗ってない銀杏みたいな匂いがする…臭い。
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