7話 初めての銘柄。。
7話 初めての銘柄。。
「マジですか!いやーなんか嬉しいな。投資に興味を持ってくれるなんて。」
俺はSMBC日興証券に申し込んだ次の日にS君に電話をした。
S君は喜んでくれた。いい奴だ。
俺は後輩やライバルメーカーの奴の話しをした。
全然親切に教えてくれなかった事に腹を立てていた事だ。
するとS君はこう言った。
「それは、恐らく儲かってないからあまり話したくないんですよ。」
何!?
儲かってない…。??
そうか。そうかもしれない。
なぜならば今は2020年4月。
株にしろFXにしろ暴落しているだろう。
『コロナ』のせいで…。
そんな時に、呑気にやれ投資信託だ、ニーサだと浮かれている50歳。
投資の事なんて話したくもなかっただろう。
俺はなんか悪かったな…と反省した。
S君が話しを続ける。
「所でなんですけど、今まで周りに誰か株をやっている人いなかったんすか?」
と聞いてきた。
俺は親父がやっていて約20年前に大損して辞めたらしい話しをしてみた。
「20年前??それは結構キツイっすよ。」
「キツイ?なんで?」
「高西さん。20年前ぐらいっていったら…」
きっと株をしている人間ならすぐ分かるのだろう。
S君が答えを話す。
『アメリカ同時多発テロですよ』
!!!
そうか!
そうか…そうなんだ…。
親父はあのテロのせいで大損したのか…。
頑張って働いてやっと定年を迎えて…老後の楽しみで株を始めたのに…。
俺は親父の想いを一瞬で汲み取った。
やや落ち込んでいる俺にS君は、
「いや、実際は分からないっすよ。信用してたら関係なくすっ飛ぶ事もありますから。」
と話す。
『信用…??』
この時は何を言っているのか分からなかった。
その事よりも親父の無念さを感じ取っていた。
2008年のリーマンショックと2001年のアメリカ同時多発テロ。
さすがの俺でも知っている。
株に限らず不況になったからだ。
『親父のリベンジ』
そんな思いが少し芽生えたような気がしたが、それはまだまだ火種にもなっていない。
「プラチナやシルバーも考えといて下さいよ!」
とS君は言って電話を切った。
2020年5月。
日興証券の申し込みは完了していた。
早速、証券会社の自分専用の口座にお金を振り込む。
とりあえず10万。
その専用口座にお金を入れておけば株が買えるらしい。
ちなみに振込手数料も出金手数料も無料だ。
そして、ニーサはもう少し時間がかかるらしい。
調べてみたら税務署に届け出を出すとの事だ。
なるほど。この制度は証券会社の制度ではなく国が決めた事か。
120万までの買い付けは税金がかからないらしい。
120万までの買い付け??
と言われてもあまり意味が分からない。
早速、日興フロッギーのサイトに入り記事を読みまくる。
なるほど。
優待狙いならこの記事。飲食ならこの記事。先月のピックアップ銘柄やら色々記事がある。
そして『四季報』なるページを見つけた。
読んでみる。
なるほど。
その会社の事が色々詳しく書いてあった。
「めんどくさ…」
データやらグラフやら表やら数字やら…。
「そりゃこれ見たら分かるけどさ、専門でやってる訳じゃないからな。リーマンにこれはキツイわ。」
と独り言を言ってみる。
とりあえず、誰でも知っている大手の銘柄を買ってみるか。
そう。
買わなきゃ始まらない。
買わなきゃ分からない。
俺はある銘柄を見つけた。
一応チャートを見てみる。
3月に2000円台だったのが今は4000円台。
そして過去には5000円を突破していた。
『これってもしかして安いんじゃないか…』
要は3月のコロナで暴落して今は元に戻ろうと上がっている途中だろ。
俺は素人ながら誰でも分かる事を分析してみた。
いや、分析の真似をしてみた。
しかし、この時。
『順張り』を自然と意識していた事になる。
【順張り】SMBC日興証券用語集より引用。
投資手法の一種で、多くの買いが集まって株価などが上昇しているときに買い、逆に下落基調のときには売るという投資手法です。株価が上昇・下降トレンドにあるときに、そのトレンドに乗っていくというような投資スタンスです。一般的には、株価チャートなどのテクニカル分析を利用して、株価が上昇していくトレンドを確認しながら買いを入れたりします。一方、株価などが下落しているときにあえて流れに逆らって買うような手法を「逆張り」といいます。
俺は早速買ってみる事にした。
生まれて初めて株を買った銘柄は、
『ソフトバンクグループ』
だった。