6話 怒りからの株投資。。
6話 怒りからの株投資。。
はじめての投資信託を1万円で始めて1週間経った。
投資信託の魅力は何といっても何もしなくてもいい。
しかも分配金という名の報酬もある。
毎月、隔月、1年毎と分配されたりする。商品によって選ぶ事ができる。
呼び方は違うかもしれないが、『権利収入』ともいえるだろう。
ミュージシャンや作家の収入源、『著作権』も権利収入だろう。
俺は『権利収入』に大きく魅力を感じていた。
なぜならば、『勝ち組の象徴』だ。何もしなくてもお金が入る。
会社の後輩が株をやっていた。
金額は200万程で10年はやっているらしい。
俺は親父が株で大損していたので内心馬鹿にしていた。
その親父は退職金の1千万円を株に費やしていたらしい。
で、150万儲かったからカナダに旅行に行く。とかもあった。
もう約20年前の話だ。
その『約20年前』に何が起こったのか。
まだこの時は何も知らない。
『確かブリジストンとか買ってたような…』
そんなレベル。親父と株の話なんてした事はなかった。
会社の後輩に株の事を聞く。
が、あまり積極的に話さない。
俺はニーサの事を聞いた。
何しろ、ニーサさえも知らないレベルだった。
「そんなの自分で調べてくださいよ。」
俺はカチンときた。
そして、
「ギャンブル感覚で投資をやるつもりでしょ?そんな事言ってるようではだめですよ。」
またまたカチンときた。
そして思わずこう怒鳴った。
「株なんてギャンブルやわ!金かけて上がるか下がるかなんてギャンブル以外何もないやろ!」
そして後輩はこう答える。
「まあ、投資信託なんていってるようではお話にならんすわ。」
人を動かすのは『怒り』の感情だ。
怒りがなければ別にどうでもいい事が多い。
だがこの怒りという感情は、面倒くさくても疲れていても行動力というエネルギーになる。
俺はこの事を後から知る事になる。
この後輩の言葉。
『投資信託なんてお話にならない。』
俺は自分の信じた『投資信託』を馬鹿にされて無性に腹がたった。が、その反面冷静になる自分もいた。
なぜならば、
マイナス50円。
1週間経った投資信託の価格を見ると50円減っていた。
この『50円』をどうみるか。
俺は過度に期待していたのだろうか。
たった50円でも減っている事に情けなく思った。
そして、その日の夜。ライバルメーカーの営業マンに電話をした。FXで儲けているらしい。よく自慢していた。
ライバルメーカーといっても歳が近いせいか仲が良い。
よく仕事の情報交換をしていた。
「FXもそうですけど株も辞めた方がええっすよ。金がない人には無理っすから。」
これにはカチンを通り過ぎた。
妙に納得した自分もいたがやはり腹がたつ。
結局FXの事は何も教えてはくれなかった。
電話を切る。
「ふざけるな!どいつもこいつも!俺が本気になったらどうなるか思い知らせてやる!!」
『怒り』が沸点まで達した。
俺は元来仕事ができる。
俺は自社の商品の事をよく勉強した。ピンチも乗り切ってきたし、考えて売上も伸ばしてきた。取引先の駆け引きも上手にこなしてきた。業界では敏腕営業マンで名を馳せていた。
「たがが株やろが!そんなもん楽勝やわ!」
この怒りにも似た感情は何なのだろうか?
きっと上から見下された感覚を覚えたからだ。
「偉そうに!投資をしてる人間がどれだけ偉いんや!今にみとけよ!一気に儲けてこっちが見下してやるわ!」
そしてこう言ってやる。
『株?あれで損する奴おるん?こっちはギャンブルでゼロになんてしょっ中な所で勝負してきたのに、そんなのと比べたら甘いわ。ゼロになんてならんやろ。株なんて。』
と大きく利益を上げたら言ってやりたい。
俺は家に帰るとネットで証券会社を調べた。
どこで株を買うかも知らない俺だったが、どうやら銀行では買えないらしい。株は証券会社で買う事もこの時初めて知った。
いくつも出てくる。こんなにあるのか…。
何しろ株を買うイメージはチャートのモニターの映る所に行って、何を買うかチャートを見ながら買うもんだと思っていた。
当然親父もどうやって買っていたのかは知らない。
そうゆう場所に行って買ってるもんだと思っていた。
「やっぱり何でもネットの時代だよな。株もネットで買えるのか。」
俺はいくつもの証券会社の特徴を読みながら探す。
本来ならばめんどくさくなってやめる所だ。だが、ネット銀行の手続き、ボートレース、投資信託とある程度ネットに慣れていた。それにやはり怒りだ。この感情がなければ探すのをやめていただろう。
『怒りからの行動力』
今はこの感情だけで動いている。
一つの証券会社に目が止まる。
『日興フロッギー』
何やら可愛いカエルのキャラクターがいた。
『記事から買える画期的なシステム』
『100円から買える』
『dポイントからも買えるポイ株』
これは…。
いいんじゃないか…??
というかここしかない。
なぜならば、俺は本を読んで株をやるのは嫌だった。
成功者の株の本。そんなもん誰が読むか。
俺は失敗してでも自分で感じて自分で考えて利益を出す。俺ならできるはず。失敗してもいい。失敗して覚える事の方が重要だ。
その力が己の武器になる。
そう思っていた。
なぜ投資を知らない俺が最初からそう思っていたのか。
それはこの男が『地獄の住人』だからだ。
失敗して勝つ。スロットは特にそうだ。
闇雲にスロットを打っていた訳ではない。
データ分析。台の癖。その店の高設定の入れ方。朝一の挙動。
連チャン率。小役の落ち率。ゾーンでの挙動。1週間の天井到達回数。
スロッターは分析をしながらスロットを打っている。
それは誰にも聞けない孤独な闘いだ。
何しろ、スロットを本気でしている事なんて誰にも言えないから自分で分析をするしかない。時にはネットで情報を拾いながら。
記事を読んでその場で気に入ったらその銘柄を買える…。
俺は経済の事なんて何も知らない。
そんな俺が、経済の記事を読んでその記事に関連している会社をピックアップしてくれて、同じ画面から購入ボタンで買える。
これなら俺でも買えるかも…。
そして、100円から買えるのもどうやら画期的なシステムらしい。何しろ最低100株からしか買えないのが普通だ。単元と呼ぶらしいが、当然その単元でしか買えない事もこの時は知らない。
よく分からないがとにかく100円から買えるなら練習には持ってこいやな。と思った。
で、dポイントか…。dポイントで買えるし貯まるのか。それは、まあおまけ程度でいいか。
「よし決めた!」
俺は早速、『SMBC日興証券』に申し込んだ。
この時は2020年4月下旬。
そう。株をやっていた連中からしたら最悪な時だった。
『コロナ大暴落』。
しかし、俺はそんな事さえも知らない。
このタイミングで株を始める。ここにこの男の幸運があった。