5話 勿体ない。。
5話 勿体ない。。
「投資信託?あれって長期でやるんだよね?」
「あー主婦とかやってる投資?」
「投資信託って儲かるの?」
誰に聞いてもこんな答え。
全く投資というモノに興味がなかった俺は周りにリサーチしてみた。
何しろ会社の持株さえも購入していない。
俺の所属する部署では俺だけ持株を買っていない。
それぐらい興味がなかった。
『持株で給料から1万円天引きされるならパチンコやるわ』
なんて口が裂けても言えない。
まずは同僚や会社の後輩にリサーチしてみる。
で、それが先の答え。
どうやら投資信託はするならするでいいんじゃない?とまるで年金型の保険程度だ。
人生初の投資に興奮している俺を小馬鹿にしているようにも思えた。
友達のS君にも聞いてみた。
「俺、昔株やってたよ。」
!!?
「マジ?そんなの初めて聞いた。」
「まあ、失敗して辞めたけど投資に興味持つなんて俺も何か嬉しいわ〜。」
そう。S君も投資をそろそろ再開しようと思っていた所だったらしく、親友の俺から投資の相談がある事に嬉しく思っていた。
そして…。
「投資信託??いやー俺は勧めないわ〜。」
やっぱりだ。
理由を聞く。
「プロって言っても人のお金で投資してるから、大手の当たり障りのないの買ってる。って聞いた事あるよ。」
やっぱり。。
で、周りに投資をしている人間が何人いるか聞いてみた。
投資信託は二人。
株は六人。
そんなにいるん!?
これはびっくり。
余程世間知らずの俺。いや投資知らずの俺。
そんなS君に聞いてみた。
「投資を再開ってやっぱり株やるん?」
S君は真剣に答えてくれる。いい奴だ。
「いやいや、株は懲りたからさ。ゴールド、プラチナだよ。」
ん??
ゴールド…金…か。
「俺も投資信託で色々調べたけど、金とかの投資信託もあったな。」
「いやいや、それはあくまで投資信託だから。現物だよ。本物!」
「本物…。」
「ゴールドって昔は3000円台やったからね。今は6000円超える所まで来ててさ、倍だよ!その時買ってたらさ。で、まだまだ上がるよ!ちなみに上がるのはプラチナもだけどね。」
「へーそんなに価格って上がるのか…」
「だって金は将来発掘しつくして、採れなくなるらしいからね。」
「マジでか!!」
俺は俄然興味を持った。
そこでS君が得意げに言う。
「だけどね高西さん。実は僕が狙ってるのは金、プラチナじゃないんだ。」
俺は思った。まさかのとうもろこし?コーヒー豆?とか。
先物はなんとなくだが知ってはいた。
当然危険ということも。
そんな俺の知ったかぶりに笑いながら答えるS君。
「先物と現物は違いますよ。ちなみに銀ですよ。シルバー。」
「銀…??」
俺は初めて聞いた。
銀、シルバーも買えるのか。
S君が続ける。
「でね、高西さん。シルバーっていくらか知ってます?金が6000円ぐらい、プラチナが3000円ぐらい、に対してシルバーは70円っすよ。」
!!
「なん!??70円!?」
「貧乏人の銀、って言われてるらしいですけどね。でもアメリカ人はシルバーを今の内に買ってるってラジオで言ってたからさ。」
ラジオ…。
まさかこのご時勢にラジオて…。
いやそんな事より、まさかS君がそこまで投資に詳しいとは…。
正直驚いたと共にショックだった。
「みんな投資の事考えてるんやな。」
「高西さん、投資は資産運用ですから。全然やらなきゃだめですよ。」
最後に優しく話してくれた。
「そっか…資産運用か…。」
幸い俺の手元には95万円ある。
5万はボートレースで負けてしまったが。
「この95万円を増やしてみるか…。」
そう思った時にボートレースで負けた5万円が凄く勿体なく感じた。
きっとパチンコで負けてもそう思っただろう。
『勿体ない。』
本来ならばこんなワードはパチンコジャンキーには何も響かない。
分かっているからだ。
分かっているから勿体ないとは思わない。
『勝負した結果だから仕方ない。』
と、負け犬よろしくいつものパターンのセリフだ。
そう。今までは。
だが今回は『勿体ない』だ。
こうなったら俺はプロに増やしてもらう!
株やゴールド、色々あるのは分かった。
だが俺が投資をやろうと思ったきっかけは投資信託だ!
自分の直感を信じる!そして投資信託を調べまくってやる!
と思った。
この時点ではまだ株をやる事なんて到底考えていなかった。
なぜならば…
俺の親父は株で大損していたからだった。
そしてもう一人、話を聞かなくてはいけない奴がいる。
投資で3千万円以上利益を出している奴が俺の周りにもいた。
そいつはライバルメーカーの営業マンで年齢も俺と近い。
そいつが投資しているのは、
FXだった。