19話 恐怖指数。。
19話 恐怖指数。。
「投資信託はどうしたんですか?」
後輩が俺に聞いてきた。
別に嫌味でもない。
確かに株を始めようと思った当初は馬鹿にされた感はあったのだが、今はお互いにアドバイスをし合うようになっていた。
「興味あるのもあるがまあその内やな…」
と答えていた。
興味…。
そう。これは嘘ではない。
普通、株に興味を持つとその面白さ…人それぞれだが自分が時間をかけて選んだ銘柄の価格がどんどん上昇するのは確かに面白い。
大体の人はそうだろう。
だが、その手の面白さなら俺はボートレースやスロットの方が面白い。すぐ答えが出るからだ。
株は時間がかかる。時には数ヶ月待たないといけない。
ので、株だけに執着する気はなかった。
『北野誠のとことん投資やりまっせ』のラジオはあれから毎週欠かさず聞いていた。特に銘柄を教えてくれる番組ではない。が、今の状況を教えてくれる。当然知らない事も。
株に幾分慣れ始めていた10月の終わり。
俺はいつも通りラジオを聞いていた。
今は2020年12月。
その10月に話していたある事がずっと気になっていた。
しかもエンディングに少し話した事だ。
進行の大橋ひろこさんが、北野さんに、
「そういえば、恐怖指数40突破したみたいですよ。」
北野さんは、
「嘘!やった!恐怖指数は20以下で買ったら絶対損はしない。」
アシスタントのケリーさんが不思議そうに感心する。
大橋さんが恐怖指数の説明をする。
といった感じで、メインの会話ではなく世間話的なノリの少しの話しを覚えていた。
『恐怖指数?』
何か凄い名前だ。
『20切ったら絶対損はしない?』
損はしない?そんな投資あるん?
何事も勉強だ。
俺は早速調べた。
『VIX恐怖指数。
VIX指数とは、シカゴ・オプション取引所(CBOE)が作り出した「ボラティリティ・インデックス」の略称です。
VIXはS&P500を対象とするオプション取引の値動きを元に算出・公表されており、このVIX指数は投資家心理を示す数値として利用されており、「恐怖指数」という別名が付けられています。
恐怖指数は、通常時10~20の範囲内動き、相場の先行きに不安が生じた時に数値が大きく上昇する特徴があり、過去のチャートを見ると、大きな出来事が起きた後は大きく上昇しています。
1993年Robert E. Whaley 教授が提唱
1997年10月アジア通貨危機48.64
2001年9月アメリカ同時多発テロ49.35
2002年7月エンロン不正会計事件48.46
2003年3月アメリカのイラク侵 34.40
2008年10月リーマンショック ※過去最高 89.53
2011年10月ギリシャ通貨危機46.88
2017年11月過去最低値8.56』
えーと…。
仕組みはよく分からないが意味は分かった。
何か大きな事件が起きると数値が跳ね上がるのか。
年表を見る。
何とリーマンショックは飛び抜けている。
「これは…さすがに怖いわ…。こんな数値なら凄い事になったやろな…。」
何しろ親父が株をしていた時代のアメリカ同時多発テロでさえ50は上がっていないのに対し、リーマンショックはほぼ90だからその凄まじさはこの年表でも分かる。
後は…S&P500は何となく分かる。アメリカ株を少しかじっていたせいか何となくだが。要はアメリカの選抜500銘柄。
オプション取引…。信用取引か何かだろう。
まあそこはいいや。
で、肝心な2020年10月下旬はなぜ恐怖指数が40越えたかというと、コロナが全世界で猛威を振るい、特にアメリカ、ヨーロッパが酷かったからだ。
「そういえば、この年表には古いのしかないがコロナショックの時はどうだったのだろう?」
俺は調べてみた。
コロナショックの暴落は2020年3月。俺が株を始める1ヶ月半前だ。
そこには衝撃的な数値が示されていた。
『2020年3月 コロナショック 85.47』
「嘘だろ!!」
俺は驚いた!
こんな数値だったなんて…。
「という事は、リーマンショックの次…2番目の上昇…。」
当然株価が暴落したのは知っている。
そのおかげで、落ちた所から上がっていく銘柄を買って、素人の俺でも何とか利益を出す事ができた。
「じゃあ、俺はコロナから上がっていく所にいたのか…。」
当然漠然とは知ってはいた。
コロナで落ちた事も、上がっていく過程なのも。
だが、こうやって数値を見るとよく分かる。
大大大暴落だった事が。
そうなると俺は自分の無知さを思い出す。
「ソフトバンクグループやイオンモール…このあたりを集中的に買っておけば絶対利益が出た…。テラなんか買っている場合ではなかったか…。」
俺はコロナで大変なのは重々分かっていながら、株の相場としては大チャンスの所にいた事を改めて理解した。
失敗…。
だが株のいい所は失敗をしても取り返せる。
そこがギャンブルとは違う。
損失は出してもゼロにならないからだ。
『俺は地獄の住人だったんだ。ゼロにならないなら楽勝やわ。』
俺はあくまでも強気だった。
根底には怒りから始まった事が大きい。
『楽勝で利益を出して見返してやる。』
この意味の分からない意地が、損失を出しても余裕でいられた。
そして思い出すのが、『絶対損はしない。』の言葉だ。
それはそうだ。損はしない。通常時の時、恐らく指数が20ぐらいの時に買っておけばいつか何かあれば数値が跳ね上がるから。
でも…
「何を買えばいいんだ?」
恐怖指数の存在も意味も分かった。
で?
何を買えばいいか分からない。
何を買えばこの恐怖指数の恩恵を受けられるのか?
正直、何か調べて見るにはもう面倒だった。
意味が分かっただけでとりあえず満足。
どうせ買うには何か難しい事があるんだろう。
が…『絶対損はしない』という言葉にマジックがかかる。
俺はボーとしながらも調べた。
『VIXは指数であり、それ自体を売買することはできませんが、VIXの短期先物指数に連動した上場投資信託(ETF)である「国際のETF VIX短期先物指数」(1552)があります。
相場が大きく下落し、相場の変動性が高まりそうだと想定するなら、VIX連動ETFを買うことは投資戦略のひとつです。実際に相場が急落し、VIXが上昇したタイミングでETFを売れば値上がり益が出ます。ただ、予想に反して相場の下げが限定的だったり、相場の変動性が小さい場合は損失が発生する可能性もあるので投資する際には注意が必要です。また、先物型ETFのリスクとして、限月交代時の調整により、時間が経過するほど価値が減少していくことがあります。紹介したVIX連動ETFも長期保有には不向きですので、注意してください。』
ん!??
4桁の番号が記載されている。
ETFだからか!
俺は投資信託に興味があったのでETFの意味は知っていた。
要は上場している投資信託だ。
早速、いつもの日興証券のアプリでこの4桁番号を検索してみる。
!!
出た!
『1552 国際のETF VIX短期先物指数』
しかも株みたいに価格が出ている。
なるほど…。この価格が恐怖指数と同じ動きをするのか…。
という事は、2020年の10月の時は40を超えてるから高い。恐怖指数が20ぐらいの時だったらは価格が安い。
2020年10月の時の価格は1株8000円を超えていた。
普通ならこんな高い銘柄は買えない。
何しろ100株80万だ。
だが、俺は買える。
なぜなら、
『日興フロッギー』だからだ。
100円から買える。
正直、このシステムの意味が分かったのはつい最近だ。
このシステムの利用の仕方がイマイチ分からなかったが、これではっきり分かった。
単元100株で買えないのが買える。
結局はそのままの意味だ。
だが、これは大きい。
なぜなら投資の幅が広がるからだ。
単元でしか買えない証券会社で売買していたら、恐らくこの『VIX恐怖指数』は思いっきりスルーだろう。
俺は他の人よりも、優位に立てる事に嬉しく思った。
基本儲かれば何でもいいのだ。
『絶対損はしない』
この意味が分かった俺は、恐怖指数チャートが20ぐらいになった時を虎視眈々と狙うべくチャートを毎日見る事にした。
そして、他のETFも調べた。
『S&P500ブル3倍』と『S &P500 ベア3倍』。
3倍…。
投資を初めてしようと思ったきっかけは投資信託だ。
その時に2倍やら3倍やらあった。
単純に2倍、3倍になるんだろう。
???
本当か??
ギャンブル気質は変わってはいない。
いや、まだ『地獄の住人』から抜け出してはいない。
俺はここからレバレッジ取引に興味を抱く事になる。