16話 地獄の住人の由縁。。
16話 地獄の住人の由縁。。
2020年9月。
株を始めて4ヶ月が経った。
俺は勝手に呼ぶ事にしている『高西式』を完成させたので違う事を始めてみようと思った。
先ずはS君の勧めで、金、プラチナ、銀の定期購入の申し込みをした。
こちらは超長期。10年後を見据えての投資だ。
そして…。
見たくもないホリエモンのYouTube 。
しかし見て良かった。
正直、初心者には持ってこいの話だ。
逆に『こちら』を先に知っていたら、ここまで株のことを勉強しなかっただろう。
そうゆう意味では『こちら』を先に知らなくて良かったかもしれない。
こちらとは『ワンタップバイ』。
ネット証券会社だ。
何しろ超がつくほど簡単。
金額は1000円から。
ボタンを押せばもう購入。
そしてなんといっても画面の見やすさだ。
これなら誰でも分かる。
投資初心者の俺でもこれは超初心者向けだと思った。
当然デメリットもある。
チャート分析や四季報など見れない。
ただ買うかどうかだけだ。
後は銘柄が少ないのと手数料が高い。
だが、それは初心者にとってみればありがたい話しかもしれない。メジャー所しか買えないから先ずは大手で練習してみるのも良い。
手数料は逆に1000円から買えるので仕方がない。と割り切れる。
俺は、ラジオで言っていた事を思い出した。
アメリカの『ロビンフッダー』だ。
ネットで手軽に株取引ができるアメリカのネット証券会社『ロビンフッド』。
そこで取引している若者を『ロビンフッダー』と呼ぶ。
正直、若者ではないが俺と同じだ。
コロナで自粛しているから、株を始めた。
アメリカでも日本でも状況は同じであった。
「始めに知らなくて良かったわ…」
簡単すぎるから、株の気配値もチャートも四季報も一切知らずに株投資をしていただろう。それはあまりにも危険だ。
しかし、主婦や趣味程度で株投資をするにはいいネット証券だと思った。
そのワンタップバイはアメリカ株も投資できる。
銘柄は少ない。が、俺は証券会社を増やしてメインでアメリカ株をやる気にはなれなかった。
面倒だからだ…。
それならセカンド証券として、これぐらい簡単ので充分だ。
俺は早速『ワンタップバイ』に申し込んだ。
そして、早速アメリカ株の銘柄を探す。
が…。
高い…。
1株が高い。
正直日本株を1000円近辺でしか買っていない俺にとってこのアメリカ株の高さはハードルが高い。
アメリカ株を1株から買える証券会社もあったが、こちらにしておいて良かった。
1000円から買えるからだ。
仕組みは、日興フロッギーと同じだ。
俺はフロッギーの金額指定から株を始めたので『ワンタップバイ』の理解は早かった。
とりあえず適当に買ってみる。
『インテル』と『アップル』だ。
俺はどうやらIT系が好きらしい。
そして、なるべく1株50ドル以下の銘柄をピックアップ。
更に配当の出る銘柄に絞る。
俺は買った後に気付いたが、アメリカ株でもあまり配当に重きを置いていない銘柄もあった。
ピックアップした銘柄を、配当の支払い月をメインに自分なりのリストを作ってみた。
4月7月10月1月配当支払い
フィリップ・モリス
メインストリートキャピタル
アルトリアグループ
ゼロックス
5月8月11月2月配当支払い
AT &T
ベライゾン
メインストリートキャピタル
6月9月12月3月配当支払い
メインストリートキャピタル
エイリスキャピタル
クラフトハインツ
ファイザー
IBM
エクソンモービル
支払い月の多少の誤差はあるだろうがこんなもんだろう。
このリストを作るときに驚いた事が2つあった。
メインストリートキャピタルは、何と毎月配当していた。
「これって…ここだけ集中投資しとけば毎月お金が入ってくるやん。…」
そしてもう一つが、配当の権利を得た翌月にもう配当が振り込まれる事だ。
日本株の場合は数ヶ月先に振り込まれる。
これは何と素晴らしい…。まさしく株主視点だ。
アメリカは企業は株主のモノという意識が強いらしい。
会社のオーナーではなく。
昔、中日ドラゴンズの落合が監督かGMの時に、球団はオーナーの持ち物と言った事があるらしいがそれとは異質だ。
異質…。
と感じる程日本は遅れているのかもしれない。
その日本株に四苦八苦するならアメリカ株を買ってほかっておけばいいのではないか。
元々めんどくさがりだ。投資信託に興味を持った俺はこのアメリカ株こそが理想の投資ではないのか。
『権利収入』
俺はどこまでもこの収入に憧れを抱いている。
俺はS君に聞いた。
『なぜアメリカ株をやらないのか?』
S君の答えはこうだ。
○日本株の方が面白い。
○アメリカの取引は夜中
○1株が高い
○情報が入りにくい
○アメリカ株はもう伸びる要素はない
だった。
俺は全く意味が分からなかった。
日本株が面白いのは分かる。
自分で銘柄を探してその銘柄の価格が上がって利益を出す。
ギャンブルとまではいかないが一種の満足感は得られる。
が…
俺は満足感の為に株をしている訳ではない。
趣味でもない。
S君が説明してくれた理由は、配当狙いの人にとっては全く関係ない事柄だと思った。
俺はとりあえずの時には使える例の購入方法をしてみた。
すなわち、『10銘柄平均法』だ。
10銘柄を2万ずつ買ってみる事にした。
………
この男のスピード感はある意味恐ろしかった。
全くの素人がまだ投資を始めて4ヶ月である。
全く知らない株を自分で考えて利益を出した。
金、プラチナ、銀も購入し、アメリカ株も始めた。
これはどういう事かというと、単純な『分散投資』ではない。
目先の資産を増やすのは日本株。
定期貯金の意味合いの金、プラチナ、銀。
権利収入のアメリカ株。
この『性質が違う収入を得る投資方法』に誰の意見を聞く事もなく気付く。
まさしくこの男は『地獄の住人』だった。
20年間いつも金がない中で生きてきたこの男は、金の作り方に貪欲だ。それは無意識から生まれる事ができるほどだった。
そして何といっても意思だ。何とか地獄から這い上がる。その為にはアンテナを広げる。面倒になった時は怒りの感情を思い出す。
この地獄の住人は確かに光の方向へ進もうかと思われた。
ここで、悪魔のささやきが聞こえる。
それは、逆の意味での『地獄の住人』の由縁だった。
地獄の住人ならでは…。
そう。
地獄の住人は負けっぱなしは我慢ならない性格の持ち主が多い。
負けたままでおさまる訳がなかった。