12話 運命の選択。。
12話 運命の選択。。
100株を買う。
いわゆる単元株。株を購入する時の最低数量だ。
だが『日興フロッギー』から始めた俺は、この100株単元で大きく数量を買ったと思っていた…。
6銘柄の内5銘柄がマイナス。
俺は2週間でこの5銘柄を損切りをした。
年内いっぱいは損をしながら失敗しながら覚える。をテーマにしていたのでさほどダメージはない。
ダメージはないが…。
やはり勝たなくては意味がない。
何かが足りない…。
何かが違う…。
それとも、やはり株は儲からないのか…。
親父みたいに俺も失敗してしまうのか?
『俺みたいになるなよ…』
俺は小学生の頃からこんな言葉をよく親父から聞かされた。
決して、貧乏ではない。
だが、その『貧乏ではない家庭』を必死に働いて守ってくれたのが親父だ。
親父は工場勤務だ。
九州の小さな島で育った親父に学歴はない。
そんな学歴のない親父だが真面目だった。
タバコもギャンブルもしない。
小学校のある日、親父は新聞配達を始めた。
毎朝新聞配達を終えてから工場で働く。
工場でも歳下の上司に怒鳴られた事もあっただろう。
きっと内心は、
『くそ。いつかきっと俺も株で儲けて金持ちになってやる。』
と思いながら働いていたのは容易に想像できる。
本当はすぐにでも株を始めたかっただろう。
だが、俺を含めて兄弟は3人。
とてもじゃないが生活をするだけで必死だ。
その親父が退職金で得たお金でやっと株投資を始めた。
その親父は株で失敗…。
俺は親父に株の話を聞いてみようかと思った。
が…
話すなら株で利益を出してからだ。
少額でいい。少しお金を渡したい。その時に株の話を聞いてみようか…。そして親父も株を始めたいと言ってきたら、10万でもいい。親父に渡して株を始めさせてやりたい。
もし、もう証券会社に電話とか面倒くさいというなら、俺が替わりに買ってやる。
株で損失を出せば出す程、親父の事が脳裏に浮かぶ…。
『これは少し勉強しないとあかんか…』
少し気になる単語があった。
みん株サイトを見る時に専門的な単語を見かける。
『PER』と『PBR』だ。
何倍とか書いてあるが…。
俺は早速、証券会社の用語集で調べてみた。
なるほど…。
何となくわかった。
要はその会社の価値の指標か。
『PER』は20倍以下だと会社の価値がある。またはその会社の株が割安という解釈でええのか…。
ではPERとか見て買えばいいのか??
と一瞬頭をよぎった。
だが、それなら株をしている人は誰でも儲かる筈だ。
こういった数値はあてにはならないだろうと思った。
やはり分析だ。
過去の検証をしないと始まらない。
スロットでもそうではないか。
なぜ、途中まで勝ってたのに負けたのか?
俺はどこで間違えたのかその日のスロットの反省をよくしたモノだ。
一つ引っかかる事があった。
『なぜ、JBRだけ利益を出しているのか?』
JBRは750円で買ったのだがこれで2回目の購入だった。
俺の始まりのファースト4の一つで、初めて買った4銘柄の一つだ。その時の購入価格は600円台。
700円になったので売って利益を出していた。
そして、まだ上がっていたので750円で購入。
今は790円まできている。
『当然上がっているから利益を出しているんだが…』
たまたま上がったのかも…。
いやきっとそうではない。どこかにヒントがあるはずだ。
俺は元々購入しようと思ったきっかけを思い出した。
『同じ地元だから情報が入りやすい。』
これはほとんど意味がなかった。
『コロナ渦で巣篭もりするからきっと仕事が増えているはず…』
これはその通りだ。
『巣篭もり需要』。
それはいいかもしれないな。
今の時流に逆らうよりも乗っかる事が必要だ。
なるほど…。
俺は少しヒネクレている。
人と違う事をして自慢する節がある。
この株でもそうかもしれない。
後輩が新興のマザーズ狙いをしていると聞いたから、俺は東証1部を狙いたがる。
しかし、株はそれではダメだという事か。素直さが大事か…。
ここは素直に『巣篭もり需要』銘柄を狙うのが得策か。
と思った。
この時に、株で最も大事な事を学んだ…いや気付いていた事にはまだ気がついていない。
『その会社がなぜ利益を出しているのか?』
それは様々な情勢でコロコロ変わる。
いわゆるブームともいえる。
それを経済新聞なりで情報をキャッチして常に新鮮な情報を取り入れなければいけない。
この頃は間違いなく、『巣篭もり需要』が注目されていた。
そして何と言っても元々の株価だ。
元々は1500円近辺までいっていた株だ。
それがコロナショックで落ちた。それが戻る途中なんだろう。だから自信を持って買えた。
価格…。元々の価格…。
!!
そうか!
だから俺は買えたんだ。
落ちた株だから買えた。
つまり…。
底値から上がり始めた所を拾ったのか!
俺はチャートを見る。
俺はほとんどチャートなんて見たことがなかった。
なぜなら、見ても分からないしチャートなんて見るのは邪道だと思っていた。邪道の根拠は何もない。きっとヒネクレモノだからそう思ったのだろう。
やっぱりだ!
コロナで落ちたのが3月中旬過ぎ。その時に400円台まで落ちている。俺が5月に買った時は600円台。2ヶ月で200円近く戻している。そして今は6月の終わり。株価は790円まで上がっている。
『これは見事な右肩上がりのチャートだ。』
そうか。
そういう事か。
今の時流に乗っかり、そして株価が落ちていて上がり始めた所を狙う。
これだ!
俺は早速、その二つをヒントに銘柄探しをしてみる事にした。
この時、非常に大事な事に気付いていた。例によってこの時は気付いていないが…。
『押し目買いの上昇トレンド狙い』
株のベテランでも中々難しい『上昇トレンドの入口を狙う』。
そう、それが高等テクニックだという事に当然気付いてはいない。
『これは…いいのではないか…』
俺は巣篭もり需要銘柄で、大きく落ちていた銘柄を見つけた。
後にこの銘柄は、今後株をやり続けていく事ができる大きなきっかけとなった株になる。
もし…この時にこの銘柄に出会えずに、適当に銘柄を選んで負けていたらもう株をやり続ける事は諦めていただろう。
何しろ、この時点で手持ちの資金は、95万円が60万円になっていたからだ。
気付いてはいないが、この時の銘柄選びは運命の選択でもあった。
その大事な局面という事に無意識で気付く。
そこは『地獄の住人』だった由縁だった。
伊達に長くゼロか儲けかで生きてきた訳ではない。
ギャンブラーの勘ともいえた。
その『運命の選択』で選んだ銘柄は…
『イオンモール』と『スクロール』だった。