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9話 無知の損切り。。

9話 無知の損切り。。


初めて買った株で利益を出した。

しかも4銘柄全てだ。

しかしここで自惚れるほど自信家ではない。

ギャンブル感覚が身に染み付いている俺は、勝ったという事は負ける事もあると知っているからだ。


『まあチャート全体がコロナから立ち直ってるんやな。』

としか思っていなかった。

ここで別の思考が働く。

『という事は…今は大チャンスじゃないのか…大きく勝負する時ではないのか…』

と、ギャンブラーとしての感覚がそう感じさせていた。


「しかし…記事を読むのも中々面倒やな…もっと手っ取り早いのはないかな…」

そう。誰でも直面する銘柄選びの方法だ。

何となくだが、上昇にのった銘柄を買えばいいんだ。とは思っていた。何しろ4銘柄ともそれで利益を出している。

それさえ分かれば、楽勝なんじゃないか…。

俺は相変わらず、『成功者の本』を読んではいない。


ネットで検索してみる。

!!

「あった!」

何だこれ…。銘柄が色んなランキングになっている…。

値上がりランキング、値下がりランキング、出来高ランキング…。

そして、アナリストから一般の人の株価格予想なるものも。

当然、チャートも過去の価格も見れる。

「こんな便利なサイトあるんや!」

俺は目からうろこだった。

『みんなの株式』

通称『みんかぶ』だ。


このサイトがあれば楽勝やないか。

俺は値下がりランキングなんて見ることもしないで値上がりランキングを見る。

!?

「何だ…この会社。3日連続ストップ高じゃないか…」

これは明日もストップ高いくやろ。でもどこかで止まるだろうから、その日か次の日に売ればいい。買ってすぐに売ればいける!


『デイトレ』なんて言葉は当然知らない。

感覚でこの男は感じ取っていた。

これもスロッターならではだ。

いわゆるスロッター用語で『勝ち逃げ』。または『ハイエナ』。

を仕掛けようとしていた。

その銘柄は…

『テラ』だった。


2020年6月。

このテラは200円台から一気に2000円台まで価格が上昇していた『テンバガー』銘柄だ。

当然この男に『テンバガー』なんて言葉は知らない。


ここで利益を上げた4銘柄の事が頭をよぎる。

『結局…株って持ち数じゃないのか…。あの4銘柄ももっと買ってれば大きな利益になったはずだ…』

そして、このコロナからの上昇チャート。

これは、このタイミングは俺にいけと言っている。


「いってやれ!」


俺は次の日の朝イチで『テラ』を40万円分購入した。

ここでいう朝イチとは朝の7時だ。

ちなみに『日興フロッギー』は販売所みたいなものだ。

取引所ではない。

したがって今の価格で買える訳ではない。

『前場の始値』か『後場の始値』だ。

このルールを知らないままデイトレを仕掛けようとしている。

そう。『ルールを知らない』…。



朝9時。

始まった!

俺は楽しみで仕方がなかった。 

『まあ大きく上がらなくても少しでもいいから上がったら売ってやる』

とサイトの価格を見ていた。


!!!

下がる。

下がりまくる。

え?

まだ下がる!

しかも急激に!落ちるのが速い!

「え?ちょっと待て!」

俺は誰もいない部屋で大きく叫ぶ!


『いや、動揺するな…恐らく利益を確定する人間がおるだけや。また上がる。何しろ3日連続のストップ高だったんだから…』

しかし…その心の声は無性にも届かない。

そして、ずっと下がる価格を見ながら2時間経っていた。

気付いたら11時近い。

が、まだストップ安までいってはいない。

『こうなったら昼だ。昼には上がるだろう。』


午後12時半。

『今度こそあがれ!』

内心ドキドキしながら価格を見る。

『あかん…』

いちるの望みも虚しく落ちる。

『あかんわ…売ろう』

俺はもうダメだと思った。が、まだストップ安まではいってはいない。一旦売ろう。

この時点でマイナス4万円。

どこかで負けるしな。いい勉強になったわ。

と売るボタンを押す。


!!?

『取引時間外』の表示?

『は?なんで売れない?』

何度見ても売れない!


急いで説明を見る。

売買の時間帯を調べる!

しかしいくつもあってよく分からない。

俺は慌てて日興証券のコールセンターに電話をした!

担当に出た男の人は新人ぽかった。

俺が説明しても意味が分かっていない様だ!


「だから!フロッギーで買ったのが売れないんだけど何でか!って聞いてるんだ!」

俺は苛立った。

担当は少々調べると言って電話を待機状態にする。

「分かりました!フロッギーは金株取引と言って単元で買う必要がない代わりに、売買時間が限られておりまして…。今の時間は取引時間外で、本日の16時から売買できます。」

「16時って相場は終わってるやん!じゃあいつの価格で約定するんや!?」

「え〜と…、、明日の前場の始値です。」

「は?じゃあ今は落ちるの見てるだけなん?」

俺はこれ以上担当に話しても仕方がない、怒鳴って悪かったと言って電話を切る。


「じゃあ今は見てるしかないやんか…」

俺は諦めて下がっていくテラの価格を見るしかなかった。

その日のテラの価格はストップ安。1株のマイナス500円。

マイナス95000円になってしまった。


『何だこれは…』

俺は愕然とした。


次の日。

俺はもしかして…の気持ちで何も動かなかった。

少しでもマイナスを取り返せれば…。

その思考が働く。ギャンブルも同じだ。

大体負ける時は、『少しでも取り返せれば…』だ。

しかし、そんな甘い期待は通用しない。

この日は前場でストップ安。

マイナス19万…。

俺は諦めて売るボタンを押した。


人生初の損切りは、怒りと悲しみと切なさで迎える事になった。

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