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8-防衛依頼


 コンビニで食料の調達を済ませ朝食を食べてから、すぐにログインした。


 今日は時間に取り残された公園からスタートだ。この公園は今後も何かとお世話になることだろう。


 とりあえず飯だ。リアルで朝飯を食べたばかりだというのにこっちの体も激空腹。ステータスにも影響が出ているかもしれない。しかし、数値が低すぎて確認しても意味はないだろう。


 あの牛丼屋に行く。懐が寂しいので他の飯屋を開拓する気もおきない。


 公園のある裏通りから傭兵通りに向かう。


 この霧にも少し慣れた。リアルの方に違和感を感じるくらいだ。


 牛丼屋に入り並盛を頼む。お茶がうまい。


 きたきたきた。来ました牛丼。


 300YENをテーブルに置きおかわりのお茶をお願いしつつ牛丼を食べる。


 牛丼生活から脱出できるのか…



 食べ終わった牛丼のどんぶりを眺めながらお茶を飲む。


 これから忘れていたリュックサックを買いに行って傭兵事務所だな。



 傭兵通りにリュックサックが売っていそうな店を探す。2軒目でアウトドア用品を扱っている雑貨屋を発見した。


 さっそく入ってみる。ところ狭しと商品が並んでいた。本来の目的を忘れて店内を散策する。


 固形燃料のポケットストーブが目に入った。うーん欲しい。いろんな形のコッヘルもある。野外で料理も楽しいかもしれない。


 我慢、我慢。リュックサックを探そう。



 あまり良さそうなリュックサックが見つからなかった。


 しかし、面白い水筒を見つけた。少し小さめだが水筒の蓋というか上部をコッヘルで覆うようになっている。これはコップとして使えそうだ。


 この水筒が2000YENだった。手持ちの所持金は6400YENと口座に少し。ポケットストーブは今度だな。


 次は本命のリュックサックだ。ハーネスの拡張品で良いものがあるかもしれない。


 買った水筒を持って武器屋に向かう。



 武器屋では朝早いためか客は少なくマスターがカウンターで暇そうにしていた。



「おはようございます」


「おう、早いな」


「このハーネスの拡張品で背中にリュックサックみたいなのをつけたいのですが良いものありますか?」


「ちょっと待ってろ」



 これは期待できるかも…



「こんなのがあるが、どれにする?」



 おっ、何かいろいろ出てきた。あまり大きいものはいらないしお尻というか腰の拡張品に干渉しないようなのが欲しい。



「腰にもいずれ拡張品をつけたいので干渉しなくて便利なのをお願いします」


「うーん、じゃ、これか」


「あ、いい感じです。それにします」


「2500YENだ」


「思ったより安いですね」


「作りはシンプルだし拡張品だから肩紐とかないからな。こんなもんだろ」



 2500YENを払う。懐が底冷えしそうだ。



「ほれ、自分でつけてみろ。この器具はこうして…」



 このリュックサックには器具がついていて背中の器具と合わせると装着でき、外すときもリュックサック側の器具に押し込むようなものがありそれを押せば外れるようだ。


 多少の慣れは必要だが一人でもリュックサックの付け外しができるので問題ないだろう。


 一応このリュックサックには腰側にも固定できる紐があるのだが使わなかった。付け外しが面倒になるからだ。



「それでは、また来ます。懐に春が来たら」


「春が近いといいな」



 季節自体は春なのだが俺の懐には冬が到来していた。



 これで忘れ物は… ない、かな。


 武器屋を出て裏通りの公園に向かう。忘れないうちに水筒に水を汲んでおきたい。タダで水がもらえそうなところを公園しか知らないのだ。



 公園に戻ってきた。水筒に水を汲みリュックサックにしまう。


 そして、ベンチに座り一休みした。今日はまだ始まったばかりだ。


 よし、傭兵事務所へ行こう。






 傭兵事務所に入る。


 掲示されている依頼があるらしいので、それらしいものを探す。人が数人集まっている掲示板らしきものを見つけた。横の方から静かに近づく。


 かなり大きいというか横に長い。複数の掲示板を横に並べている感じがした。


 そこには様々な依頼の用紙がピン留めされている。その中で一番緩そうな依頼を探した。常設依頼の偵察と防衛が緩そうだった。


 事前情報を入手したところで依頼窓口へ向かう。



「すみません。常設の防衛依頼を受けたいのですが」


「はい、わかりました。傭兵カードを提示してください」



 情報端末のケースから傭兵カードを取り出し渡す。


 今回応対してくれるのは傭兵登録の時とは違うお姉さんだった。傭兵事務所はお姉さん率が高い。



「どうぞ」


「はい、お借りします。防衛依頼の説明は必要ですか?」


「お願いします」


「防衛依頼の目的は指定されたランドマークへ向かい、そこに至るまでとランドマーク周辺のモンスターの排除になります」


「ランドマークですか」


「はい、そのランドマークに到着した時にランドマークの写真を情報端末で撮ります。そしてランドマーク周辺のモンスター排除後、都市に戻る前にもう一度ランドマークの写真を撮ります。依頼終了報告にはその2枚の写真が必要ですので忘れずに写真を撮ってください。依頼の報酬はランドマーク周辺の防衛を何時間行ったかで支払われます。1時間1000YENになります」



 時給1000YENか。モンスターのドロップは好きにしていいのか?



「モンスターの排除数は関係ないんですね?モンスターのドロップもこちらが貰っても良いんですね?」


「排除数は関係ありません。あくまでも時間です。それとモンスターのドロップもご自由にしてください」



 情報端末の写真は日付が入るんだな。これはテストが必要だろう。



「その時間を写真で判断するわけですね」


「はい、そうなります。写真には撮影者の名前や日付の他倍率等も同時に記録されるので撮るときは気をつけてください」


「わかりました」



 これなら初めてでもやれそうだ。開発さんを褒めたい気分だ。


 ただ、初めての土地でランドマークに辿り着けるかという問題があるが、地形を覚えるためにも迷ってでも何とかするしかない。



「傭兵カードをお返しします」



 傭兵カードをケースにしまう。



「それでは、ランドマークの説明を始めます」


「お願いします」


「シグレ様は防衛依頼は初めてということでよろしいですか?」


「はい、初めてです」



 窓口のお姉さんがノートパソコンの操作を始めた。


 Fランクしかも初めての防衛依頼者にいい感じのランドマークを選んでくれているのか?


 ノートパソコンの操作を終えたお姉さんが大きなファイルを開いてこちらに見せてくれた。



「では、今回のランドマークはこれになります」



 そこには物見櫓のような建造物の写真があった。



「これは…」


「防衛櫓08-0102です。防衛櫓の写真を撮るときはこの番号がきちんと入っていることを確認してください。この番号がないと無効になります。防衛櫓の説明は必要ですか?」


「お願いします」


「防衛櫓というのは頑丈に造られた物見櫓です。内部に魔力機関と小さい柱が設置されており周囲のモンスターを引き付けて櫓の人員で排除することを目的としています。排除が不可能な場合は防衛隊本部に連絡して脱出します」



 聞き慣れない単語が出て来たぞ。魔力機関と小さい柱か。


 魔力機関はさっぱりだが小さい柱は、都市セーブポイントと関係があるのかも。あれは確か大きい柱と呼ばれていたはずだ。



「魔力機関はさっぱりわかりませんが小さい柱は、都市セーブポイントと関係ありますか?」


「魔力機関の説明はここではしませんが周囲のモンスターを引き付ける物とお考え下さい。小さい柱は、都市セーブポイントの小さいものです。霧の中で情報端末による通信をするために設置されています」



 魔力機関はモンスターを引き付けるものなのか。霧の中でむやみやたらとモンスターを探すより逆におびき出して倒すことにしたわけだ。


 霧での視界が100メートルくらいとして、それより遠くからモンスターを集めることができるならかなり効果的と思える。



「説明ありがとうございます。場所はどの辺りでしょうか?」


「初めてだとわかりにくいかもしれません。簡単な地図を写真に撮ったものがありますので、そちらに転送します。情報端末を出してください」


「どうぞ」



 情報端末を窓口に置くとお姉さんがノートパソコンを操作した。情報端末の画面には何かが送られてくるアニメーションが表示される。



「地図の写真を転送しました。写真アプリを起動して確認してください」


「はい」



 写真アプリを起動して写真を確認する。紙の地図を写真で撮ったものなのだろう。情報端末のカメラをスキャナがわりに使っているようだ。



「防衛櫓周辺のモンスターを排除する際の注意点を説明します。防衛櫓周辺100メートル内でのモンスタードロップは誰が排除しても防衛櫓、防衛隊に所有権があります。ですので防衛依頼の防衛は防衛櫓より100メートル以上離れたところのモンスターを排除することになります。決して防衛櫓の兵士ともめないようにしてください」


「はい、気を付けます。それでこの防衛櫓周辺のモンスターはどんなのが出ますか?」


「今まで確認されたモンスターはウルフとゴブリンです。現れる数も多くないそうです。もしそれ以外のモンスターを見かけましたら写真を撮っていただけると助かります」


「わかりました。他に注意することとかありますか?」


「これは、ご存知かと思いますが都市の外では情報端末にイヤホンをさして常にグローバルチャンネルでの通信を受けられるようにしてください。そして防衛隊の呼びかけにはきちんと応えるようにしてください」


「はい、わかりました」


「こちらからは以上となります。この依頼は失敗しても傭兵ランク、査定等にマイナスにはなりませんが都市に戻った時に終了報告はしてください。それではお気をつけて」


「では、行ってきます」



 覚えることが多くないですか?お姉さんの言葉を反芻しながら傭兵事務所をあとにする。


 これは知恵熱が出そうだ。ひょっとすると能力の【知力】が上がったりして…



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