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76-阿修羅


「この生姜焼き、うめぇ」



 実験棟の休憩室で用意してくれた食事、生姜焼き定食を食べていた。


 お新香や味噌汁、キャベツ、トマトに至るまで全てが美味しかった。ついでにお茶も美味い。


 アズマさんが言うには社員食堂のメニューらしい。社食がテイクアウトできるとか。麒麟沼の居心地の良さはこういうところも関係しているのかもしれない。いや、関係してるだろ。これ。


 これは、おにぎりを買い忘れて正解だった。忘れるべく忘れたということだろう。ありがとうございます。何かの神様。そして、ごめん、露店のおばちゃん。


 生姜焼き定食ライス大盛を軽く平らげ最後にお茶を味わう。



「お茶が美味い」


「シグレ君、お茶が美味いって。それ、ただのどこにでもある会社のお茶だけど。銃なんかよりお茶の方が良かったのかな?」



 アズマさんだった。実験開始のお知らせだろう。



「お茶もいいですけど、銃の方がいいです。あれがないと傭兵稼業に支障をきたしますから」


「そうだろうね。私も苦労した甲斐があったよ」



 アズマさんの苦労がわからない。いったい何に苦労したというのか?



「アズマさんはどんな苦労をしたんですか?」


「秘密だよ。さぁ実験を開始しようか」


(研究の息抜きのつもりでシグレ君を探していたら。あんな状況で見つけることができるとは。運命だね)



 残りのお茶を飲み干し、忘れ物がないか見回すも持ち物はアズマさんのブースなのを思い出しそのまま何食わぬ顔でアズマさんを追いかける。



「シグレ君?」


「ちゃんと、いますよ」



 アズマさんが休憩室を出た。続いて俺も休憩室を出る。後片付けとか大丈夫だろうか?


 休憩室を出ると一転して広々とした空間だ。ここは、広い一つの空間を様々な壁で仕切り様々な実験区画をつくり出しているようだ。この壁は天井まで届いていない。届いているのは外側の壁だけだ。


 天井はかなり高い位置に存在していた。そしてガラス張りの通路のようなものがぶらさがっている。


 そして、実験区画の中にも小さい壁で仕切られた部屋がいくつもあり休憩室もその一つだった。個々の区画や部屋には天井はなく上を見上げると、ガラス張りの通路が灯りの中で自己主張していた。


 アズマさんが普通に歩いている少し後ろを歩く。ここでもアズマさんは人気者で挨拶や会釈がたくさん飛んでくる。


 しかし、俺に気づくと素知らぬ顔をして通り過ぎていった。微妙に気まずい。


 俺の場違い感が極まっていた。



「あのう、アズマさん」


「なんだい」


「俺も実験用の服とかに着替えた方がいいんじゃないでしょうか?」


「うーん、別にそれでも問題ないと思うよ。一目で傭兵だってわかるし。それに実験の内容に服の形は絡んでこないからね」



 そう、じゃあ、ないんだけど。



「それはそうなんでしょうけど。目立ってますよね?俺」


「そうだね。ここは結構厳重なところだからね。そういう格好の人間が入ってくることは珍しいかな」



 ほら、やっぱり。そこを気遣って欲しいんだけど。



「だったら、ほら。目立たないようにとか」


「いやいや、悪いことをしているわけじゃないんだから。堂々としてればいいんだよ。むしろ、ここで変装のようなことをすると余計に怪しまれる」


「そう言われれば、そうなのかもしれませんが。結構見られてますよね」


「いやぁ、私も人気者と実験できるなんて光栄だよ」


「そういうのは、いいですって」



 そんな話をしながらも速度を変えずにアズマさんはスイスイ進んでいき、休憩室よりは大きそうな部屋の前に着いた。



「着いたよ、シグレ君。ここが君と私の憩いの場所だよ」


「はい、はい。視線が厳しいので早く中に入ってください」


「そうかい、冷たいねぇ」



 そう言ってアズマさんは扉を開けて部屋の中に入っていった。俺も逃げるように部屋に入る。


 よし、これであの視線から開放―



「みんな、集まって。奥の方も呼んであげて。私のお気に入りを紹介するよ」



 されなかった。ここにもそこそこの人がいて、目を輝かせて視線を俺に向けていた。



「アズマさん、この人が文句も言わずに水を押し続けた伝説の傭兵ですか?」



 伝説のされかたが悲しい。



「そうだよ。みんな集まったかい。ここにいるのが前にも話した。水押し名人二代目でアナザーのシグレ君だ。はい、拍手」



 謎の歓声が飛んだ。拍手の必要性が理解できない。さっきより気まずくなっている気もする。その上、水押し名人になっていた。帰りたい。



「コニシさん以外であれをやる人が現れるとは… プッ」


「これで部長も浮かばれるな… プッ」


「っていうかアナザーでは、この人だけですね… プッ」



 どうやら、水を押すことは良いことではないようだ。だろうな。くっそ。



「シグレ君も何か言ってあげて」



 こんな状況で何を言えば…



「アナザーの傭兵シグレです。お手柔らかにお願いします」


「「「喋った」」」



 アナザーでも喋るんですよ。



「それじゃ、みんな戻って戻って。シグレ君はこっちに。やっと今日の実験だ。長かったね」


「そうですね」



 いつの間にか移動していたアズマさんのところに向かうと懐かしいものを手渡された。


 それを頭につける。少し前の方だったな。それにしても久しぶりだ。もう、これをつけることはないと思っていたのに。



「つけたみたいだね。位置も問題ない。じゃ、動かしてみて」



 また、いきなりだな。


 今回も、前回と同じで大きなフレームに人間の右腕の形をした機械の腕がついていた。前回のおさらいなのだろう。


 装甲歩兵全体を結構自由に動かせるようになった現在、片腕を動かすことは難しいことではなかった。



「あれ?小指が動かないですね」


「シグレ君、よく見て」



 フレームに取り付けられた機械の右腕をよく見る。間違い探しが始まると思ったがおかしなところは、すぐにわかった。



「これ、指が多いんですね。小指の外にもう一つ指があります」


「そうなんだよ。これを動かして欲しいんだ」



 6本目の指なんて想像がつかない。しかし、2本目の腕を動かせているのだから動きそうなものなのだが。


 うーん、いろいろイメージしてみても、何かリンクしない。2本目の腕はしっくりくるのに6本目の指はどこか違和感が。


 たぶん、動かないからそう思うんだろうな。動いてしまえばしっくりくるのだろう。



「アズマさん、これ動かした人はどういうイメージで動かしたんですか?ヒントとか欲しいんですけど」


「うん?動かせた人はいないよ。私も無理だったし。部内の人間も無理だね。だから君を探していたんだよ。シグレ君なら何とかするかなぁって」


「えええええ」


「これは装甲歩兵技術発展のためには必要なことなんだよ」



 必要なことなのかもしれないが、話を大きくしないで欲しい。技術の発展とか言われてもプレッシャーが大きくなるだけで役に立たないばかりかマイナスだ。俺はヒントが欲しい。ヒント、ヒント。


 何度唸ってみても動かない。何かイメージが通り抜けていっているというか何にも引っかかる気がしないというか。



「アズマさん、これって魔力シリンダーの集合を腕として制御している装置があるんですよね?」


(おっ、シグレ君から踏み込んだ質問が来た。これはアナザーの知識を披露してもらえるのかな)


「そうだよ。それが―」


「この増やした指は、その制御装置にはどういう風に見えているんですか?」


「どういう風にって」


「俺にはアズマさんを怒らせるとかそういう意図は全くありません。純粋に疑問に思ったから質問するんですけど。これって指だけ増やして、その制御装置には何もしてないってことはないですよね?」


「ああ、そういうことね。シグレ君、こっちに来て見てみるかい?」



 おおお、見せてもらえるのか。言ってみるもんだな。



「え?大丈夫なんですか?見たら後で殺されるとかありませんよね?」


「君は恐ろしいことを考えるね。傭兵ってみんなそうなのかい?ま、シグレ君の口が堅いことを信じてるよ。殺さなくても永遠に会えなくする方法はあるから」



 こわっ。だから、知らなくてもいいことは知りたくないんだけど。今回は実験が進まないからしょうがないか。



「それじゃ、関係していそうなところだけを見せてくださいよ。余計なものは極力見せないようにお願いします」


「注文が多いね。そういうの面倒だから見るなら早く見て」



 アズマさん、雑だな。そのしわ寄せがこっちにくるんだよなぁ。


 アズマさんが覗いているノートパソコンの画面を横から見せてもらう。


 画面には制御装置が認識している魔力シリンダーが右腕の形に集められて表示されていた。ビジュアル的に制御系を設定できるアプリケーションなのだろう。


 腕が稼働単位にグループ分けされている。問題は手グループの中、グループごと赤く表示されている指グループがあった。絵的にはきちんと手と接続されていない指が仲間外れみたいに寂しく表示されている。



「アズマさん、この赤いのは何でしょうか?それにきちんと手に接続されていないような」


「それなんだよ。私もいろいろやってみたし、他の子達にもやってもらったんだけどうまくいかなくてね。これが正常でないことはわかるんだけど、アクティベートボタンは押せるから何とかなるのかなっと思って」


「ちょっと、アクティベートしてもらえますか」


「それじゃ、いくよ。ポチ」



 だから、”ポチっとな”でしょ?


 画面では何の警告やエラーもなしに正常終了したように見えた。しかし、問題の指は仲間外れのままだ。不親切なアプリケーションってヤツだった。これをつくったのは誰だか知らないけど、もう少しエラー処理をきちんとして欲しかった。



(いやいやいや、そんなおかしな設定しないから。だって人間の指は普通5本でしょ?そこにつくわけないじゃん。初めて見たよ。シグレがいなきゃ気づかなかったな。この子達はかなり無茶なことを手当たり次第に試しているようだね)


「普通にアクティベートされたように見えますけど。表示は赤いままですね」


「そう見えるよね。でも、これがダメなのか。やっぱりダメだったか。たまに赤いままでも何とかなることがあったんだよね」


「いや、赤い表示は何とかしてくださいよ。何とかなることがあるって、そっちの方が怖いです」


「うーん、だとすると今日の実験は終了かな。これ前提で実験機材を用意しちゃったから」



 アズマさん達は、こうやって手探り状態でアナザーの技術を使えるようにしていってるんだろうな。このアプリケーションは不親切でヘルプやマニュアルみたいなのもないようだ。知識のある人が設定だけするものみたいだ。



(そういうの必要なかったし、知識のある者が設定さえできれば良かったものだからね。僕のせいじゃないから)


「先に言っておきますけど、アズマさんを怒らせる気はありませんから」


「シグレ君、それはもういいって。そういうのいちいち面倒だよね」


「言っておかないとギャラリーの目もありますし、アズマさんとの付き合いが長いわけでもないので、どれくらいで怒られるとかわからないんですよ」


「ギャラリーは無視してくれていいよ。後で水でも押してもらおうかな―」



 いつの間にか周りに集まっていた部屋の人達がスーっと波が引くようにいなくなる。



「それで、シグレ君が実験について真面目に意見してくれているなら怒らないから大丈夫だよ。でも、口を滑らせないでね」



 だから、それが怖いから言ってるんでしょ。俺は口を滑らせて何度も死にかけているんです。



「また、難しいですね。それは気を付けるとして。俺が聞きたいのは、そもそも何のために指を増やしているかということです」



 ノートパソコンを見つめていたアズマさんが立ち上がる。


 今のにはまずい言葉はなかったと思うのだが。



「あぁ、それね。やっぱり、その説明はあった方がいいんだね。いや、長くなるからシグレ君が嫌がると思って省いたんだけど。それが仇になったようだね」


「仇とまでは… ただ、理由によっては別の解決方法があるかもしれませんし」


「そうだね。話、長くなるよ。いいんだね」


「いえ、話は短くお願いします」


「我儘だね。ま、いいけど。シグレ君は、装甲歩兵の武器は何だと思う?」



 そこから?短くする気は全くないな。



「えーと、この手の大きさだと人間のは無理だから。専用の銃、ですか?」


「うーん、まぁ、半分正解かな。近接武器は人間用のものも使えるね。まぁ、専用の剣を用意してるけど」



 やはり、剣ねぇ。あの腕力ならそれもありなんだろうな。相手はモンスターだし。



「銃は使わないんですか?」


「銃は人間用が完全に無理だから、大きくしてトリガーを引きやすくしたのを用意してみたんだけど不評でね」


「不評なんですか」


「誰かさんみたいに常に銃を持ち歩くわけじゃないんだ。人間はホルスターや肩にさげたりとかするだろ?」



 俺だってホルスターくらい使います。対物ライフルだけは仕方ないんです。



「誰でしょうね」


「思念操作で壊さないように銃を握り続けるのは難しいんだ。思念フィードバックも個人差があるし。現在、装甲歩兵で銃を使っている者はかなりの熟練で数も少ない。銃の方も人間用とは結構違うんだ」



 ロマンだけでは語れない苦労があるようだ。近接武器の場合は構造も単純だからずっと持ち歩くにしても柄の部分の強度を上げれば問題ないんだろう。


 専用の剣は鞘とかもなくて刃引きもされていない重量で殴るようなものなんだろうなぁ。それはそれでかっこよさそうだ。



「銃の場合、セーフティーとかも大変そうですね」


「そうなんだよ。それに装甲歩兵の構造上、両手で銃や剣を使うということもできないんだ」



 装甲歩兵の腕が自分の体にぶつかったりするんだろうな。ロマンがどんどん崩れていく。



「オリジナルは、その辺りどうしていたんですか?」


「そう、そこでオリジナルなんだよ。オリジナルは武器、特に銃は腕に内蔵していたんだ」



 おおおお、腕に内蔵かぁ。崩れかけていたロマンが…



「内蔵とは、かっこいいですね」


「かっこいいことは良いことだとは思うんだけど問題があって、その内蔵している銃のトリガーやコッキング等、銃に必要な操作をどうやってしていたのかがわからないんだ」


「動くオリジナルってあるとか言ってませんでしたか?」


「記憶力いいね、シグレ君。でもね、動くオリジナルに限って遠距離戦闘用じゃないというか銃を内蔵していなかったんだ。だいたい、参考になる機体があれば、こんなことやってないんだよ」



 ですよねー。現実的な問題がいろいろと… あっ、そういうことか。



「だんだん、わかってきました。アズマさんがやろうとしていることが」


「察しがいいね。要は思念操作で操作できるものを増やして、その増やしたもので内蔵した銃や他に必要な操作ができないかと模索しているんだ」


「だから、指を増やしていたと」



 いつの間にか、また、周りに人が集まってきていた。



「そうだね。銃を内蔵することは私達でもできるからね。問題は操作なんだよ」



 うーん、そうだろうな。右手の銃を左手を使っての操作は構造上難しいんだろうな。今、それができている銃はかなりおかしな形をしていそうだ。想像できないけど。



「増やす操作を指にこだわるのであれば腕ごと増やせばいいんじゃないでしょうか?」


「え?シグレ君、それはどういう―」


「え?どういうって、今イメージで2本目の右腕なり左腕を動かしている、その腕を増やすんですよ。制御上だけ」



 周囲の人達も皆首を捻っている。あれ?そんなに難しいこと言ったかな。



「人間って腕、左と右で2本しかないのでは」



 6本目の指をつくっていた人が何を今更。



「そうですけど、思念操作で動かす場合は自分の腕とは、違う腕をイメージしているわけで。そこが増えても問題ないのでは」


「それだと、自分がイメージした腕と実際動かす腕の対応が難しくないかい?」


「それこそ、制御装置がうまくやってくれるのでは。もし、ダメなら複座の装甲歩兵をつくって一人が武装操作専門にするとか…」


「複座、複座の装甲歩兵なんて考えたことなかったよ。オリジナルに複座なんてなかったからね。おお、インスピレーションが湧いてきた」


「本当の問題は腕を制御している装置が4本や6本の腕を制御できるか?ですけど。それが無理なら制御装置を複数積めば何とかなったりするのでは」


「力技だね。そうか、増やすところを間違っていたのかもしれない。私は」



 アズマさんが真剣な表情でノートパソコンを見つめていた。



「ちょっと試してみたいんですけど。これって俺が操作できますか?」


「あ、それは無理だから私がやるよ。どうするんだい」


「新しい右腕のグループをつくるか、複製してください。新しいグループをつくったのなら、増やした魔力シリンダー郡、さっきの6本目の指です。それを操作したい指のグループに追加してください。複製したのなら操作したい指のグループだけにしてください」



 アズマさんが巧みにノートパソコンを操作している。マウスがあればもっと楽なんだろうけど、どうやらないらしい。


 ただ、最初からそんなものがなかったアズマさんは、全然気にしていなさそうだ。ノートパソコンのキーボード下辺り大きめのタッチパッドの上をアズマさんの指が縦横無尽に動いている。



「できたよ、シグレ君。あとはこの小指しかない腕をどうやって登録するかだけど、左腕じゃ意味ないんだよね?」


「そうですね。新しい右腕を追加みたいなこと、できませんか?」


「普通はここを左とかにすればきちんと登録されるんだけど。ただ、こんな不完全な状態で登録したことはないから、左でもダメかもね」


「アズマさん、ここの数値を1から2にしてみれば」


「え?シグレ君、この数値が何だかわかるの?」


「いえ、わかりません。だいたい、横の項目名みたいなのが”#”だけですからね」


「あまりに意味がわからないから、そのままにしてたけど爆発とかしたりしないよね?」


「それはわかりません。実験なんですから爆発してみるとか?」


「そうだね。爆発したらそれはそれでシグレ君を麒麟に縛り続けることができるから。むしろ爆発した方がいいのか。これ高いからね」



 しまった。いやいやいや、でも、いくら何でも爆発はないだろう。それに、どれが爆発するかもわからない。どれが高いのか?



(あれ?あの数値って何だっけ?誰だよフィールド名”#”だけにしたのは。まさか、腕を増やせるようにしたんだっけ?あああああ、強そうだからって理由で何となく増やせるようにしたんだった)


「それで、うまくいきましたか?」


「とりあえず、赤いところはなくなったようだよ。指一つ分しか魔力シリンダーは存在しないのに不思議だね」


「じゃ、これでやってみましょうか」



 まず、普通に手を動かすイメージをしてみる。まぁ、これは問題ないだろう。



「さっきと変わらないね、シグレ君」


「今のは、確認です。これから増やした指を動かしてみます」



 問題はこれからだ。しかし、ぬかりはない。


 なぜなら、俺は最初から阿修羅像をイメージしていたからだ。阿修羅さんの腕は左右3本ずつだから片腕3本までならイメージしやすいはずだ。


 まず1本目、これは自分の腕だからスルーする。


 2本目は、さっきまで動かしていた腕だからスルーする。


 そして3本目、ここに指を動かすイメージを送る。小指だ。


 自分でも何をやっているかわからないが、これでいいはずだ。あとは制御装置を信じよう。惑わされないよう機械の腕に背を向ける。


 イメージを送る。イメージを送る。イメージを送る。



 すると、周りから一斉に歓声が上がった。どうやら成功したようだ。



「シグレ君!!」



 アズマさんの顔が無駄に近い。女性なら喜んだのになぁ。そこはアマノさんとチェンジとかしてくれないかな。それとか、そこの女性研究員みたいな人でもOKです。



「動きましたか」


「いやぁ、シグレ君。苦労して銃を用意した甲斐があったみたいだ。自分の選択がこんなに正しかったとは。今、もの凄く自分を褒めたい。褒め倒したい」


「「「おめでとうございます、アズマさん」」」



 えーと、俺は褒められないの?か、な。



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