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48-宝箱


 結局3階には宝箱はなかった。4階の階段を上がる。このビルは階段を上がったところが一番明るく通路を曲がるたびに暗くなっていくようだ。


 階段を上がる直前になると前を歩く二人の距離が短くなっている気がする。特にマユミさんとの距離が。


 4階は3階までとは違っていた。通路のいたるところに骨が転がっている。ゴブリンの骨なのだろうか?少し小さく見えた。


 【気配察知】のスキルにも反応はない。遠くのものはわからないが。



「骨、ですね」


「骨、ね」


「骨」


「えーと、僕も。骨にしか見えません」


「っていうことは」


「来るわね」


「来ます」


「何が?」


「問題は…」


「ダミーね」


「全部がただの骨だったら疲れるだけです」


「もう疲れてますけど」


「どうします?」


「誰かに通路の角まで走って往復してもらいましょうか?」


「本物が反応してくれるかもしれませんね」


「あそこまで走ると、とても疲れると思います。師匠、走る役は重大です。本物が何かわかりませんけど」


「それじゃ、公平にジャンケンで決めましょうか。シモン君はジャンケン知ってる?」


「なぜ、僕だけに聞くんですか?知ってるに決まってるでしょ。グーでパーを苦しめるアレでしょ?」


「それ、それ。なら、問題ないね。ちなみに史実ではパーがグーに勝ってるね」


「ええ、それでいいわ」


「いつでもOKです、シグレさん」


「じゃ、いくよ。最初はグー」


「グー」


「グー」


(みんながグーなので、僕は)


「パー」


「はい、走る役はシモン君に決まり。ジャンケン考えた人は頭いいね」


「シモン、頑張ってね」


「往復を走ると結構な距離になるので命懸けで頑張ってください」


「え?僕、勝ちましたよね?」


「そうだね。ルール違反だけど、大役を勝ち取ったね。頑張って。走る前には声をかけてね」


「ルール違反だけど、勝ちは勝ちね。もう、走っていいわよ。みんな銃を構えて、シグレ弱点とかわかる?」


「本物を見てみないと。今は何とも」


「やっぱり」


「シモン君、本気で走らないと後悔しますよ。行きより帰りに注意してください」


「シモン君の運動神経なら大丈夫でしょう」


「師匠、ホントに僕が走るんですか?話を聞いてると死にそうなんですが」


「それは、ちゃんと話を聞いていないからだよ。死なないアドバイスがあったでしょう」


「そ、そんなぁ」


「シモン、男ならグズグズ言わない。早く行く」


「わかりました。死んだら骨は拾ってくださいよ」


「うん、シモン君の骨だと判別できたら拾っておくよ。さぁ」



 シモン君は観念したのかアップを始めた。体を伸ばしているようだ。シモン君の荷物を邪魔にならないところへ運んでおく。



「それでは、行きます」



 そう言ってシモン君が通路の角を目指して走り出した。まさに一目散だ。


 シモン君が走ると近くの骨が動き出した。周辺の大小の骨が集まり人の形を形成していく。


 そして、俺の近くの人の形をした骨が【気配察知】に反応があった。モヤモヤする。どうやら、床に転がっている状態は【気配察知】をくぐり抜けることができるようだ。【気配察知】先生危うし。



「やっぱり、スケルトンですね」


「少し小さいわね。ゴブリンスケルトンってところかしら」


「ゴブスケです。ゴブスケ」



 イントネーションを何とかして、アオイちゃん。あれは、そんなかわいくないから。



「シグレ、弱点は?頭蓋骨がないスケルトンもいるわよ」


「うーん。わかりませんねぇ」


「わかりませんねぇ。じゃ、ないでしょ。スキルあったでしょ?早く」


「シグレさん、銃で狙ってみれば?」


「アオイちゃん、それかも。ありがとう。やってみる」



 試しにハンドガンをホルスターから抜いて頭蓋骨のないスケルトンをザックリと狙ってみた。


 すると、頭の中に何となくだが今までになかった知識が急に浮かんでくる。意識してみると面白いな。これまでは無意識にやっていたのか。


 標的を変えて頭蓋骨があるスケルトンを狙ってみた。



「おお、何か面白いぞ。いきなり知識が…」


「一人で楽しんでないで教えなさい」


「シグレさん」


「わかってます。頭蓋骨があるものは頭蓋骨でいいみたいです。ないものは骨盤の中心の骨みたいです。名前は… 出てこない。うん?」


「じゃ、骨盤の中心ね。アオイちゃん、わかった?」


「はい、中心の脊髄の終着点みたいな骨ですね。わかりました」



 そして、シモン君は通路の角にわざわざタッチして帰り道を叫びながら走っていた。



「なんですか。あれ。なんですか。これ。なんですか。それ」



 よく走りながら喋れるな。舌噛むぞ。



「スケルトンをかたづけるわよ。シグレは遠くを。アオイちゃんは近く。私はその間をやるわ。いい?」


「了解です」「わかりました」


「撃って!」



 マユミさんとアオイちゃんがスケルトンに向かって撃ち始めた。俺の担当は遠距離の2匹だ。


 しゃがんで対物ライフルに弾を装填し、面白い顔をして走っているシモン君の横のスケルトンを標的にする。狙う場所は骨盤の中心だ。トリガーをゆっくりと引いた。


 少しずれたがスケルトンの骨盤に命中した弾は周辺の骨も巻き込んで吹き飛ばし霧へと変わる。


 次弾を用意しながら、次の標的に対物ライフルを向けて弾を装填した。


 骨盤の中心を狙い対物ライフルを調整してトリガーを引き、次弾を装填する。


 シモン君はこちらに戻ってきて息を整えていた。



「それじゃ、僕もあの骨を」


「マユミさん、終わりましたね」


「ええ、ドロップの回収をしましょう。それぞれ自分が倒したスケルトンのドロップを探してね。よろしく」


「了解です」「わかりました」


「隊長、僕の骨は?」


「あなたの体の中でしょ?」



 自分の体を眺めているシモン君を置いてみんなでドロップの回収を始めた。


 自分で倒したスケルトンの位置を思い出しながら歩く。


 お、マテリアルじゃん。小さな宝石の横に黒い物体が。黒い方が価値が高いんだよなぁ。


 そして、もう一つの場所を思い出す。こっちは魔石のみっと。


 魔石2個とマテリアル1個を持ってアオイちゃんのもとへ行く。


 みんなが集まっているようだ。俺だけ距離が遠いから仕方ない。



「シグレさん、どうでしたか?」


「はい、アオイちゃん。魔石2個とマテリアル1個」


「ホクホクですね。全部で魔石8個とマテリアル1個になりました」


「それじゃ、進むわよ」



 通路の角を曲がると、その先も骨が散らばる似たような光景だった。



「また、走るんですね。それじゃ、行きますよ」


「待ちなさいって」



 肩を掴むでもなく手を引っ張るでもなく足を出す、マユミさん。それにひっかかりこける、シモン君。


 そして、それに反応して起き上がるスケルトン。そのスケルトンをアサルトライフルを持ったまま蹴り倒す、マユミさん。どこにつっこめばいいのか?とりあえず…



「お疲れ様。魔石1個ですね」



 魔石をアオイちゃんに渡す。



「そのようね。それと、だいたいスケルトンの倒し方もわかったし全部のスケルトンを反応させるのも弾の無駄だから。普通に進んで反応したスケルトンを私とシモンで倒すわ。それでいいわね?」


「了解です」「わかりました」


「隊長、了解であります」



 それから陣形が少し変わり、前がマユミさんとシモン君。後ろがアオイちゃんと俺になった。新鮮な光景だ。


 前衛が近接戦闘種族だととても捗る。マユミさんの蹴りは軽そうだが威力はあるらしくスケルトンがどんどん霧散していく。


 シモン君も負けていない。スケルトンに刺突攻撃は有効ではないのがファンタジーの通説なのだが、弱点は例外なのかシモン君の銃剣攻撃がおかしいのか、スケルトンは霧散していった。


 中央の部屋は宝箱があるかどうかを部屋に入らず確認していった。


 そうして通路を進み角を曲がりを繰り返して階段のあるはずの場所まで来た。この間の戦闘で魔石25個とマテリアル3個がアオイちゃんのリュックサックに追加されていた。ホクホクだ。湯気が見える気さえする。


 そして、この行き止まりである。叩いてもびくともしない壁だけがそこにあった。



「もう終わり?宝箱は?シグレ、宝箱」


「いや、俺に聞かれてもないものはないのでは」


「アオイちゃん?」


「勘の女神様は沈黙したままです」



 シモン君が熱心に壁を調べているが何もなさそうだ。



「しょうがないわね。帰りましょうか」


「隊長、帰りはきちんと部屋に入って調べてはどうでしょうか?」


「そ、そうね。部屋に入らずに宝箱だけを探していたのが問題だったかもしれないわね」



 行き止まりから4階の部屋をきちんと探索することになった。時間は16時半を過ぎている。ダンジョンから出るときには暗くなっているだろう。


 一つ目の部屋に入る。家具とかがあるわけでもない殺風景な部屋だ。水溜まりすらない。



「何もありませんね」


「ありません」


「そうね。次行くわよ」



 二つ目の部屋に入る。家具とかもないさっきと同じ部屋― うん?



「隊長、梯子を発見しました」


「こんなところに、せこいわね」


「せこいです。シグレさん、心当たりは?」


「どうして俺に聞くの?これは、立派な灯台下暗し戦法でしょ?せこくはありません。盲点をついているだけです」



 部屋の入口の傍の壁に申し訳程度の梯子がついていた。部屋に入ればすぐにわかるのに、せこい。



「それじゃ、シグレが先に上がって」


「俺ですか?こういう時はシモン君が」


「シグレさん、まず弟子に手本を見せてあげてください」


「わかりました。どうせ何を言っても無駄なんでしょう」


「師匠、僕が先にいきま―」


「シモンは黙ってて。甘やかすとためにならないわ」



 甘えてねぇしぃ。なぜ、こういう時は俺なのか?不思議でしょうがない。基準がわからん。


 ここで時間を消費しても無駄だ。さっさと上に行こう。


 対物ライフルを左手に持って、右手と両足だけで梯子を登る。


 どうやら、上は屋上のようだ。5階になるというのに、まず目に入ったのが木だった。とても背の高い木ですこと。


 辺りを慎重に見回す。真っ平な屋上の中心に箱のようなものが一つだけ存在していた。マユミさんが喜びそうな箱だ。



「マユミさん、箱がありますよ」


「今、行くわよ。開けたら、殺す。わ」



 こわっ!今のは本気だ。声のトーンが違っていた。


 まがりなりにも一緒にゲームをしている人間には言わないセリフが普通に出てきた。素直に言うことを聞いておこう。


 マユミさんが上がってきた。そして、アオイちゃん。最後にシモン君だ。



「あれね」


「あれです」


「あれが」


「あれ?」



 あれです。全員で近づいていく。


 ファンタジーのゲームでよく見る宝箱だ。角とかを鉄で補強してある誰もが思い浮かべる木の箱が鎮座していた。


 目の前の宝箱の補強部分は銅かな。鉄ではないようだ。



「まずは、罠ね。シモン、罠とか判別できる?」


「隊長できません。そういうのは小さい姉さんの担当でした」



 姉弟でプレイしているのか。仲がいいことで。



「そう?じゃ、その姉さんを紹介しなさい。あなたと交代でもいいわよ」


「師匠、隊長がひどい」


「隊長は素直になれない病気だから、安静にしてやって」


「シグレ!」


「アオイちゃん、女神様は何か言ってる?」


「アレが罠です。罠そのものです」


「そっちね」


「そっちかぁ」


「どっちです?」



 マユミさんがゆっくりと俺の方向に振り向く。



「なら、シグレ。殺って」


「いいんですか?」


「いいでしょ。私がいいって言ってるんだから」


「わかりました。マジックアイテムの欠片が出てきても怒らないでくださいよ」


「いや、それは怒るでしょ。普通」



 はい、はい、超理論、超理論。もう、ひも理論も足すか…


 距離を取って対物ライフルを地面に置いて伏せる。伏射で偽りの宝箱を撃ってみることにした。気分の問題だ。


 みんなが俺の後ろで高見の見物をしているようだ。どうせ、怒られるのは俺だからな。気楽なもんだ。


 しかし、変だった。この宝箱がモンスターなら【気配察知】先生が反応するはずだが、反応はしていない。【気配察知】のスキルの説明を思い出してみる。



”20メートル以内の生物の存在を知ることができる”



 アオイちゃんの女神様を信じるなら、今の宝箱の状態は生物ではないことになる。が、これも、さっきのスケルトンと同じかもしれない。ただ、スケルトン自体が生物かどうか疑わしい。


 でも、俺にはもう一人先生がいる。【心眼】先生だ。


 宝箱をザックリと狙うと弱点の知識が何となく浮かぶ。箱の中に核のようなものがあるらしいのだが詳細な位置まではわからない。今のスキルレベルでは、こんなものなのだろう。


 あ、これも、問題だ。確かに弱点は何となくだがわかる。しかし、弱点がわかれば、それでモンスターであることが決定するわけではない。でもでも、普通宝箱の弱点が核であるはずがない。鍵とか蝶番とか言われれば、そこそこしっくりくる。



「何をしてるの?早く撃ちなさい」


「あ、はい」



 もう、いいや。宝箱の鍵穴を垂直に撃ち抜く感じに位置を調整した。鍵を入れる感じで弾をドーーーーーンと入れてみよう。



「それじゃ、撃ちますよ。怒らないでくださいよ」


「大丈夫、やさしく怒ってあげるから」



 だったら、怒らないで。


 宝箱の方を向いてゆっくりとトリガーを引く。



「南無三」



 マズルフラッシュが光ったと思うと宝箱は霧散して消えた。霧散したということはモンスターだったのだろう。モンスターらしいところを何一つ見れなかったが。


 あっ、写真を撮っておけば良かった… でも、スライムと同じで信じてもらえない写真が増えるだけか。


 などと考えながらも無意識のうちに腰のバッグから次弾を取り出していた。もったいないので装填する。



「センパイ、霧散しましたね。モンスターでした」


「そうね。間抜けな隊員が食べられずに済んで安心したわ。ドロップを確認するわよ」


「はい」


「あのぅ、マユミさん。怒らないんですね」


「それは、これからのお楽しみよ」



 全く楽しくない。



「師匠、あんなモンスター初めて見ました。傭兵っていいですね」



 だから、仕草ぁ。シモン君は、男。男。


 全員で宝箱があったところに行き辺りを調べる。



「センパイ、魔石がとても大きいです」


「そうね。それに、マテリアルが3個も大漁よ」



 くっそ。出遅れた。誰のせいだ。俺も何か見つけたい。



「隊長、凄いものを見つけました。チップです」


「「「チップ?」」」



 三人で首をかしげる。なぜ、シモン君はそんなことを知っているのか?既に他のグループはこんなものも見つけていたというのか。


 魔石とマテリアル以外のドロップが存在するとは思わなかった。



「シモン、何、チップ?」


「隊長、これにはマテリアルでつくることができる何かの設計図が入っていることが多いんです。何の設計図かは情報端末でわかります」



 おおお。シモン君が輝いて見える。今日一番の明るさだ。眩しい。



「隊長、まず情報端末を出してください」


「わ、わかったわ」



 マユミさんがシモン君の言われるがままに情報端末を取り出した。



「それで、これを近づけてと。外部記憶っていう名前のアイコンがあるので、それをタップしてください」


「外部記憶、外部記憶。チップは記憶媒体なのね。あったわ、これね」



 マユミさんの情報端末を横から覗き込む。アオイちゃんとマユミさんに自然に近づいているぞ。ドフフフフフ。



「そこにCHIPの横に数字がついた文字列が表示されるので、それをタップしてください。それです、それ。すると、簡単な概要が表示される。はずです。僕もチップを触るのは初めてで」


「こうね。何か表示されたわ。これは… シグレ。ってどこを見てるの?これはアレよね?」



 ちっ。



「そうですね。たぶん、アレであってると思いますよ。良かったですね。怒られなくて済みそうです」



 虹色に輝く500円硬貨のようなチップにはチューブタイプの光学照準器の設計図が記録されていた。たぶん、ドットサイトだろう。


 大収穫だ。マユミさんの顔が非常にだらしなく緩んでいた。女の子がそんな顔を人前で見せてはいけませんよ。



「シグレさん、アレって何ですか?ワタシにもわかるようにお願いします」


「アレっていうのは光学照準器、銃につける照準器のことだよ。スコープは、知ってる?」


「えーと。狙撃銃とかの上についている望遠鏡みたいなものですよね?」


「そう、そう。光学照準器があると、銃のこことここを合わせて狙わなくてもいいから便利なんだよ」


「そうなんですか。ワタシも欲しいです」



 実際にアレは、スコープとは違うのだが全く知らない人に言葉で説明するのは難しい。


 実物を覗けば、すぐにわかるのでアオイちゃんには少し我慢してもらおう。実物が手に入るかどうかはわからないが…



「アオイちゃん、急いで帰るわよ。マテリアルを渡すわ。チップは等分できないから、どうするかはこれからね。私が大事に保管するから心配しないで」



 マユミさんがチップを胸に入れた。え?胸に。そんなところにぃ。ブラに入れたってこと?それとも下。下って、下にぃ?



「シグレ、今度はどこを見てるの?」


「チ、チップの行方を追っていました」


「今は機嫌がいいから許してあげるけど普段ならタダで済んでないわよ。気をつけなさい」


「はい、肝に銘じます」


「シモンも私が預かるで問題ないわね?」


「はい、僕はスコープとかに興味ありませんから。男は黙ってアイアンサイトです」


「なら、黙ってなさい。帰るわよ」



 マユミさんが急いで歩き始めたが梯子のところで止まった。



「早く降りて」


「あ、はい」



 俺から先なのは急いでいても変わらないようだ。


 灯りをつけて梯子を対物ライフルを持って降りる。自分の灯りでは下が見えない。慎重に床を探しながら降りた。


 そして、あとから降りる人のために梯子の床辺りを照らす。続々とみんなが降りてきた。上を見上げるとマユミさんの蹴りが降ってきそうなので下を見て揃うのを待つ。



「全員降りたわね。急ぐわよ」



 行きとは違い帰りはモンスターもいないし探索もしないので20分くらいで2階の窓まで戻ってこれた。


 そして、真っ先に言われる前に窓枠を越える。



「わかってるじゃない」



 全員が窓の外に出たところでライトをしまい、陣形が変更された。前がマユミさんとアオイちゃんになった。



「それじゃ、行くわよ」



 そして、また絶妙なスピードでダンジョンの出口を目指す。シモン君が非常に不思議そうな顔で歩いていた。


 全員が終始無言のままでダンジョンの入口に辿り着いた。



「あと、もう少しね」


「センパイ、18時を過ぎてます。今日は中学校で解散ですね」


「そうなるわね。行くわよ」


「ちょっと待って、水くらい飲ませてください。っていうか飲みます」


「仕方ないわね。水を飲んだら、すぐ移動よ」



 全員で水休憩をして歪んだ空間を通った。ダンジョンの入口があるビルの外に出ると少し暗くなっていた。


 静かなマユミさんの手を引っ張ってアオイちゃんが中学校に向けて歩き出した。



「隊長、かわいいです」


「シモン君、余計なことを言わない。あとで倍返しとかだよ」


「何でもありません、隊長」



 無言のまま薄暗い霧の中を歩く。





「中学校に着いたわね。アオイちゃん戦利品を換金してきて。それを分配したら残念だけど、ここで解散よ」


「わかりました、センパイ。換金してきます。休憩用テントの近くで待っていてください」


「わかったわ」



 アオイちゃんが補給用テントへ行くのを見送って休憩用テントに向かった。



 休憩用テントの横で対物ライフルから弾を抜いてアオイちゃんを待つ。



「みなさん、お待たせしました。一人102500YENです。ホクホクですよ。シモン君は口座番号をワタシに教えてください」


「アオイちゃん隊員、了解であります」



 情報端末を取り出し振り込まれたお金を確認する。口座の残高は439870YEN。手持ちと合わせれば45万YENには到達した。しかし、あとからお願いした分と生活費が必要だ。


 俺と同じように情報端末を見ていたマユミさんが不思議な顔をしている。



「シグレ、明日はここに9時までに集合よ。アオイちゃんもね」


「わかりました。週末ですから問題ありません」


「明日もダンジョンですか?」


「隊長、ダンジョンなら僕も」


「いえ、都市に帰るわ。それだけよ」


「隊長、お疲れ様でした。それでは、失礼します」



 シモン君がいなくなった。全く現金な少年だ。



「アオイちゃん、私に振り込まれた額が少ないんだけど…」


「センパイとワタシはマテリアル1個分少なくなってます」


「そういうことね。忘れていたわ。ありがとう、アオイちゃん」



 姉妹の仲が良いのは喜ばしいのだが。



「えーと、明日も稼がないと食べていけないんですけど」


「ゲームとは思えないセリフね。そこは、何とかしてあげるから。明日はよろしくね」


「本当に何とかしてくださいよ」



 あ、でも、バイクを置くところは… どうしよう。



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