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40-天国


「俺は弾の補給に行きますけど、マユミさんとアオイちゃんはどうします?」


「私も行くわ」


「ワタシも」



 三人で補給用テントに向った。人通りの少ないキャンプの中を歩く。


 水場を探しているのだが、どうやら一般に解放されているようなところにはないようだ。休憩用テントでお茶をもらうしかないのか。


 ああいうところから、食べ物や飲み物を持ち帰るのは俺的にルール違反だ。我慢するか…


 補給用テントに入る。ここも人が少ないというかカウンターの兵士さんしかいなかった。対物ライフルを置いてカウンターに行く。


 銃弾しか販売していないかと思ったらそうでもないようだ。各種銃のマガジンやバレル等が置いてあった。



「すみません。この弾が欲しいんですが7発ほど」



 腰のバッグから対物ライフルの弾を1発取り出して兵士に見せた。



「こ、これは、ここには、この弾はありません」


「そ、そうですか。それでは」



 マユミさんに順番を譲りながら対物ライフルの弾をしまう。


 すっかりマイナーな銃を使っていることを忘れていた。対物ライフルを見ながら、これからのことを考える。


 一度都市に戻って準備をした方がいいだろう。水場のこともあるし。


 アオイちゃんも戻ってきたのでテントを出た。



「それで、シグレどうするの?」


「俺は、弾も買えなかったし一度都市に戻ります。マユミさんはどうします?」


「あのビルを探索したかったんだけど、しょうがないわね。私も戻るわ」


「センパイが戻るならワタシも戻ります」


「二人で探索に行ってもいいんですよ」


「シグレがいないと面倒なゴブリンの対処で余計な被害が出そうだし」


「素直じゃないセンパイがかわいいです」


「アオイちゃん、意味がわからないわ」


「いずれわかりますよ。それでは、シグレさん都市へ帰りましょう」


「了解」



 対物ライフルを担ぎなおし中学校の門に向かって歩き出した。


 中学校を出て南へ。防衛櫓08-0102を目指す。


 この時間のこの辺りを歩くのは初めてだが、いつもと変わったところはなかった。


 ゴブリンにも出会わず雑木林に入る。道も特に取り除くほどのものはなく寂しい。


 防衛櫓08-0102に到着。時間は10時を回ったところだ。少し休憩をする。対物ライフルを地面に置き背伸びをした。左肩の負担が大きい気もするので軽く肩も回してみる。



「この水、飲んでも大丈夫よね?」



 マユミさんが不安そうに水筒の水を飲んだ。



「一日ぐらいでダメになったりしないと思いますよ」



 リュックサックから水筒を取り出し噴水の石像を信じて水を飲む。美味しい。ただ、信じることができるのも三日までだろう。


 アオイちゃんは、そんなのを気にせずゴクゴク飲んでいた。



「大丈夫ですって、水でお腹をこわしたことなんて、ありま―」



 アオイちゃんの顔色が急降下した。これは、来たな。



「アオイちゃん、大丈夫?」


「センパイ、お腹が痛いです。トイレに…」



 マユミさんが辺りを見回しているトイレでも探しているのだろうか?あるとしたら防衛櫓の中だけど。


 しょうがない、かわいいアオイちゃんのためだ助けてあげよう。



「アオイちゃん」


「シグレさん、トイレください」


「ありません。それよりログアウトしてトイレに行っておいで。それリアルの体の状態を教えてくれてるだけだから」


「え?ホントに?」



 そう言うとアオイちゃんはピクリとも動かなくなった。早いな。



「シグレ、それはホントなの?」


「なら、マユミさんは飲み食いしてゲーム内でトイレに行きたくなりましたか?」


「えーと、あれ、そう言われれば。ないわね」


「でしょ。俺も一度なったことがあってそれで。マユミさんもリアルで暴飲暴食は気を付けた方が」


「なぜ、私は暴飲暴食なのよ。食べ合わせに気をつけてとかあるでしょ」


「食べ合わせに気をつけて、ください」


「遅い」



 そこに、アオイちゃんの姿が空間から現れた。お、ログインしたな。


 思わずふくらはぎに手を伸ばす。



「シグレ、犯罪よ」


「先に触ったのはアオイちゃんなのに… ケチ」


「シグレさん、スッキリしました。ホントでした。危なかったです。それで、しゃがんで何をしてるんですか?」


「な、何も」



 アオイちゃんがしゃがんでこっちを見ている。



「アオイちゃん、はしたないわよ」


「センパイ、シグレさんはいいんです。お腹の恩人なんです。深夜のつまみ食いが原因だと思います。でも、つまみ食いはやめられません」


「しょうがないわね。深夜のつまみ食いは太るからやめなさいって言ってるのに―」



 今度はマユミさんの顔色が… アオイちゃんがすかさずツッコミを入れる。



「あれぇ、センパイ、顔色が悪いですよ。まさか、深夜につまみ食いなんてしませんよねぇ。ねぇ?」


「マユミさん、つまみ食いをしてないなら出発しますけど都市までもつんですか?」


「もちません。ごめんなさい。つまみ食いしました。トイレに行ってくるので待っていてください」



 そう言うと動かなくなった。そしてマユミさんの体が虚空へと消えていった。



「センパイが深夜に何も食べないとかありえませんから」


「二人は息があってるよね。本当の姉妹みたいに」


「家が隣で小さいころから一緒の時間が多かったんです。それに、これは秘密ですけどセンパイの家はパン屋なので、お泊りしたときとかよくパンをもらいました」



 ようやく重要情報をゲットできた。よくやったアオイちゃん。



「パンは何が好きなの?」


「メロンパンですね。おにぎりと食べれば最高です」



 あれ、メロンパンっておかずだっけ?最近の若い娘はメロンパン定食とか食べるのかな?



「メロンパンっておかず?」


「え?メロンパンはメロンパンですけど」



 うーん、話が噛み合わないぞ。


 そこにマユミさんの体が現れた。ほっぺたをぷにぷにしようと手を伸ばす。



「あれ、アオイちゃん止めないの?」


「さっきのテントでのお返しです。思う存分ぷにぷにしてください。ほら、時間がなくなります」


「じゃ、お言葉に甘えて」



 アオイちゃんの許可が出た。これで犯罪ではなくなったということだ。


 マユミさんのほっぺたを両手の指でつまんでぷにぷにしたところで意識が宿ったようだ。間髪入れずにボディブローを放ち俺の体がくの字になったところで首に腕が回っていた。



「何か言い残すことはあるのかしら?」



 喋れる状況の時にして欲しい質問だった。それでも何とか絞り出す。



「ぷにぷに」


「じゃ、さようなら」



 遠のいていく意識の中でアオイちゃんがマユミさんに何かを言っているようだったが… もういいや。ゆっくりと目を閉じた。





「シグレさん、シグレさん、起きてください。もう十分堪能したでしょ?」



 アオイちゃんの声で意識が戻る。どのくらい意識を失っていたのだろうか?情報端末を取り出し時計を見た。11時10分だった。後頭部の弾力を楽しみながら情報端末をしまう。



「はい、おしまい」



 そう言ってアオイちゃんが立ち上がり俺の頭が地面に落ちる。痛い。



「膝枕、ありがとうございました」


「どういたしまして」


「それで、マユミさんは?」


「あっちで、兵士さんに怒られてますね。たぶん、シグレさんを気絶させたのを見られたんじゃ?」


「それは、それで、ざまぁというか気の毒というか」


「あ、センパイが戻ってきました」


「シグレ、おはよう。よく眠れた?こっちはあなたのおかげで散々よ」


「こっちもマユミさんのおかげで散々ですけどね。ぷにぷに」


「どうやら、睡眠時間が足りなかったようね。続きは都市でしてあげるわ。楽しみにしてなさい」



 マユミさんが学習している。ここでの追撃はなさそうだ。



「センパイ、シグレさん、帰りますよ。そういうのは誰もいないところで仲良くやってください」



 水筒をリュックサックにしまい対物ライフルを担ぎ防衛櫓を離れる。


 旧ウルフスポット、標識を通り過ぎ交差点まで来た。平和だ。マユミさんだけは俺から視線を外さない。さっきから視線が突き刺さっているのを感じる。


 きっと、俺の料理方法を考えているに違いない。



「アオイちゃん、マユミさんが怖いんだけど。どうにかして」


「センパイ、ほっぺたぐらい触らしてあげても問題ないでしょ?もう機嫌直してください」


「ほっぺたぐらいって、そんな簡単に」


「ほら、1000YEN分のサービスがあったでしょ。それがほっぺたということで、ね、センパイ」


「安い気もするけどそういうことにしておきましょうか。シグレ、良かったわね」


「え?サービスは苦しんだだけで終わるの?」



 ずるい。でも、情報はゲットできたし良しとするか。



「ワタシは膝枕だからサービスできたと思います」



 あれで1000YENなのか。高いのか安いのか。


 防衛櫓09-0001に無事到着。危険なのは俺だけだったが。



「マユミさん、グループチャンネルは削除しなくても大丈夫みたいです」


「そうみたいね。毎回作り直すのも面倒なのでこのままにしておきましょう」



 イヤホンを外してポケットに入れる。



「俺は武器屋に向かいますね」


「じゃあ、私達は不動産屋を探すわ。家のこともあるし」


「ついでに都市の探索も頑張ります」


「それは助かります」


「いいのよ、気にしなくて。自分のバイクの置き場所が必要だから」


「バイクは俺のですけど」


「見つけたのがシグレね。では、いつもの居酒屋に15時集合で。遅れたらその人に全額もってもらうから」



 買うのも俺ですけどね。



「居酒屋に行くんですね。しかも15時なんて時間から」


「シグレがどこに疑問を持っているのかわからないけど、普通に居酒屋に行くわよ。15時からでもね」


「センパイ、昨日の分も取り戻します」


「はい、はい、わかりました。遅れないように気を付けます」



 どうせ、奢りのシナリオなんて俺の場合しか考えられていないはずだ。絶対に遅刻しないようにしよう。バイク代がいつまで経っても貯まらない。


 マユミさん達と別れ一人武器屋に向かう。


 情報端末を取り出し口座管理アプリで残高を表示した。332700YENか。そして手持ちが51400YEN。45万YENが見えているとはいえ、追加にお願いもしたし50万YENは必要だろう。それに生活費…


 あの娘達はそんなことも知らずに食べまくるからなぁ。


 武器屋に着いた。入ってすぐに対物ライフルを置きカウンターに行く。と思ったが対物ライフルから弾を抜くのを忘れていた。


 対物ライフルから弾をを抜いてバッグにしまいカウンターに行く。



「ちわー」


「せわしいな」


「アレの弾を7発ください」


「おぅ」



 弾込めスペースへ移動してハンドガンのマガジンを交換し弾を抜く。13発か。それをすぐにマガジンへ込める。


 そしてハーネスにも20発入っていないマガジンが一つあるはずだ。何発だったかは覚えていない。



「仕方がない」



 ハーネスのどこに挿したかも覚えていないが一番取りにくいところから探せばすぐだろう。取りにくいところのマガジンを取り出し弾を抜く。


 幸い一つ目のマガジンが当たりだったようだ。入っていたのは16発だった。



「持ってきたぞ。7000YENだ」


「あと追加でハンドガンの弾を11発ください」


「また、中途半端な数を。面倒くせぇ」



 そう言いながらも奥へ取りに行くマスター。


 その間、対物ライフルの弾を腰のバッグへしまう。



「ほら、全部で7330YENだ」


「口座払いでお願いします」


「おぅ」



 情報端末を取り出し口座から支払った。


 あとは、この弾を込めれば。半端なマガジンに弾を込めハーネスに挿した。これでどこを取っても20発のマガジンだ。事故ることもなくなりスッキリした気分になる。



「マスター、中学校のキャンプのこと知ってますか?」


「そういえばできたらしいな。それが、なんだ?」


「そこに補給用テントがあって銃弾も買えるんですが、アレの弾がないんですよ」


「だろうな。アレを撃てる銃がほとんどないからな」


「どうします?」


「どうもしないが」


「悲しくなります」


「外で悲しめよ。ここでしけた顔すんな。まず、そんな弾を用意している俺を褒めろ。利益はあるが、おまえだけだぞ。その弾を買っているのは」


「PTRSを買った人は?」


「さぁ、来ねぇな。俺の知ったこっちゃねぇが」



 現状の危うさを再認識させられる。このままなくなると俺の相棒が、ただの棒に。いや、槍としてなら…



「ひょっとして、あの弾が生産中止になったりとかは」


「それは大丈夫だと思うぞ。あの弾は歩行戦車用の重機関銃で使っているからな」


「良かった。なら、今後もよろしくお願いします」


「おぅ、面倒だが任せとけ」



 歩行戦車用の弾を傭兵用に売ったりしないのか。これは防衛隊にコネでもつくらないと。


 いや、歩行戦車用の弾売り場に行けばいいのか。そんなのあのキャンプには… なかったな。


 対物ライフルを担いで武器屋を出る。15時までにはまだ時間があった。



「公園に行くか」



 傭兵通りから裏通りに入りいつもの公園に向かった。


 公園に入りとりあえず対物ライフルを置きベンチに座る。凄く落ち着く。


 こちらを見ている噴水の石像が微笑んでいるようだ。


 少しベンチで休んだあと、遅めの日課をこなす。ここで飲む水が一番美味しい。


 あと1時間することもないので、ガン賢?いや、昼寝をしよう。寝坊をするとまずいのでアラームを14時45分にセットする。


 アラームの設定を何度も確認してベンチに横になった。すると、すぐに眠りが訪れる。


 夢を見ているのか女神のような人が膝枕をしてくれていた。



(何か音がします。情報端末のアラームですか。無粋ですね。邪魔をしないでください)



 気持ちの良い眠りから目が覚めた。短時間だったがぐっすり眠れた気がする。アラームが鳴らないということは時間前に起きられたのだろう。時間を確認する。



「あ、過ぎてる」



 終わった。俺のバイクが走馬灯の中を走っていく。


 対物ライフルを担ぎ急いで居酒屋に向かう。


 店の前にマユミさん達の姿はない。これは…


 中に入って店員さんに聞いてみると、どうやら個室のようだ。案内してもらう。


 個室の引き戸を開ける。



「シグレ、言わなくてもわかるわよね?理由によってはあなたの奢りよ」


「シグレさん、遅いですよ。どうしたんですか?」



 対物ライフルを邪魔にならないところに置いて答えた。理由は聞いてくれるらしい。しかし、その理由は―



「公園で、その、寝てました」


「どうやら奢りが決定したようね。ありがたくいただいているわ」



 マユミさんは唐揚げを食べながら笑っている。バイク代が…



「ちょ、ちょっと待ってください。アラームはきちんとセットしたんです。何度も確認しました。でも、鳴らなかったんです。おかしいです」


「寝坊する人がよく言ういいわけね。もう少し面白い理由は思いつかなかったの?」


「シグレさん、流石にワタシも擁護できません。あきらめて一緒に食べましょう」


「バイク代が貯まらないんです。何でもしますから… 奢りだけは」



 あっ、思わず危険ワードを口走ってしまった。ここは通して。



「ん?何でも。シグレ、今、何でもするって言ったわよね。アオイちゃん聞いた?」


「バッチリ聞こえました」


「えーと、今のはなしの方向で」


「じゃ、シグレの重要情報を教えてもらいましょうか」


「センパイ、歳とか住所とかですか?」


「アオイちゃんは何にする?私は住所にするわ」


「じゃあ、ワタシは名前を」


「本当に教えないとダメなんでしょうか?」


「それはシグレが懐と相談しなさい。決めるのはあなたよ」


「そうです。決めるのはシグレさんです」



 くっそ。このまま奢りコースになると娘達がどれだけ食うか予想がつかない。仕方ない情報を提供するしかないのか…



「情報は提供しますが他に流さないでくださいよ。本当に困るので」


「わかってるわよ。そのくらい。私とアオイちゃんで情報は使うから」


「使うって」



 その後情報を提供した。納得できないと言われ歳や無職であることも言わされた。ちゃんと以前は働いていたことを名誉のために言った。言わされた。どん底だ。


 しかも、なぜかステータスまで教える羽目になる。【心眼】と【急所攻撃】が知られてしまった。”また、便利になったわね”とかマユミさんに言われる始末だ。自分達のステータスは教えてくれないくせに。特にサイズとか…


 全てはバイクのために、我慢した。



「シグレ、貴重な情報をありがとう。使わせてもらうわ。さぁ、割り勘よ。どんどん食べましょう」


「センパイ、まず昨日の分からです」



 俺の情報が何に使われるのか怖くて考えることができなかった。しかも、割り勘だというのに食べまくっている。昨日の分からとか。


 お金の心配を全くしない二人を見ながらやけ食いをした。こんな時でもビールの味は変わらなかった。凄く美味しいです。



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[気になる点] さすがに女性陣の行いが酷すぎて不快感が強い そこまでして二人と一緒にやらなきゃダメなのかと 特に先輩側
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