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29-ゴブリンの街


 今朝のエイトイレブンの弁当は、エビチリチャーハンでした。納豆とは… まぁ、そんな日もあるよね。どっちも美味しかったし。


 さて、今日の石像さんは… 普通ですね。可もなく不可もなくってことなのかなぁ?


 日課をこなしつつ石像占いに興じてみる。石像の表情で運勢を占うのだが難易度は高い。



 公園を出て裏通りを通り傭兵通りに出る。


 歩きながら朝飯に迷う。今日も牛丼で問題ないのだが。



「開花丼じゃん。一つください」



 屋台の隣の小さなテーブルについて出されたお茶を飲む。こんな露店があったとはすっかり慣れたと思った傭兵通り、侮れん。


 開花丼を食べ終え傭兵事務所に向かう。あれで350YENなのか。牛丼屋もライバルだらけだな。サイドメニューに山形だしとか追加しませんかねぇ。


 傭兵事務所に到着。一応依頼掲示板をチェックしておこう。


 入口を丁寧にくぐり抜けて対物ライフルを置いた。


 情報掲示板を見る。新しい情報はない。


 依頼掲示板の方を見る。なんだか人が少ない気がする。気のせいだろうか。


 依頼掲示板を横から覗いた。テストパイロットの依頼がまたあった。俺は条件から外れているし、アズマさんはうっかり地雷を踏むと悲しい目に遭うからな。用心用心。


 依頼窓口の奥のいつものお姉さんと目が合う。軽く会釈をしておいた。何だか機嫌が良さそうだ。


 対物ライフルを担いで傭兵事務所を出る。今日も中学校に行くので防衛依頼を受けるわけにもいかない。ルール的には防衛依頼を受けても問題ないのだが良心が痛い。


 露店でおにぎりを買い防衛櫓09-0001に向かった。




 防衛櫓に到着。やはり徒歩だと時間がかかる。イヤホンをつけて都市の外に出る。


 一応警戒をしつつ今度は防衛櫓08-0102を目指した。


 旧ウルフスポットを通り過ぎ順調に細い道を進む。


 それにしても人に会わない。他の傭兵はこの道を通っていないのか?


 防衛櫓08-0102に着いた。モンスターはいないようだ。水を飲んで休憩する。



 少し気合を入れ防衛櫓をあとにする。


 道にかぶさっている小さな木を脇に寄せる。バイクが手に入ったら通るかもしれないので少しは走り易くしておきたい。


 土砂も携帯シャベルで削っては脇に運んだ。


 ゴブリンを発見。距離は60メートルくらいか。


 対物ライフルを地面に置いて伏射の体勢をとり弾を装填した。


 遠距離攻撃ができそうなゴブリンを探す。ゴブリンをサイト越しに凝視していると弱点というか急所が何となくわかった。あれ?今までは一般的なゲーム知識で頭を撃っていたが、それがきちんと急所であることを認識できる。この感覚、新スキルでは…


 まずはゴブリンだ。にやけている場合ではない。


 どれから攻撃しても良さそうだ。対物ライフルだと胴体でも一撃なので、今までは頭を狙っていなかったのだが、せっかくなので頭を狙って撃った。


 どこから攻撃されているのかわからないのかゴブリンはキョロキョロするだけだ。遮蔽物に身を隠すという発想すら浮かばないらしい。


 かまわず撃ち続ける。肩への衝撃が心地良い。


 ようやく気づいたゴブリンが現れた。しかし、君だけだよ。走ってくるゴブリンも対物ライフルの弾で霧散していった。


 ゴブリンからしたら対処が非常に難しいのだろう。一瞬で霧散していくので何をされているのか理解できていないのかもしれない。これで音が聞こえていれば、また違っただろうが…


 対物ライフルに次弾を装填してドロップの回収に向かう。


 魔石5個とマテリアル1個が戦果だった。


 回収から戻ると、すぐに情報端末でステータスを確認してみた。



 能力:筋力28 体力11 耐久23 敏捷4 器用10 知力1 精神6

 スキル:拳銃3 対物小銃2 思念操作1 気配察知1 操縦1 心眼1 急所攻撃1



 しばらく見ないうちにいろいろ変化していた。


 長らくレベルが上がらなかった【拳銃】のレベルが上がっている。


 それに、それに、新スキルが三つも。もう帰ろうかな。ビールが飲みたい。


 【操縦1】は、昨日バイクを運転したからだろう。説明はいらないな。


 【心眼1】の説明を表示してみる。



”相手の急所がわかる”



 非常に簡潔な説明だった。スキルレベルによる違いすらわからない。さっきの感覚は、このスキルのおかげだったらしい。


 急所がわかりづらいモンスターには非常に有効そうだ。


 そして【急所攻撃1】だ。これの説明は―



”急所を攻撃すると20%威力が上昇する”



 【心眼】とセットでダメージ上昇が期待できる素晴らしいスキルだ。銃の威力は固定だと思っていたのだが、だんだんRPGしてきたぞ。


 これは対物ライフルでも急所を意識した方が良いってことだな。夢が広がる。


 スキルの妄想をしながら土砂を片付けた。


 今回の道掃除はこんなもんでいいだろう。ここを通るとき少しずつ掃除すれば、いつかは片付くはずだ。


 リュックサックから水筒を取り出し水を飲み、すぐにしまう。


 携帯シャベルをリュックサック横のケースに入れ対物ライフルを担いで中学校に向けて歩き出した。


 雑木林を抜けた。中学校まで、あと少しだ。


 畑の中の道を進み広い道に合流。北に進路を変更。昨日エンストしたところを過ぎ中学校に到着だ。


 モンスターの気配がないことを確認して校庭に入る。


 俺の憩いの場所の校庭中央にはテントが複数存在していた。


 なくなった憩いの場所を水を飲んで忘れテント周辺を歩いた。


 テントがあるってことは、ここで野営しているのだろう。


 夜も見張りを立てることになるが… にわかには信じがたい廃人度だ。


 いやいや、たぶん、アース人の傭兵だな。そうに違いない。


 無理矢理納得しておにぎりを食べた。


 そろそろ、おにぎり以外を挑戦したくなってきた。


 今度、弁当屋を探してみるか。


 おにぎりを食べているときも人影は現れない。疑問は解決しないままだ。


 弁当箱をしまい中学校を出た。マラソンをしているアホはいないようだ。


 とりあえず北に進む。何かあるとすれば中学校の北か北西だと当たりをつける。


 放棄された車を通り過ぎると、また放棄車両だ。


 数台の車の横を通り交差点に出た。信号機が派手に横たわっている。


 西には戦闘している傭兵が見えた。邪魔にならないように北に進む。流れ弾が怖い。


 ゴブリンの集団を発見。数は6。弓持ちが2だ。


 放棄された車のボンネットの上に対物ライフルを置いて弓持ちから狙っていく。跳弾のスキルとかないのか?一度に複数倒したい。


 白い霧の中、弓持ちのゴブリンが倒れる。次弾を装填する。空薬莢がボンネットを転がり落ちていく。


 次の弓持ちに狙いを定めてトリガーを引いた。次の標的を決めながら次弾を装填する。


 弓持ちの後ろにもゴブリンがいたようだ。連続して霧散していく光景が美しい。


 次は… 次の標的を決めている最中にお客さんのようだ。頭の中のレーダーが南東からの何かを教えてくれた。


 次弾を装填した対物ライフルをこのままにするのは危険すぎる。急いで担ぎ慎重に南東の索敵に移る。一度南に抜けるのもいいかもしれない。


 少し南に戻り東の路地に入る。東に進み反応が南西になった辺りで東50メートルくらいにゴブリンを発見。今度は近くの路地に入り南に進む。


 もうドロップの回収とかを言っていられない。


 南西の反応が南よりになってきた。この路地と合流するのは30メートル先だ。


 非常に微妙な距離だ。西の半分倒壊した家の庭に入る。家の所々崩れている塀が、ここだけ大きく壊れていた。


 反応が南東に変わっていくのを確認しながら南に移動。家の中に入った。


 何が家をこんなにするのか想像もつかない。酷い壊れ方だ。


 倒れた柱や通行の邪魔な障子を押しのけ玄関を探す。


 反応は南東にあるのだが、なかなか東に移っていかない。


 これはバレたか?見つけた玄関からすぐに出ないで様子を窺った。


 対物ライフルを床に置きハンドガンをホルスターから抜く。


 反応が少しずつ南に寄ってきた。今の【気配察知】のレベルでは反応が大きすぎて、この距離では数がわからなかった。


 ようやく玄関に現れたのは緑の小人ゴブリンだった。


 現れたゴブリンの頭を狙い2発撃つ。綺麗に命中してゴブリンは倒れた。


 倒れたゴブリンを追ってくると思ったが、次が来ない。


 反応は南の少し離れたところにあった。



「しまった!?」



 玄関から慌てて飛び出し右側に進み朽ちた門越しに左側を見る


 サッカーボールくらいの大きさの火の玉が魔法陣の中で燃えていた。



「マジか」



 冷や汗がドバっと出る感覚に襲われ、時間の流れが急激に遅くなっていくように感じる。そんな中、反射的に塀の裏に走り込みつつ1発の弾を火の玉に向けて放つ。


 世界の時間がゆっくり流れていることを知覚できても自分の体が速く動くわけでもなく、たんたんと起きる事象を見せつけられるだけだった。


 火の玉の破壊力だけが想像の中で膨らんでいく。


 魔法陣から飛び出した火の玉はハンドガンの弾が着弾すると、すぐさま爆発し周辺に爆風を浴びせる。



「助かっ―」



 爆風が周囲の物を吹き飛ばし土や砂が舞い上がった。ゆっくりとした爆発の光景を眺めていると時間もとに戻っていく。


 すかさず、朽ちた門から魔法使いゴブリンを探しお返しをする。辺りの熱気が凄い。


 杖を前に掲げているゴブリンは2発の鉛のプレゼントに喜びのあまり霧散した。


 残りゴブリンは4。目についたゴブリンから2発ずつ撃っていく。


 2匹が倒れ、3匹目に1発撃ったところで弾が切れた。



「え?はやっ」



 急いでハンドキャノンを左手で構え4匹目に撃つ。3匹目を少し巻き込んだところで頭の中のレーダーから反応が消えた。


 ハンドキャノンの次弾を装填してホルスターに戻し、ハンドガンのマガジンを交換した。


 いつからハンドガンのマガジンがあの状態だったのか?危なかった。残弾がわからないのがとてももどかしい。


 火の玉も衝撃で爆発してくれたから助かったが、立てこもるという判断も魔法に対しては考えものだった。


 周囲を警戒しながらドロップを回収。爆風のおかげで最初の魔石がなかなか見つからなかったが、戦果の魔石6個マテリアル1個にほくそ笑む。


 家の中に対物ライフルを回収しに行き少し休む。時間は14時45分。


 中学校を出てから1時間くらいしか経っていない気もするが疲れた。マテリアルもあることだし、もう帰ろう。


 あの時間が遅くなる感覚になると異常に疲れる。効果のほどもよくわからない。バグか?バグなのか?情報端末でステータスを見てもさっきと同じだ。


 切り替え、切り替え。


 対物ライフルを担ぎ家を出て西の交差点を目指した。


 ここでは戦場が移動しがちだ。この辺りにも誰かの拾い忘れのマテリアルとかマテリアルとかマテリアルが落ちていないか探しながら歩く。


 交差点を左折して中学校の門まで来たが、他の傭兵は俺と違ってきちんと回収しているようだった。魔石一つ落ちていない。悔しい。


 ここからではテントを確認することはできない。ここから見える校庭は白ばかりだ。意外とこの校庭は安全なのかもしれないな。


 そんなことを考えながら帰り道を急ぐ。


 前から傭兵の集団が向かってくるのが見えた。15時08分。情報端末をしまい、お約束の会釈だけをして通り過ぎようとすると声がかかる。



「あんた、もう帰るのか?早いな」


「ええ、少し疲れましたから。そちらは遅い出勤ですね」


「俺達はこれからだぜ。これから」


「これからって。もうすぐ暗くなりますよ」


「暗くなってからが本番だぜ」


「よく暗い中戦闘ができますね」


「暗くて動きにくいのはゴブリンも同じなんだぜ」


「おい、そのくらいにしとけって」


「わかってるって。それじゃあな、あんた」


「それでは、また、どこかで」



 東に向かう細い道に入り、さっきの傭兵の言ったことを考えた。


 どうやら夜のゴブリンはそんなに脅威じゃないらしい。それとも何か策があるのか?


 他のモンスターの名前が上がらなかったということは、夜もゴブリンだけなのか?夜だけ出現するモンスターがいてもおかしくないんだが…


 うーん、まだまだ情報が足りないな。結論を急ぐことでもないだろう。



 雑木林を速足で進む。つい目にした木を脇に寄せてしまう。


 モンスターと遭遇することなく防衛櫓08-0102に着いた。最近はここが都市の入口のような気さえしてくる。


 休憩をすることなく通り過ぎ次の防衛櫓を目指した。


 旧ウルフスポットだけを警戒して帰り道を急ぐ。


 防衛櫓09-0001に到着。耳に馴染んだイヤホンを外し背伸びをする。鈍い音がして対物ライフルのストックが地面にぶつかった。いかんいかん、おかしなことをした自分が不思議だった。


 傭兵事務所に向かいながら、あることが頭をよぎる。



「バイクを手に入れても、どこに置くんだろうな」



 頭の痛い問題が浮上した。流石に乗り物がプレイヤーのログインログアウトにあわせて出たり消えたりはしないだろう。


 置き場所というか住む場所を探さないといけないのか?お金がいくらあっても足りなさそうだ。


 傭兵事務所に入ると買い取り窓口に直行し換金する。


 なぜか買い取り窓口にはいつものお姉さんが平然と陣取っていた。隣のお兄さんの表情が面白い。


 戦利品と一緒に傭兵カードをカウンターに置いた。



「買い取りをお願いします」


「お帰りなさい、シグレさん。口座でいいんですよね?」


「はい、口座の方で。依頼窓口は大丈夫なんですか?」


「全部で105000YENになります。今は人が少ないので大丈夫なんですよ」



 確かに依頼窓口に並ぶ人は少ないっていうか人がいない。ただ、お兄さんの表情から大丈夫ではないことが伝わってくる。



「そ、そうですか。仕事、熱心なんですね。それでは、また」


「はい、またのお越しをお待ちしております」



 全くもって罪のないという笑顔でいつものお姉さんは、こちらを見ている。


 そんな空気の中、傭兵カードをしまい傭兵事務所をあとにした。


 今日も一日頑張ったので居酒屋でビールだな。


 一人静かに飲むビールはやっぱり最高だ。



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