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25-餌


 水筒とライトをリュックサックにしまう。


 学校の門から外に出る。学校の南側は畑が多かったのだが、この道は左というか西側に家が並んでいた。


 道を北上する。道には乗り捨てられた車があった。年季の入った車だ。車越しに人影がこちらに走ってくるのが見えた。モンスターには見えない。


 普通の人間だな格好からすると傭兵だろう。どうやら一人みたいだ。かなり焦っている。


 グローバルチャンネルで話しかけてみた。



「どうしました?モンスターですか?」


「お、どこかの傭兵か?それより、あんたも早く逃げろよ。ゴブリンの大群だ」



 男はそう言うとそのまま南に走り去った。すれ違いざまに見た男の服はボロボロだ。しかし装備は無事に見える。


 弾切れか… 人のことを考えていてもしょうがない。こちらも動こう。


 とりあえず西の民家脇の路地に入る。ゴブリンとはいえ数で押されるとこちらも弾切れは必至だ。近接戦闘なんて一体ならまだしも、この状況では選択肢にすらならない。


 適当な家に隠れて入ってきたゴブリンを個別撃破で凌ぐ。よし、これで行こう。


 路地を速足で進みながら比較的無事な家を探す。ゴブリンの気配はない。


 【気配察知】のおかげで落ち着いて行動ができる。


 2階建てのまともな家を発見した。南北に続く道と合流したその先だった。すぐに家に入る。ここもゴブリンの気配はなかった。


 2階に上がれることを確認。すぐに2階に上がり対物ライフルを邪魔にならないところに置き、急な階段を下りる。急だし暗いので注意が必要な階段だった。


 階段の下に手持ちの魔石全部と少し離れたところにライトを置いた。


 また、階段を上がり階段下の魔石が見える位置に陣取る。


 ゴブリンが魔石に飛びついてくれれば安全というわけだ。


 しかしゴブリンが大挙しておしかけてきた場合は… そのときはそのときで。


 というか大挙しておしかけてきたゴブリンの対策なんて考えたくもなかった。逃げるだけなのだが対物ライフルを担いだまま走ってもたかが知れている。


 対物ライフルを捨てる選択肢はない。捨てるくらいなら金額的にも死に戻り一択だ。



 2階の窓の破れかかったカーテンに身を隠しつつ外の様子を窺う。


 路地の北の方からゴブリンが歩いてくるのが目に入った。


 狙撃したい衝動に駆られるがグッと堪える。


 他の窓からも外の様子を窺った。西側以外はゴブリンの状況を把握できる。



「うん?」



 どうやら来客のようだった。頭の中でピンポーンが鳴った気がしないでもない。


 階段の射撃ポジションに移動し片膝をついてハンドガンを構える。


 ゴブリンは家に入ると他に目もくれず魔石に向かい手を伸ばす。


 俺は手を伸ばしてきたゴブリンの頭に2発鉛をくれてやる。


 倒れたゴブリンが魔石になって餌が増える。


 その魔石に次のゴブリンが手を伸ばす。すると頭に2発―


 ゴブリンが来なくなるまで繰り返した。途中2匹同時に来ることもあったが問題なく餌に変わった。


 楽な仕事だった。経験値ありがとうございます。


 広がっていた魔石を一か所に集めて再び2階へ。


 迷ったのは、この状況で2発ずつ撃つかどうかだった。


 確殺できなかったときを考えると… このままいくことで納得した。


 ハンドガンのマガジンを交換する。


 現在20発のマガジンが二つで、半分くらいのマガジンが二つだ。



「2回だな」



 残りのマガジン交換回数を確認しながら引き際を考える。男が言ったゴブリンの大群がどのくらいなのかわからないが少しは削っておきたい。


 中学校では遭遇しなかったが、この辺り一帯はゴブリンのテリトリーなのだろうか?


 しかし、もとは人間が住んでいたところだ。ゴブリンが集結する何かがあるはずだ。


 こちらも数の暴力で一斉偵察できればなぁ。


 また、お客さんだ。


 射撃ポジションに移る。


 手順はさっきと同じだ。たんたんとゴブリンが魔石に変わっていく。5個の魔石が新たに床へ転がった。


 1階へ下りて魔石の位置を調整し2階へ戻る。


 ハンドガンのマガジンを交換する。


 今交換したマガジンから弾を抜いて、弾の少ないマガジンに移した。


 水を飲みながら北の方の窓を覗く。


 まだ、この辺りを徘徊しているゴブリンはいるようだった。


 残りの弾が減っていくほど安心も減っていった。


 時間は14時05分。戦闘は順調だが落ち着かない。


 そろそろ、もっと南側に移動した方がいいのかもしれない。移動のタイミングが掴めなかった。


 頭の中でピンポーンが鳴る。しかも連打されている感じだ。



「多いぞ」



 水筒をしまい射撃ポジションへ。


 階段の下は魔石に殺到したゴブリンだらけだった。


 端から撃ち始めた。この距離だ、同時に集まって来られると発砲音を聞かれるだろう。


 魔石に殺到したゴブリンがこっちに目標を変えたようだ。階段を登ろうとしている。


 それをどんどん撃ち落としていく。


 この狭く急な階段でゴブリンは攻撃がままならないのだが、死んだゴブリンはハンドガンの銃撃では即霧散しないので数秒間障害になってしまう。


 それを蹴飛ばしつつ登ってきたゴブリンを撃っていく。



『カチン』



 ちっ、弾切れだ。マガジンを落とし、次のマガジンを入れボルトを引く。


 ゴブリンが振り下ろした手斧が左脛側面に吸い込まれていくのと同時に撃ち返えす。一瞬、その光景がスローモーションのように目に映る。まるで時間の流れが遅くなったように。



「痛!」



 ゴブリンの死体を痛い方の脚で蹴飛ばし次のゴブリンに対処する。


 階段を登ってきたゴブリンはいなくなったが、まだ階段の下にはいた。


 しかも、ゴブリンは魔石を食べていた。



「ちょ、おい、やめて、お願い」



 急いで食事中のゴブリンを倒す。



「ふぅ、終わった」



 辺りにゴブリンの気配はなかった。モンスターが魔石に寄って来るのは食べるためだったのか?


 もう何匹のゴブリンを撃ったのかわからない。


 ハンドガンのマガジンを交換して、床に落とした空のマガジンを回収した。


 そして痛々しい実際かなり痛い脚のために水を適当にかけた。くぅ、しみる。



「薬、薬」



 ポケットから回復薬を1錠取り出し飲み込んだ。


 前回のより傷は浅そうなので回復薬を飲まなくても大丈夫だとは思うが、痛みを何とかしたかった。



「この場所もこれまでにしよう」



 対物ライフルを担いで1階へ下り、壁に対物ライフルを立てかける。


 魔石を回収する。12個とマテリアルが一つだった。


 魔石を何個食べられたのか非常に気にはなるが、どうすることもできない。なんとなくゴブリンの”ざまぁ”を想像してしまった。


 少し離れたところに置いておいたライトを回収する。ライトは無傷のようだ。これくらいなら魔石の方が引き付ける力は強いようだ。ライトをリュックサックにしまう。


 ドロップの回収が終わると、この家の探索をせずに対物ライフルを担いでこの場を離れた。


 南に続く道を選んで速足で進む。脚の痛みは気にならなくなっていた。


 東西に続く細い道に合流する。ゴブリンの気配はない。


 頭だけ出して左右を確認する。



「大丈夫だ」



 そのまま南に進む。畑が見えてきた。


 畑まで進むと、ここで東西の路地というか畦道に繋がっていた。


 目の前の畑は背の高い草で一面覆われている。



「この中で―」



 この草の中で少し休むことにした。ここまでの速足でかなり疲れていた。


 畑に一歩踏み出す。足がガクッとなり前のめりにバランスを崩しこけてしまった。予想した高さに足が接地しなかったときのアレだった。



「いた、た、た」



 この歳でこけるとは… と思ったが、これは普通にこけるだろう。



「おっ、何かあるぞ」



 急いで起き上がり対物ライフルを忘れてそれに近づいた。



「グヘヘヘヘヘ」



 そこにあったのはバイクだった。しかも側車付き。


 自然と上がる口角が都市伝説のあの人を彷彿とさせただろう。


 背の高い草のおかげで発見されずにここに眠っていたのかもしれない。きっとそうだ。


 まぁ、とりあえずは俺のものだ。


 モンスターを少し警戒しながらバイクを確かめてみる。


 これは、この時代のドイツのバイクALV R75だ。状態もかなり良さそうだ。なぜ、こんなところにとかは、もうどうでもいい。むしろ良くやったと開発を褒めたたえたい。


 ただ、保安部品やパーキングブレーキがついているみたいだ。こんな時代で、しかもゲームなのに必要らしい。都市の中ではこれがないと危ないとは、思う。思うのだが。


 まぁ、いい。もう、こいつで生活してやる… やばい、やばいぞ、俺。


 またトリップしてしまうところだった。今日は一人だ。こんなところでトリップしていたら全てを失ってしまう。落ち着け、俺。


 無理矢理落ち着いた振りをしつつ考える。


 どうやって運べばいいんだ?バイクの横の側車にいつの間にか座っていた。



「ハッ」



 いかん、いかん、体が勝手に…


 エンジンがもしかかったとして、あの段差をいくらこいつでも無理だ。草を倒しながら走ってどこにあるかもわからない上がれる場所を探すというのも現実的とは思えなかった。


 どうすることもできない現実をトリップして逃避しそうだ。


 うーん、何もいい案が浮かばない。くっそ。


 非常に惜しいがバイクの写真を数枚撮って、このまま放置しておくことにした。


 ここなら誰にも見つからないと信じて。



 対物ライフルを担ぎ畦道沿いの草むらの中を東に向かう。


 一面畑ということは中学校の南西辺りのはずだ。まずは中学校に行きたい。


 途中遭遇したゴブリンは草の中からハンドガンで暗殺した。しゃがむと完全に身を隠すことができるので距離を詰めるのは簡単だった。実際に距離を詰めたのはゴブリンの方だったが。


 ドロップを回収しに道に上がり、回収後すぐに草の中へ移動する。


 それから東に歩くこと数分、南北に続く道に合流。ここは最初に東から来て写真を撮ったところのすぐ近くだった。


 北に歩けば中学校だな。


 ゴブリンに見つかると面倒なので、このまま都市に戻ることにして南に向かう。


 歩くとすぐに東へ続く細い道があった。


 速足で雑木林を目指す。


 傷口はすっかり塞がっていた。回復薬の効果があったかどうか判断がつかない。鎮痛効果はあったかも…


 雑木林に入った。辺りが少し暗くなる。


 頭の中はバイクのことでいっぱいだった。


 必死にトリップする自分を抑え防衛櫓に向けて歩く。


 前方にゴブリンを発見。数は2匹。対物ライフルを置き伏射で2発だ。ゴブリンを倒し次弾を装填して、また担ぐ。


 ゴブリンの魔石を2個回収して帰り道を急いだ。



 防衛櫓08-0102に無事に辿り着いた。時間は15時47分。早弁のおかげでお腹が騒がしい。水を飲んでごまかす。


 軽い休憩を済ませ都市に向けて歩き出した。


 途中の民家も問題なく通過でき標識に到着する。


 重い対物ライフルのストックを地面につけて少し休む。スタミナが減っているような気がする。空腹のせいか…


 あと、もう少しだから。自分に言い聞かせる。


 対物ライフルを担ぎ都市へ急いだ。


 ヘトヘトになりながら防衛櫓09-0001に辿り着く。


 疲れがドッと押し寄せた。まだだ。しかし風呂に入りたい。イヤホンをしまい傭兵事務所に向かう。


 ここには銭湯とかあるのかな?探したことすらなかった。この体は汗をかかないので風呂という発想が今までは湧かなかったみたいだ。


 しかし、こう疲れると風呂に入りたい。


 疲れた体の癒し方を考えているうちに傭兵事務所に着いた。


 すぐに買い取り窓口に向かい戦利品を換金した。


 魔石31個、マテリアル1個で76000YENになった。怪我して疲れたかいがあったというものだ。


 傭兵事務所での用事は済んだ。


 弾の補充をしないといけないのだが、もう明日にしよう明日だ。


 危ないので対物ライフルの弾だけ抜いておく。


 そして居酒屋へ急行だ。風呂に入れないならビールしかない。


 疲れた時のビールは最高だった。スタミナ回復効果があるのかもしれない。



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