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23-光差さない庭


 いつの間にかログアウトして寝てたようだ。よく眠れた。誰かの膝枕で眠っている夢を見た気がする。


 横にVRギアが転がっている。部屋の電気も点けっぱなしだ。


 こっちで酒を飲んだわけでもないのに二日酔いの心配をしてしまう。


 それにしても、久しぶりによく寝た。


 ゲーム内で酒を飲んでこっちでよく眠れるなら、これからも狙ってみるのも悪くないかもしない。


 これまでも酒を飲んでログアウトしたことはあるが昨日程熟睡できたわけではない。やっぱり、酒の量か?以前、マユミさんと飲んだときもそこそこ飲んだのだが。


 さて、支度してコンビニでも行くか。もう11時だ。混む前に行ってこよう。



 行ってきました。いつものエイトイレブン。


 新製品のすき焼き丼を買ってきた。納豆との相性はいかに…



「ごちそうさまでした」



 すき焼き丼と納豆の相性はかなりのものだった。麻婆豆腐丼や牛丼を越えたかもしれない。やるなエイトイレブン。今後も贔屓にしてやろう。


 お茶と羊羹を用意して公式ホームページを覗く。新情報はないようだ。


 次は掲示板だな。総合スレは… 死亡を経験したプレイヤーの続報を見つけた。


 死亡から24時間後に都市セーブポイントから復活した時、すぐに持ち物を確認したそうだ。すると持ち物はそのままあったらしい。


 これにはスレの住人も歓喜の嵐だったのだが、もったいぶった追加の報告によって嵐がおさまる。


 どうやら、魔石やマテリアルはなくなっていたらしい。消滅した可能性があるそうだ。


 死亡した時に魔石とマテリアルを持っていたことは確からしい。


 魔石やマテリアルが復活の対象ではなかった。そのことは残念だが、これらが復活してしまうと死に戻りで得ることができてしまうので仕様としては妥当だろう。


 持ち物が全ロスではなかっただけでもありがたかった。


 総合スレを堪能し、都市スレに移った。羊羹が美味い。


 でかい対物ライフルを担いだ傭兵が少し話題になっていた。俺かもしれない恥ずかしい。個性ということでスルーしてくれと書き込みたかったが―



”そいつアホだな”



 と書き込んだ。これは工作だ。決して本音が出たわけでも次の話題に早く移って欲しいわけでもない。



”防衛櫓08-0102周辺のゴブリンが増えているらしい…”



 などと、さりげにさらなる工作を行っておいた。


 この書き込みが住人にヒットしたのか、最近の都市周辺のモンスター事情の話題が続いた。なかなか良い情報を得ることができた。


 それに車やバイクを手に入れたプレイヤーがいるらしく自慢する書き込みをいくつか見た。羨ましいかぎりだ。今後は駐車場が問題になるかもしれない。


 お茶がなくなった。情報収集の終わりとしてはタイミングがいい。そろそろログインするか―


 っと、その前にトイレに行っておこう。






 まずは昨日のお酒がどれくらい残っているのかを身をもって― って全く残っていないな。このゲームでは二日酔いは再現されてないっと。飲み放題でした。これは稼いだお金を端から飲み代にするプレイヤーがでるぞ。かわいそうに。


 首の痛みはなくなっていた。全快したようだ。痛みが長引いたことの方が不思議だった。勘弁して欲しい。


 今の時間は。胸ポケットから情報端末を取り出す。同時にお金が落ちてきた。32000YENだ。このお金に覚えがあるようなないような。あ、昨日の稼ぎだな、たぶん。


 マユミさんがわかりやすいように情報端末があるところに入れてくれたに違いない。気の利く娘さんである。


 それで時間は15時10分。今日は… 傭兵休みだな。ゆっくりしよう。


 弁当箱を洗い、水筒の水を入れ替えて水を飲む。癒される水だ。噴水の石像も今日くらいは水瓶を下ろしても、俺は許す。


 あらためてベンチに座る。これで、この公園に陽が差せば完璧だったのに―


 切り替え、切り替え。




 今日は傭兵稼業が休みなので牛丼も休もう。


 そして、行くのはカレー屋だ。あったのだトッピングを選べるカレー屋さんが。


 対物ライフルを担いでカレー屋に向かう。


 公園から離れていくにつれ頭の中がモヤモヤしてきた。



「うわっ」



 これは、気配だらけということか。待望のスキルだったのに。いやいやスキルのせいにしてはダメだろう。しかし、スキルレベルが上がるともっとひどいことに…


 このモヤモヤを意識しないようにする訓練を始めよう。訓練を始めよう。


 しかし、逆に意識してしまう。


 前途多難だ。視界は霧でモヤモヤ、頭の中もスキルでモヤモヤ。早く俺の脳よ、何とかして。



 モヤモヤしながらもカレー屋に到着した。どこかで見たような店だ。さっそく突入。


 カレー屋は牛丼屋と違いカウンター席の他にテーブル席があった。


 今は混雑していないので対物ライフルを持ち込んでテーブル席に座った。対面はもちろん対物ライフルさんである。悲しくなんてない。


 メニューを見る。トッピングの種類の多さにニヤニヤしてしまう。



(うわー、こんな大きい銃を店内に持ち込むなんて正気の人間がすることじゃないよ。早く注文をとって逃げなきゃ)


 水を持ってきてくれた店員さんに注文をした。対物ライフルを見ても嫌な顔一つ見せない素晴らしい対応だった。



 来ました、来ました。


 大盛中辛カレーライスにイカリング、ソーセージ、目玉焼きのトッピングだ。


 目玉焼きに醤油をかけてカレーライスを食べまくった。



「ごちそうさまでした」



 とても美味しかった。俺の中では完全に牛丼屋のライバルになった。


 次は… 武器屋だ。弾を買わないと。



「ちわー」


「おぅ、おまえか。対物ライフルは邪魔だから、あの辺りに置いとけよ」



 言われたところに対物ライフルを置いてカウンターに向かった。



「それで、今日は何がいるんだ?」


「ハンドガンのマガジンを二つと弾を40発、それとアレの弾を5発ください。あ、それとハーネスのマガジンポーチも二つ、ハンドガンのヤツを」


「おぅ、持ってくるから待ってろ」



 ゴブリンが増えているので用心のためにハンドガンのマガジンを増やしておく。


 店内を眺めて見る。もう欲しい銃を揃えてしまったので銃には食指が動かない。


 しかし、ひょっとしたら凄く面白い銃があるかも…



 ありませんでした。



「そんなに変人が好みそうな銃はないぞ。だいたい、そういう銃は売れないからな。ほれ、持ってきたぞ」


「変人とか人聞きが悪い。在庫処分に一役買ってるじゃないですか?」


「在庫処分ねぇ。おまえ、アレを買い取ってくれと言っても買い取ってやらんからな」


「え?ここって中古販売もしてるんですか?」


「当たり前だろ。防衛隊から流れてくるものもあるし、使ってみたら合わなかった場合もあるだろう。銃は眠らせてても意味がないからな」


「へぇ、ちゃんとした店だったんですね。で、いくらになりますか?」


「ちゃんとした店に決まってんだろ。13400YENな」



 お金を現金で支払う。マスターはお金を受け取るとおつりを持ってきた。



「弾込めさせてくださいね」


「おぅ、あっちでな」



 対物ライフルの弾を腰のバッグにしまってからハンドガンのマガジンに弾を込め始めた。



「そういえばマスター、最近移動手段を考えているんですが…」


「おまえ、そんなに金持ってるのか?なら、バイクにしとけ。バイクなら店を紹介してやるぞ」



 詰め終わったマガジンをハーネスに挿す。あと一つだ。



「いえ、お金はありませんよ。アレの弾も高いし。ただ、次の目標が欲しいし歩きで行ける距離にも限界というか時間の問題で」


「そうか、バイクだったら100万あれば、だいたいのものは買えるぞ。旧型の現物があれば魔力機関仕様への変更が50万くらいだな。ガソリンエンジンは使わないからな」



 この状況だとガソリンが貴重なんだろうな。それに魔力機関はクリーンだし。モンスターに狙われるけど。



「詳しいですね。現物って都市の外からバイクを持ってくるってことですね」


「そうだな。都市の外のものは基本誰のものでもないからな。防衛隊や傭兵の兵器とかは別だが。その辺りの線引きが難しいから一旦防衛隊預りにはなる。そして持ち主が現れなければ拾ってきた奴のものだ」



 最後のマガジンをハーネスに挿した。



「都合良くバイクは転がってないでしょうけどね」


「そうだろうな。ま、もし、拾ったら。いや、拾わなくても店なら、ここだ。ここに行け」



 店の地図を転送された。用意がいいな。



「この店に何かあるんですか?推しが凄いんですけど」


「当たり前だろ。俺の実家だからな」


「あぁ、そういうことですか。だったら安くしてくださいよ」


「それはそれだ」


「はい、はい。それじゃ、今日はこんなところで。また、来ます」


「おぅ」



 対物ライフルを担いで店を出た。


 それで、次はどこに行こうか?何か忘れているような…



「薬だ」



 薬屋に薬を買いに行こう。薬屋もちゃんと傭兵通りにあった。




 薬屋に入る。中は待合室、カウンター、商品の陳列棚という感じに区切られていた。自分で商品を選ぶことはできないみたいだ。


 奥の陳列棚は、だいぶ寂しそうだ。よく売れているということだろうか。


 カウンターには、ギリギリお姉さん?って感じの女性が待ち構えていた。眼鏡が良く似合っている。



「すみません。回復薬が欲しいんですが」


「いらっしゃい。回復薬ねぇ。その大きい銃。君、傭兵?」


「はい、傭兵です。傭兵が良く買っていると思うんですけど」


「ま、傭兵くらいにしかアレは売れないけど、よく売れるものでもないな」


「そうなんですか。でも回復薬なんですよね?」


「回復薬だけど、君が想像している程回復はしないな。ま、鎮痛効果はあるからね。気休め程度にはなっているかもしれない」


「そうなんですね。飲むとズバッと回復したりしないんですね」


「あぁ、飲むとズバッと回復する薬は過去にはあったんだ。今じゃ貴重すぎて手に入らないな」


「それじゃ仕方ないですね。気休めを一つください。いくらですか?」


「3000YENだね。その気休めがこれだ」



 お金を払い回復薬を受け取る。10錠入りってことは一つ300YENか。牛丼が食えるな。ま、薬だから許されるのか。


 回復薬をハーネスのポケットにしまった。



「ありがとうございました」


「君、本当に傭兵なんだよね。外で薬を見つけたら持ってきてくれないかな。買い取ってあげるよ。小遣い稼ぎくらいにはなるかもしれないから」



 薬を買い取ってくれるのか。何がお金になるかの情報は貴重だから薬自体は残念だったが来たかいがあったみたいだ。



「覚えておきます。では」



 薬屋を出た。銃を使う分回復が不利になっているのだろう。他のファンタジーものだとヒーラーがすぐに回復してくれるのだが。銃を使っているからといって自分が鉄砲玉になるのは避けたい。


 これで用事は済んだ、はずだ。


 あとは、露店、露店。



 あった、あった。



「たこ焼き一つください」



 300YENを渡し、たこ焼きを一皿受け取った。


 露店の隣で道路を見ながら、たこ焼きを食べる。大きなたこが入っていて熱い。



「はふ、はふ、あふいけろ、うまい」



 道路を走っている車やバイクを見ながら、たこ焼きを食べる。


 こうして見るといろんなのが道路を走っていた。ただ、ほとんどが仕事用って感じに見えた。俺も移動手段が欲しい。


 たこ焼きがのっていた皿を露店に返しその場をあとにする。


 あれっ、そういえば意外とモヤモヤが気にならなくなっていた。慣れてきたのかな?よしよし、この調子でどんどん慣れてくれ。


 モヤモヤから解放される公園に戻ってきた。水を飲む。



「今日はモヤモヤの中、食べてばかりだったな。ま、いっか」



 ベンチに座りそのままログアウトした。



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[気になる点] バイクや車よりケッテンクラート良いけどなぁ~
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