2-エントリー
さて、朝飯も軽くすませトイレにも行った。もちろんインストールも終わっている。アップデートが入ったので少しあせったが間に合った。
午前10時まで、あと30分。もうすぐ『Another Earth Online』が始まる。
『Another Earth Online』、VRギアを用いてプレイするVRMMORPGだ。このゲームの特徴は何といってもその世界観にある。
世界観の情報は公式ホームページのプロモーションビデオくらいしかなかったのだが、それで十分だった。
舞台は地球によく似た星。乱暴に表現するなら地球を3分の1にして無理やり大陸や島を地続きにしたような地形だ。
敵はファンタジーなモンスター、対してプレイヤーは銃やパワードスーツみたいな何かや第二次世界大戦のころの戦車のようなもので戦うのだ。そして、その戦車はキャタピラの代わりに脚が生えている。歩行戦車というらしい。何という俺得世界観。
世界観の他にも公式ホームページには面白い情報があった。それはシーズン制の導入だ。
シーズン開始時にプレイヤーは都市を選択する。その後、都市に降り立ち自由に行動できるのだが都市を護ることを考えておかないといけない。厳密にいうと都市にある特別なセーブポイントをだ。
この都市のセーブポイントが破壊されると、この都市に降り立ったプレイヤー全員がシーズン退場となる。
そして心が折れていなければ次のシーズン頑張ってね、ということらしい。お金も獲得したアイテムもなし、成長したステータスのみでだ。
デスペナルティも厳しい。プレイヤーは死亡した場合セーブポイントから復活となるが24時間のログイン制限がかかる。
それと公式ホームページには目立つところにハッキリとこう書かれていた。
”PK ダメ 絶対”
これは好感が持てる。頑張れ運営。この仕様でPKが蔓延ると、まともなプレイヤーがいなくなるからな。
もうそろそろ時間か。VRギアを装着、ベッドに寝転がる。
やべぇ、いい歳だけどワクワクが止まらない。
「3、2、1、スタート」
白い空間に出た。キャラクターメイキングだな。
『キャラクターメイキングを開始します』
『生体情報をスキャンします』
そこには自分に似た人間が表示されている。
性別は… 変更できず。
変更できるところは…… 髪の毛の色に瞳の色。あと、耳の形か。ほとんどないな。
気持ち髪の毛の色をグレーにしておこう。ま、これだけでいいかな。耳を尖らせてもアレだし…
服装は、この軍服に似た何かしかないのか。
「これで、よしっと」
『名前を入力してください』
うーん。と、こんなところで長考するわけにはいかない。
名前の重複チェックはスピード勝負である。
当然、あらかじめ用意している。一つだけだが。
「シグレ」
「おねがい、通れ!………」
『開始都市を選択してください』
「よぉぉぉぉぉし、通った。次はなかった、あぶねぇ」
ま、俺の名前だけどな。カタカナだとわかるまい。
えーと、開始都市ね開始都市。
あまり選べる国は多くないな。しかし、日本さえあれば問題なし。
どこの国のプレイヤーも自分の国でプレイしたいものだろう。自分の国がなかったらどうするんだろうな。テロとか勘弁してくれよ、マジで。
開始都市は日本を選んで… 千葉県のアサヒと宮崎県のクシマ。なぜ千葉と宮崎なのか?
そんなことを考えていてもしょうがない。この二つなら…
「アサヒ」
「よしっ」
これで数少ない日本のプレイヤーが半分に。ホントに大丈夫か、これ。
『それでは、キャラクターメイキングを終了します。お疲れ様でした』
『世界の敵を駆逐してください』
これで、キャラクターメイキングは終わりみたいだ。
ふぅ、何か疲れた。後はログインを…
『第一次大戦に、エントリーしました』
『ログイン可能になるまで、残り1時間です』
「なんでやねん!」