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16-廃墟


 とりあえず来た道を戻る。防衛櫓の北はあまり行きたくない。


 これまでの都市周辺の防衛櫓の位置から予想すると都市の北から西にかけてモンスターが出現していると思える。恐らく都市の北西方面にも防衛櫓は存在しているだろう。


 都市の防衛櫓と都市外の防衛櫓の間辺りで俺はぬくぬくしたい。



 橋まで戻ってきた。ここから南東がついさっき戦闘をしていた道だ。


 そして南西にも道は続いている。その道沿いには形を維持している廃墟が何軒かみえた。


 モンスターも十分倒したし、この辺りの廃墟を散策して防衛としよう。


 橋に続く道を見失わないように道沿いの廃墟を探索する。


 もとは何かの店だったのだろうか?木の棚がたくさんある建物に入った。看板は見当たらない。


 店の商品は一つもなく棚だけが雑然と並んでいる。床には折れた棚や商品の空箱やらで足の踏み場に困る状態だ。


 慎重に歩みを進める。靴に何かが当たったようだ。転がる箱に懐かしさを感じた。



「これは、一粒三―」



 お菓子の箱だろうか。昔どこかで見たような気がする。


 店の奥に居間が見えた。そっと覗いてみる。モンスターはいない。


 畳の上には足の折れたちゃぶ台と目盛りが付いた箱型の機械が転がっていた。



「ラジオ?」



 ラジオらしきものをいろいろ弄ってみたが動かなかった。運営が世界の情勢とかを公式ラジオとかで流してくれると面白いと思ったのだが… やってくれないかなぁ。


 さらに奥に進み台所を通り勝手口から外に出る。橋に続く道の方向を確認し反対側を進んでみる。


 モンスターの警戒は怠らない。


 こっちは裏庭になるのだろうか?壁からそっと顔を覗かせてみた。


 いた。サハギンだ。しかも魚の目と目があってしまう。覗いた時の目が合う確率の高さは何?


 サハギンが飛びかかってくるのを体を引いてかわす。


 ハンドガンをホルスターから抜き細い路地をサハギンとは逆方向に走る。


 橋に続く道と合流するところで目の前にもサハギンが現れた。



「!」



 サハギンの側頭部に飛び蹴りをお見舞いする。


 サハギンの魚眼はそれを見逃さず身を引いてかわした。



「よし」



 最初から飛び蹴りなんかが当たるとは思っていない。通り抜けたかっただけだ。飛び蹴りから着地し、そのまま道の向こうの瓦礫まで一気に走り抜けて振り返る。


 そして、のこのこやって来るサハギンの頭部にお約束の2発の弾を撃ち込む。


 綺麗にヒットしサハギンは倒れた。目が凄く痛そうだった。


 続いて路地から出てきたサハギンも撃つ。この距離なら片手でも外さない。


 追加のサハギンも倒れる。



「これで、終わり?」



 回収を始める。2個目の魔石を回収し顔を上げると路地の奥、裏庭の方からサハギンより背の高い何かがこちらに向かって来ていた。



「あれがリザードマン?」



 すかさず頭部を狙い2発撃つ。弾は頭に命中。したようだがリザードマンは頭を軽く振るだけで倒れる素振りを見せない。



「え?傾斜装甲なのその顔」



 リザードマンの顔を正面から撃っても謎の傾斜と皮膚、鱗ではじかれるようだ。


 さらに数発撃ってみた。


 リザードマンは槍を持っていない方の腕で顔を隠しながら前進してくる。撃った弾は腕にはじかれた。


 もう目を狙うしかハンドガンではダメージを与えられそうにない。しかし、無理そうだ。



「じゃ、こっちで」



 このゲームを始めて初のハンドキャノンの出番だ。


 左手でハンドキャノンを抜きハンマーを起こす。ハンドガンと同じように頭部を狙い、撃った。


 リザードマンの腕に命中。爆風が狭い路地を巻き込み、かなり大変なことになっているようだ。腕がだらーんと下がるのを確認。かなり痛々しい。それでもリザードマンは倒れていない。



「しぶとい」



 右手のハンドガンを手放し、急いでハンドキャノンからちょっと熱い薬莢を捨てポケットから次の弾を取り出す。


 次弾を装填しているところに右太腿に鈍い痛みが走る。思わず尻餅をついた。



「痛!」



 いきなり右太腿に槍が生えると心臓に良くない。危うく落としそうになった弾を装填してリザードマンに撃った。


 リザードマンの頭部に命中。爆発、霧散した。防御されると弾代が嵩むと思ったのだが、そうはならなかった。最後の力で槍を投げたのか…



「それにしても痛いぃ、痛い?」



 言うほど痛くはなかった。痛みが抑えられているのか?


 しかし、刺さった槍を抜くのが怖い。骨には当たってないよね?だいたい持ち主が霧散したんだから槍も消えろよ。


 ハンドキャノンを地面に置き槍を両手で握り締める。


 歯を食いしばって思い切り引き抜き投げ捨てた。


 ズボンが血で滲む。


 痛いが鎮痛剤も回復薬もない。そういえば回復ってどうするんだ?


 衝撃の瞬間であったがどうすることもできない。


 前回も放置で何とかなったようだし今回も放置だな。ってか放置しかできん。


 地面に転がっているハンドガンをしまい、ハンドキャノンに次弾を装填してからホルスターへ。そして、しばらく休んだ。



 5分、いや3分?カップラーメンができるくらいの時間で痛みはすっかりひき血はいつのまにか止まっていた。



「ゲームの体スゲー」



 このゲームは外傷も自然回復するのか。あらためてこれがゲームだということを思い出す。


 ドロップを回収して昼飯にでもするか。なんだか体がだるい。


 リザードマンのドロップは、いつもより大きめの魔石1個に… マテリアルが1個。



「ゲヒヒヒヒヒ」



 いかん、いかん。癖になるぞ、この笑い方。何とかしないと。槍が刺さったことをすっかり忘れて喜ぶ自分の現金さに少し呆れた。


 魔石はそれぞれ大きさや形、色がモンスターの種類によって違うのだがマテリアルはどれも同じようだ。ずっしりと重いこの黒い立方体しか見たことがない。不思議な物体だ。


 さて、時間は13時前。手を水筒の水で軽く洗いおにぎりを食べる。


 こんな状況でもおにぎりは美味しかった。



「やっぱり、おにぎりは鮭か…」



 梅干し派を敵に回したかもしれない。迂闊な発言には気を付けなければ… 最後に水を飲み水筒と弁当箱をしまった。食べたし昼寝がしたいなぁ。見上げた空は白い。


 周りの廃墟を眺めながら、少しの間ボーっとした。




 休憩を終えて散策を再開する。


 少し歩くと病院のような廃墟が目に入った。



「あっ、あれはダメだな。明るくても無理」



 入るのは無理だが一応確認だけは、しておこう。


 2階建ての小さめの病院のようだ。いろいろな条件が手助けして最高な廃病院を演出していた。


 回復が問題になったばかりだから回復薬とかを探したい。


 しかし外から見ただけでもヤバイ空気が駄々洩れだ。


 いつあの暗い窓から何かが覗いてくるかもしれないと思うと怖すぎる。


 しかも霊体系のアンデッドが出ると対処ができない。



「やっぱり無理だ」



 きっぱりと諦めた。


 時間を確認する。14時08分。ここは都市から比較的近いので、もう少し防衛しても問題はないがマテリアルがドロップしているので依頼の時給にこだわる必要もない。


 帰ろう。橋に続く道を防衛櫓に向けて歩き出す。


 廃病院から何か音が聞こえたような気がした。が、この霧の中そんな音がここまで届くはずがない。そうだ、そんなはずがあってたまるか。


 足早に防衛櫓を目指す。橋に着くころには全速で走っていた。



「はぁ、はぁ。怖くなんてないよ、全然。はぁ。強いて言うと対処できないのが怖いんだ。そ、そうだ。それだ」



 最近は走ってなかったしゲーム内だけど良い運動になったなぁ。遠い目をしながら橋の前で息を整えた。


 橋を渡り防衛櫓で写真を撮る。


 そそくさと防衛櫓をあとにし帰り道を急いだ。



 防衛櫓01-0001に到着。ここでイヤホンを外すと無事に都市に戻ってこれたことを実感できる。妙な気持ちだ。


 傭兵事務所に急ごう。



 傭兵事務所に戻り依頼窓口に向かうといつものお姉さんの視線が右太腿に集中する。


 そりゃぁズボンに血の跡もついてるし穴だって空いてる。気になるよなぁ。


 何か言われるかな?傭兵カードをカウンターに置く。



「防衛依頼の報告に来ました」


「足、怪我をしたんですか?」


「まぁ、槍が生えてくる難病でした」



 ムッとした表情が返ってきた。面白くなかったようだ。やはり難病がダメだったのか…


 その後もたんたんと応対されて報告は短時間で終わった。


 買い取り窓口で戦利品をお金にする。


 魔石12個マテリアル2個で102500YENになった。ヤバイ。笑顔が隠せないのですぐに傭兵事務所を出た。


 武器だ。新しい武器が欲しい。



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