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15-川


 ぐっすり眠ってからのアースだ。大変気分が良い。


 昨日はマユミさんに酒を付き合わされて大変だった。無駄な知識に記憶領域を使ってしまった。早く忘れたい。


 マユミさんはかなりの酒豪で今頃はさぞかし二日酔いに苦しんでいることだろう。と思ったがリアルに現実逃避した場合は状態異常はどうなるのか?


 ログインした時に続きからなら… ざまぁ、だな。



 ログインする前に掲示板を覗いたところ総合スレでは、この世界を”アース”と呼びNPC達を”アース人”と呼んでいた。


 地球や地球人だとややこしいのでいろいろ議論した結果がアレらしい。そのまんまじゃんと激しくツッコミを入れてしまった、パソコンに。


 わかりやすくていいのだが英語圏じゃ何の解決にもなっていないな。でも使いますけど。


 この公園はいつものように寂しい。朝なのだから小鳥の囀りくらいサービスしてくれてもいいのではと思う。


 噴水の石像の表情もわからない。絶え間なく水を注ぎ続けている水瓶は重くないのだろうか?


 日課になりつつある水筒の水の入れ替えに加えて弁当箱を洗う。さて、こっちでも朝飯を食べるか、牛丼だけど。栄養バランスが悪いと能力が低下とかないですよね?ね?


 牛丼屋で並盛を食べ傭兵事務所に向かった。



 傭兵事務所に入り依頼掲示板に直行する。競争率は激しい。おしくらまんじゅうをしつつ華麗に面白い依頼を探す。


 なかった。疲れだけが残る。


 しぶしぶ空いている依頼窓口へ。傭兵カードを用意する。窓口のお姉さんは最近よく見る顔だった。



「防衛依頼をお願いします」


「おしくらまんじゅう楽しそうでしたね、シグレさん」



 いつものお姉さんからその単語が出るとは思わなかったが別に楽しくはなかった。



「やっぱり女の子が多い方が良いですよね?」


「女性の傭兵は多くはいませんから今後もそんなことはありません」



 傭兵カードを受け取ったお姉さんはノートパソコンを操作しながら厳しい表情と口調で答える。


 疲れるので脱線はこれで終わりにしよう。



「防衛依頼のランドマークですが今日は防衛櫓01-0101と08-0102があります。どちらにしますか?」



 戻ってきた傭兵カードをしまいながら考える。08-0102の周辺を開拓したいが同じところばかりというのも面白くない。


 しかし、面白さだけで選ぶというのは…… うーーーーーん……



「時間切れです。防衛櫓01-0101に決定しました」



 思わずお姉さんをガン見する。



「えっ、時間切れとかあるんですか?」


「えぇ、今導入された新しいルールです。評判はいいですよ」



 今かよ。なのに評判いいのかよ。疲れるなぁ。



「はぁ、それじゃ、それでいいです。評判がいいらしいし。で、防衛櫓01-0101の簡単な説明をお願いします」


「この防衛櫓はここから北北東に位置し川の中州のようなところにあります。地図を転送します」



 情報端末に地図が転送される。地図を見ると川の対岸にも防衛櫓があるようだ。とりあえず川を目指せということか。



「そこで確認されたモンスターはサハギンとリザードマンになります。モンスターの写真を確認されますか?」


「いえ、大丈夫です。半漁人とトカゲ人間みたいなのですよね」


「はい、そんな感じのモンスターです。アナザーの人は話が早くて助かります。ですがリザードマンは皮膚が厚いので注意してください」



 やはり、川には水棲モンスターが出るということか。リザードマン、ハンドガンでいけるか少し不安だ。



「わかりました。行ってきます」


「お気をつけて」




 傭兵事務所を出ておにぎりの露店を探す。以前と場所が違っていた。


 おにぎりを選ぶ。前回食べた梅干しはやめて、昆布、鮭、野沢菜を買った。今日は獣にプレゼントすることもないから楽しみである。


 あらためて地図を確認する。最初に目指すのは防衛櫓01-0001だ。ここからだと道路を北に進み分かれ道を右みたいだ。ポイントは分かれ道が交差点ではないところだな。注意しておこう。


 傭兵事務所の前の道路沿いを北に進む。少し歩いたところで大きなトラックが横を通り過ぎる。


 そのトラックは大型の運搬用で荷台には歩行戦車がワイヤーで固定されていた。


 あれは、2脚タイプで旋回砲塔付き主砲は40ミリメートルくらいに機銃がある。モンスター相手には十分だろう。その主砲が必要なモンスターには正直会いたくない。


 車体は無限軌道ではないからなのか前後が短い。それを複雑な形状の鳥脚が支えているようだ。乗員は3名くらい?


 あぁ、行ってしまう。あのトラック止まらないかな。


 心の声もむなしくトラックは走り去ってしまった。ちっ。


 アースでは無限軌道俗に言うキャタピラを見たことがない。プロモーションビデオでも登場しなかった。無限軌道の代わりがあの脚なのかもしれない。


 2脚や4脚歩行が無限軌道より有効だとは思えないがそんな野暮なことはロマンの前では小っちゃいことなのである。


 リアルで存在しないものが存在しうることがゲームの良いところなのだ。ロボット万歳である。


 あれに乗って”最高だぜぇい”と言いながら大砲をぶっぱする自分を想像すると涎が溢れてくる。


 ごちそうさまでした。



 見ただけでお腹が膨れそうなイベントは終了した。クリア経験値が欲しい。


 歩き続けること10分。ここで大きい道路が二手に分かれる。たぶん、ここだ。ここを右に進む。


 さらに5分くらい歩いたところで防衛櫓01-0001に辿り着いた。正しかった選択に安堵する。


 地図を確認する。このままこの道を進み川に着いたところで川沿いの道を北に進めば橋がありその先が防衛櫓のようだ。


 気合を入れイヤホンを耳につける。時間は10時。道に迷いませんように…



 舗装された道路沿いを瓦礫が点々と続く中歩き続ける。いつモンスターが出るかわからないところを警戒しながら進むのはかなりきつい。


 今日はマユミさんがいないので気が紛れるような話もできない。


 索敵を怠らずに道を歩く。モンスターを発見できるスキルがあると信じて。



 ようやくT字路にぶつかる。どうやらこの道はここで終わりらしい。


 おっ、道路に光る物がって― 魔石じゃん、これ。なぜこんなところに?


 ひょっとして車に轢かれたモンスターのなれの果てとか…


 周りには誰もいないようなので貰っておこう。


 ここから北、川の上流方向に行けばいいんだな。



 向こう側に川が見えその手前の水辺には背の高い草がずっと続いていた。


 いつ何が飛び出してきてもおかしくないびっくり箱のような草むらから遠い側の道路沿いを北に進む。



「今、草が動いた?」



 風になびくような動きには見えない。一部分の草が不自然に動いていた。


 とりあえず草むらとは道路を挟んで反対側の瓦礫に潜んで待ってみる。


 この辺りは半壊した民家が点々としていた。もう、どこが安全かさっぱりだ。



 瓦礫に潜むこと数分、草むらから背の低い魚頭の人型生物が出てきた。魚の大きい目が怖い。


 サハギンだろう。即座にハンドガンで頭部を狙い2発撃つ。


 サハギンが倒れた。ハンドガンが通じることを確認する。


 ここにいるということは防衛櫓が近いのか、それとも防衛櫓に引っかからなかったのか?


 ドロップを回収しようと思い腰を上げると、また、サハギンが出てきた。急いでしゃがみ、ハンドガンを撃つ。


 その後も出てくる端からハンドガンを撃ちまくる。頭部2発撃ちで倒れなかった奴にはさらに2発撃った。


 ハンドガンのボルトが後退したまま止まる。マガジンが空になった。



「今、出てくるのは待って。タイム、タイム」



 素早くマガジンを交換しボルトを引く。サハギンは出てこない。タイム成功か?



「もう少し待ってくださいね」



 丁寧に空のマガジンをポーチにしまう。マガジンを無くすと儲けが無駄に減ってしまう。



「タイム終わり。来いやぁぁ」






 来ませんでした。どうやらおしまいのようだ。じゃ、終わりって教えてよ。


 アースの神様からツッコミはない。


 防衛櫓に着く前にこの数とは、弾が心もとなくなってきた。


 残弾の心配をしながらドロップの回収を始める。結構な数倒したのだからマテリアルがドロップしても… って、ありました。



「フヒヒヒヒヒ」



 やばい、良い大人がしてはいけない笑い声を出してしまった。思わず周囲を確認してしまう。


 最終的には魔石8個、マテリアル1個だった。もう帰っても十分だな。


 切り替え、切り替え。



 北に進むとすぐに橋が見えてきた。


 橋に辿り着き向こう側に視線を移すと薄っすらと防衛櫓が見えた。


 防衛櫓に早歩きで近づく。そして無事に到着。時間は11時10分。


 防衛櫓01-0101の兵士に挨拶を済ませ写真を撮る。


 これから、どこで防衛するのか水を飲みながら思案に暮れた



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