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14-AK女子2


 休憩は終了だ。水筒を返してもらいリュックサックにしまう。名残惜しそうに水筒を見ているようだが気にしない。


 さて、これからどうするか?アサルトライフルの戦闘距離が30メートルくらいあるなら遮蔽物を探すよりここで待っているだけでも問題ないと思うが。



「これからの防衛どうしますか?マユミさんが頑張るなら、ここでモンスターが来るのを待つ方が一番楽ですけど」


「それって防衛依頼としてどうなの?怒られたりしない?」


「それは大丈夫だと思いますよ。防衛櫓周辺でコバンザメをするだけなら動いても動かなくてもモンスターに遭遇する確率は変わらないし防衛櫓側にしても向かってくるモンスターを1匹でも倒してくれれば助かると思います」


「そうなんだ。てっきりモンスターを探し回らないとダメなのかと思ってた」


「現状だとスキル的にもモンスターを能動的に探すのは危険なんですよ。見通しの良い場所で探すなら比較的安全だとは思いますけど、雑木林とかはモンスターより迷うことの方が危険です。目印にロープとかくくりつけて帰り道を確保とかしないと迷う自信ありますよ」


「あぁ、シグレでも迷うのね。じゃあ、無理。ここで頑張る。弾がなくなったらよろしくね」


「この霧の中、数時間歩いただけで地形を覚えられる人がいるなら、その人はそれだけで食っていけると思います。弾はどのくらいありますか?」


「さっき1マガジン弱使ったので2マガジン60発ってところね。次からはゴブリンごとき1発で仕留めてみせるわ」



 非常に頼もしくて助かるな。



「だったら、大丈夫でしょう。遠距離攻撃できるゴブリンがいたところで30メートルを越えて攻撃してくるとは思えないので」


「私のAKを信じなさい。カラシニコフさんがついてるわ」



 いきなり再登場したな。もう守護霊にでもなったのか…



「ウルフが出る可能性もありますが、近づかれた場合は俺が頑張りますよ」



 信用していない表情で俺を見るマユミさん。何その目。



「ホントに大丈夫?頑張って、期待してる」



 全く期待をしていない喋り方だな。とはいえ素早いウルフは近づかれると結構焦るんだぞ。



 作戦は決まった。あとはモンスターが来るまで待機なのだが、それだとスキル上げにならない。


 さっきは集団で現れたが前回は2時間でゴブリン1匹だからなぁ。何かスキル上げになりそうなことはないか。その辺を行ったり来たりして考えるも良い案は浮かばない。



「ちょっと、落ち着いてよ。気が散るわ」


「スキル上げになるようなことがないか考えているんですよ。良い案あります?」


「ないわね。おとなしく瞑想でもしたら」



 瞑想ねぇ。瞑想で覚えられそうなスキルとかあるのか?瞑想というスキルを覚えても意味わからんし。



「瞑想ですか。でも、マユミさん俺が瞑想始めたら怒るでしょ?」


「当たり前じゃない。こんなところで瞑想しないでよ、ホントに」



 自分が提案しといて、したら怒るとか意味わからん。



「提案したのはマユミさんじゃないですか?したら怒るようなこと提案しないでください」


「それはそれ、これはこれよ」



 どれだよ。


 などとアホなことをしているうちにモンスターが現れたようだ。今日は多いな。



「マユミさん、モンスターですよ。ウルフが2匹です」


「見えてるわ。確かに大きい犬ね。さぁ、ウルフの力を見せてもらいましょうか」



 ハンドガンをホルスターから抜く。



「気づかれる前に狙撃できれば楽なんですが無理でしょうね」


「無理そうね。走ってきてるわ」



 速い。かなりの速さでこちらに走ってきている。


 マユミさんが撃ち始めた。弾が掠ったのかウルフは一直線だった軌道をジグザグに変えた。



「これは、難しいわね。色が黒っぽくて良かったわ」



 色、なぜ色なのか?それでも、フルオートで指切りを駆使し何とか対処したようだ。ウルフが1匹15メートルくらいで倒れた。


 指切りまで使い始めたぞ。この娘っ子は、末恐ろしいな。



 もう1匹は別方向から走ってきていた。狙いはマユミさんのようだ。


 俺はハンドガンを右手に左手には新たにナイフを握った。そしてナイフを構えたままタイミングを計る。


 ウルフの知能にもよるがハンドガンを構えてこちらを狙われても面倒だ。でもウルフにそんなことわかるわけないか。構えたナイフがひどく滑稽に思えてきた。


 ウルフは味方が倒されたと同時にジグザグ軌道をやめてマユミさんに飛びかかろうとする。その瞬間にハンドガンをすばやく構え片手で撃ち続ける。


 距離は10メートルちょっとか、4〜5発撃ち込んだところでウルフは倒れた。


 マユミさんは飛んできそうなウルフにギョッとしていたがすぐにこちらを向いた。


 あ、ひょっとして怒ったかなぁ。表情が硬い。



「もう少し早く倒してくれても良かったんじゃない?ちなみに怒ってないわよ」



 怒ってるな。ナイフをしまいハンドガンのマガジンを交換しながら答える。



「なかなかスキが見つからなかったんですよ。ハンドガン、少しは見直しました?」


「え、どうして?ハンドガンじゃなきゃ、もっと早く倒せたんじゃない?」


「このハンドガンの素早い銃撃がこういう角度でですねぇ」


「そういうのいいから。回収しよっか」



 面白くねぇ。褒めてもバチは当たらないというのに。ハンドガンをホルスターに入れる。


 ウルフ2匹からは魔石2個とマテリアル1個だった。ウルフはマテリアルが出やすいとかあるのだろうか?



「マテリアルがドロップしましたね。おめでとう」


「この黒いのがマテリアル。魔石より貴重なのね。これでAKのカスタムが捗るわ」



 まだ、カスタムするんだ。


 水筒を取り出し水を飲む。視線を感じる。



「どうぞ」


「ありがと」



 マユミさんは水を本当に美味しく飲む。ただの公園の水なんだけど。


 時間は16時。残りは1時間くらいか。


 瞑想でもしようと思い地面に胡坐をかいて座ると頭に何かが当たった。小石だった。



「させないわよ。そうねAKのカスタムの話でもしましょうか。それがいいわ」


「ええぇぇええ」



 1時間AKのカスタムの話を聞かされる。モンスターが俺を助けてくれたりはしなかった。



「はい、おしまい。時間です。帰りますよ」


「え、これからストックについて話が始まるとこよ」


「そういうのいいですから。帰りますよ」


「しょうがないなぁ。これだからわがままな男は」



 どこがわがままなんだよ。


 北の防衛櫓に向かう。防衛櫓はやっぱり平和だった。戦闘時よりマシだろう。戦闘しているのを無視するわけにもいかないだろうし。


 写真を撮ってマユミさんを確認する。きちんと写真を撮っているようだ。



「では、帰りましょうか」


「ええ、そうね」



 帰り道は特に問題なく標識まで辿り着いた。民家からウルフが出てきたりもしなかった。



「あとは、大きい道路沿いを歩くだけです」


「結構暗くなってきてない?大丈夫?」


「このくらいなら全然大丈夫ですよ。俺はライトもちゃんと用意してるので」



 かなり厳しい視線が突き刺さる。美人さんが台無しだ。



「顔が怖くなってますよ」


「……」


「それじゃ、帰りましょう」


「うん」



 道路沿いを黙々と歩いた。暗さが増すにつれてマユミさんの口数が減っていった。


 沈黙の中、やっと防衛櫓09-0001に到着した。マユミさんの顔がほころぶ。



「やっと、帰ってこれた」


「お疲れ様。ここからはイヤホンを外しても大丈夫ですよ。街灯だってあるし安全です」


「ふぅ、お腹も空いたしさっさと傭兵事務所に行きましょ」



 マユミさんがずんずん歩き出した。


 俺も一時はどうなるかと思ったが案内役も無事終えることができて肩の荷が下りた。今日もビールが飲みたい。帰ろう。



 傭兵事務所に着くとマユミさんは依頼窓口に急行した。すぐにでも報告を済ませたいようだ。俺も後に続く。


 同時に防衛依頼の報告を済ませた。2000YENの入金を確認する。



「シグレ、外で待ってて戦利品をお金にしてくるわ」


「了解」



 俺が傭兵事務所の外に出て待っているとマユミさんは笑顔でやってきた。



「今日は助かったわ。ありがと。これが案内料よ」


「どうも、ありがたく受け取っておきます」


「また会うこともあるかもね。じゃ」


「では」



 マユミさんは軽く手を振って去って行った。案内料は5000YENだった。楽してお金がもらえるならこんなものだろう。


 面白娘はいなくなったしどうしようかな。


 ま、とりあえず、お金は増えたから訓練でもしておこうか。


 傭兵事務所に戻り射撃訓練場に向かう。


 ハンドガンの弾を口座払いで60発購入しカウンターへ。


 右手で20発、左手で20発、両手フルオートで残り全弾を撃った。


 ステータスを確認する。



 能力:筋力5 体力3 耐久2 敏捷2 器用3 知力1 精神1

 スキル:拳銃2



 能力が微増しているだけでスキルは特に変化なし。こんなものか。


 休憩スペースでマガジンの弾込めだ。面倒くさいなぁ、もう。


 誰か代わりにやってくれないかなぁ。


 うわぁぁぁぁ。



 苦行を耐えた。しかし、サウナの後のようにこれからのビールを美味しくしてくれたりはしないだろう。


 いつもの居酒屋に行く。もうビールを飲むことしか考えられない。俺は何のゲームをプレイしているのか?


 居酒屋の扉を開け中を窺う。



「「あっ」」



 すっかりでき上がっているマユミさんに捕まる。



「今日は私の奢りよ」



 今度はカラシニコフさんの半生が始まるらしい。


 刺身を食べながら相槌だけを打った。



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